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第27話 そして、推理が始まった

「ちょっとシュトリ、アンタ正気?」


 私は激昂した。


 シュトリのバカンス気分を見ていたら、無性に腹が立って仕方がないのだ。


 こうして茂みの裏まで連れてきて問いただしているというのに、へらへらとしたその態度に腹が立つ。


「んん? ああアレクシア、正気だよ。別に300万ポイントは余ってるしな。実は今回の校外演習、浜辺のポイント交換所で色んなおもちゃが買えるんだぜ。別に今日くらい遊んで暮らしたって良いだろ」


 下品な笑いを浮かべるシュトリはおもちゃ欲しさにポイントを無駄にするつもりらしい。

 私は皇女アレクシアなのだ。


 アーリアスの下民たちを導かねばならない。


 こんなところで足を止めるわけにはいかないのだ。



「心底下らないわね。アンタの頭の中は快楽のお花畑でできているのかしら」


 苛立ちから、私の口を介して暴言が漏れ出す。


「そう言うなよアレクシア。なあ、だったら俺に名案があるぜ。お前にもとっておきの快楽(・・)を教えてやるよ」


 シュトリはそう言い放つと、私の胸を鷲掴みにする。


 ああ、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……!


「触るな! 下民風情が!」


 私は持てるだけの力を右手に込め、その手を振り払った。


 こんなゲスに身体を許してなるものか。



「シュトリ様、こんなところにいらしたのですね〜!」


「きゃ〜! アレクシア様も一緒よ、素敵!」


 私の荒らげてしまった声を聞きつけたのか、シュトリ使用人たちが10人ほど駆けつける。


「やあお前たち、俺の大切な『勇者パーティ』のアレクシアにちょっと大事な話があってな。さ、海を楽しもうか!」


 シュトリは使用人の女を左右に抱えながら遠ざかっていく。


「もうお話はよろしいのですかぁ?」


 使用人の一人がシュトリの表情を伺いながら尋ねる。


「ああ、それは大丈夫。アレクシアには少し『休暇』が必要みたいだからな」


 ついにシュトリファミリーは消えた。



 私には、あんな遊興に付き合っている時間がないのだ。


 それに、今回の野外演習がただのバカンスではないと思えてならない。


 まずは現状把握、全てはそれからだろう。






     *






「よし、誰にもつけられてないな」


 僕は辺りを見渡す。


 眼前に小さな川があるところ以外はただの林だ。


 よし、試すには絶好の機会だろう。



「物質変更、土を風に、風を土に……」


 物質変更を繰り返し、僕は一つのものを作り上げていく。


 これにハッチをつけて完了だ。



「できた。まあとりあえず入ってくれよ」


まずは僕からハッチを開けて地下へと潜る。



 ああ、完璧だ。


 そこには、10人くらいが暮らせるであろう真っ白な内装のプレハブができあがっていた。


 シャワールーム完備、火を起こせるスペースと換気口もある。


 その気になればさらに内装を増やせるだろう。


 物質変更、変更先と変更後が複雑でない限り本当に何でもできるな。



「わあ、広ーい!」


 リカンツちゃんのそういうリアクションを待っていた。


「本当にすごいね、ロクトくん!」


「流石です、師匠」


 エリカ、ツモイもまた感動の言葉を告げる。


「正直元Sクラスの俺よりもよほど強力なスキルだよ。ロクト、実はお前が学園最強なんじゃないのか?」


 アベルも僕を称える。


 成績優秀、Sでもトップクラスだったこいつに限っては皮肉の可能性が高いし、間には受けない。


「それは過大評価だろ。さて、本題に入ろうか」


 僕のその言葉に、部屋の様子を眺めていたみな僕に視線を向ける。


「ロクト、なあに? 大事なことって」


 リカンツちゃんは僕に質問をぶつける。


 それに賛同するように、エリカ、アベル、ツモイの面々は僕に視線を送る。



 この情報をただで渡すのはもったいないし、ツモイにまで教えてやる気は無かったのだが……。


 仕方ない、ツモイは戦闘能力はAでも総合的にはEなのだ、彼女に推理は難しいだろう。


 割と一緒に行動してきたし、ここで突き放すのは可哀想か。


 では、長くなるが話すとしよう。


 僕の推測が正しければ、これはこの野外実習の成否すら決めてしまう特大の情報なのだから。


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