第16話 そして、拍子抜けした
「あれ、こんなものか」
僕は土E級ダンジョンのボス『オーク』を打ち倒した時、そんなセリフが自然と口から零れた。
学園には迷宮門と呼ばれる設備があり、門に魔石を嵌めることで任意のダンジョンへと移動することができる。
選択することができる項目は属性と難易度の2種類あり、それによって選ばれるダンジョンは異なる。
詳しくは、こうなっている。
選択可能な属性
基本属性
*火
*水
*風
*土
特殊属性
*雷
*光
*闇
選択可能な難易度
*E
*D
*C
*B
*A
*S
さらに、鍵の石版というアイテムがあるらしく、それを翳すと特殊なダンジョンに入ることができるそうだが……。
学園の最初の試験は毎年『どこかのダンジョンを踏破せよ』らしく、これができないものは使用人になる。
それはそれとして、課題が提示される前から僕は毎年重傷者や死亡者が出るらしい学園の鬼門、リカンツちゃんも挑むことになるだろうE級ダンジョンに一人の視察に来てみたが、いかんせんこんなものか、という感想の他なかった。
一言で言い表すならば、他愛ない。
僕は改造士の能力で火を出してみたり岩を落としてみたり自爆させてみたり、色々試しながらダンジョンを一人進んでいった。
僕の目の前には宝箱がある。
ダンジョンクリアの報酬だろう。
僕はそれを空ける。
そこには、金貨2枚とよく分からない魔導書、そして一般的なブロンズソードが1本入っていた。
僕が金貨に触れるとそれは消え、代わりに指輪が大きく光る。
おそらく、ポイントに変換されたのだろう。
僕は指輪を使ってポイントを可視化する。
やはりというか、-885万ポイント。
-887万ポイントから2万ポイント増えてはいるらしいな。
2枚獲得したら2万ポイント増えたことから、金貨1枚につき1万ポイントといったところだろう。
しかし、気の遠くなるような作業だ。
だが、学園の説明が正しいのならば、本命はこの後のはずだ。
宝箱を一通り物色し終えると、帰還の魔法陣が床に広がる。
情報通りだ。
僕はそれに立つと、視界が白い光に包まれていく。
気がつけば、僕は来た時と同じ迷宮門の部屋に立っていた。
眼前の大きな石版に、今回の冒険の情報が記されていく。
獲得ポイントの項目に、やはりというか説明があった通りのEランク初回クリアポイント5万点と書かれている。
さらに、その下には『39期生初クリアボーナス 初回クリアポイント×2』との表記もある。
今の一瞬で、僕は追加で10万点を獲得したのだ。
やはり思った通りだ。
この学園には、明確な攻略法が存在する。
それは、強くあることだ。
強者に優しく、弱者に厳しい実力至上主義のこの学園では、常に最前を走るものに多くポイントを与えられるようになっている。
この負債を返すために、僕は迷宮攻略の最前線に立ち続けなければならない。
ふと思いついたのだが、このダンジョンの攻略情報を売れば、いいポイント稼ぎになるかもしれない。
まだ課題はないが、最初の課題はダンジョン攻略のはずだ。
ならば、ダンジョン攻略に務める予定の僕にとって課題はあってないようなものだし、稼ぎ時だろう。
さあ、次の難易度を攻略しよう。