第17話 そして、稲妻が迸った
「なんで、どうしてよ! なんで私たちが最初じゃないの!?」
ダンジョンの初回クリアボーナスを受け取ったアレクシアは激高した。
アレクシアのひとことで、勇者であるシュトリ率いる俺の所属するパーティー、通称『勇者パーティー』は重い雰囲気に包まれる。
ああ、確かにこのパーティーに志願したのは俺だ。
最初は美少女アレクシアちゃんの野心家なところに惹かれて俺から『勇者パーティー』に参加を希望した。
だが、彼女の豹変した態度を見て、俺はもう辟易している。
俺の求める最高の美少女、それは気高いものだ。
きっと彼女ではそこに到達することは難しい。
「悪いな、これでもうお終いだ」
俺はシュトリ達『勇者パーティー』に別れを告げる。
「ちょっと待ってよ、シュトリ一人に前線を任せる気? 私たち『真の仲間』なんでしょ、『アベル王子』」
確かに、勇者パーティー4人目の『真の仲間』として迎え入れてくれたことはとても嬉しい。
いや、『嬉しかった』か。
「ここでは身分は関係ないんだろう、その呼び方はやめてくれ。それにな、アレクシア。どうやら俺にはこの仲間たちが真の仲間とは思えなかったよ」
一言も発さず、フードで顔を隠した少女はぴくりと俺の言葉に反応する。
「くそ! アベルより有能な散兵なんて早々見つかるはずないのに…!」
シュトリは随分苛立っているようだ。
けれど俺は知ってしまった。
このパーティーはかつて、『真の仲間』と呼んだ少年を騙し、成り上がったクズの集まりだと。
「なあシュトリ、ロクトって少年、知ってるか?」
「聞き覚えがないな、そんな名前」
白を切るつもりか。
「なら良いことを教えてやるよ。今回最初にE級ダンジョンをクリアした奴を俺は知っている」
シュトリとアレクシアはその言葉に反応する。
「教えなさい、アベル」
アレクシアは猛る獅子のような勢いで俺を問い質す。
「そいつの名はロクト。なあ、どこか聞き覚えがあるだろう? どこかの誰かさん達が追放した人間に先を越されたんだよ。まあ、精々頑張れ」
「お前、なんでそれを……!」
シュトリは顔を真っ赤にして激昴している。
だが、もはや知ったことではない。
「ロクト、そう、あいつが……!」
憎しみのこもったアレクシアの表情からして、やはり覚えていたんだなと理解する。
もう彼らは仲間ではない。
僕は勇者パーティーが誰かを騙して購入した小屋を後にする。
それとほぼ同時に、大きなため息が漏れる。
「今日はコーヒーを飲みたい気分だな。それもとびきり苦いやつだ」
その時だった。
草原を吹き抜けるそよ風のような素敵な美少女が俺の目の前に現れたのは。
「やーやー! 何かお困りのようだね? そんな時はこの天才美少女星占い士、エリカちゃんに任せなさい!」
稲妻が迸った。
いや、そんな表現じゃ生温い。
俺は目の前の少女の底なしに明るい表情に、感情の全てを持っていかれた。
「お嬢様、もう一度お名前を聞かせていただけますか。ああ…」
「はえ? んー、どうしたの? 急に手を握ったりして」
ああ、なんて───
「───ンつくしい! 」
俺は彼女のンつくしさに、全てを捧げてもいいと思った。
名誉でも、何でもだ。