第14話★そして、僕の攻撃は威力が高すぎた
僕は闘技場でウォーミングアップをする。
剣士たるもの、万全の状態を保つべし。
今は投げ捨てた家訓を思い出す。
「別に家訓だからってわけじゃあないけれど、理に適ってはいるからな…」
僕はルーチンとなっていた準備運動を終わらせた。
「もういいよ、ありがとう」
続けて真剣を手に取り、装備する。
ついでに相手に『名前をつけ』ておくか。
撫子(仮名)
種族:人間
ジョブ:剣士(刀)
型:普通
LV.25
HP:387
MP:84
魔力:81
力:212
知力:74
防御力:85
魅力:102
素早さ:248
運:80
成長率
HP:C
MP:C
魔力:D
力:A
知力:D
防御力:D
魅力:C
素早さ:S
運:D
スキル
*八岐流剣術EXLv.3
剣術の派生ユニークスキル。剣術スキルを持つ複数人すら相手にできる秀でた逸材の剣術Cランクに相当する。『刀』カテゴリーの剣を握ることで8つの戦闘スキルを使用可能にする。
彼女のステータスを見て再確認したが、やはり分からない。
なぜこれほどのオーラを放つ剣豪たる彼女の剣術がCランク相当なのか。
そしてなぜ無能な僕の剣術がAランクなのか。
「左様ですか。では、説明させて頂きましょう。ルールは簡単、闘技場選手用入場口で自動付与された防御術式、シールドアーマーが先に破壊された方の敗北ね。異論があるなら今言ってちょうだい」
彼女の声掛けに、僕は指先を見る。
淡い青の光が全身を包み、攻撃を防いでくれるのが分かる。
シールドアーマーを生成する魔導装置はかなり高価で、実家にあったそれを搭載した闘技場は世界でも珍しいとは言われていたが、流石は学園。
当たり前のようにこのシールドアーマー生成装置があるらしい。
「ロクト〜! がんばって〜!」
リカンツちゃんの声が響く。
実は今回の決闘、今学年初ということもあり、かなりの大事となってしまい、観客席には大勢の生徒が見に来ている。
この状況で改造士のスキルを使えば、チート能力がバレて決闘を挑まれる機会を減らしてしまうかもしれない。
決闘は負けさえしなければやればやるだけポイントが増えるのだ、負債だらけの僕はみすみす機会を逃すわけにはいかない。
よって出来るだけ剣術で立ち回る他ないが…やはり最終的にはスキルを頼らないと難しいか。
「ああ、異論はないよ。じゃあ始めようか」
僕は腰に携えた家紋の入っていないただのブロンズソードを抜く。
「では、いざ尋常に」
彼女もまた、鞘から彼女の体長はあるだろう長過ぎる歪に曲がった剣を抜く。
「「この戦いに偽りなし!」」
掛け合いの直後、指輪が赤く光る。
これが決闘成立の証というわけか。
僕は地面を蹴り上げ、一直線に彼女へと跳躍する。
どれほど格上であろうとも、流石に一撃でやられることはないはずだ。
現に父との稽古でもそうだったのだ。
ならばご挨拶だ。
彼女もまた僕に対して一直線に飛んでくる。
きっと小細工なしの一撃だ、ならばそれに答えるのみ。
「やああ!」
「はああ!」
剣と剣、互いにぶつかり合い、凄まじい衝撃が掌から全身へと駆け巡る。
この一撃で大きく後方へと先に退いたのは彼女の方だった。
一見大きく姿勢を崩していたようにも見えたが、それは高等魔術の幻術か、強靭な体躯から繰り出されたブラフの可能性が高い。
追い討ちではないが、僕はとりあえず牽制のため光速で剣を振って斬撃を飛ばしておいた。
光速の衝撃波は空を裂き、刃となって彼女へと襲いかかる。
それに合わせて慌てるように女は砂塵の中から飛び上がる。
「…な、なによお前のその強さは…。それでも本当に落第者、それもEランクだって言うの!?」
これで強いってのは、流石に冗談だろう。
僕の制服の肩に付いている紋章は戦闘能力最低ランクを表すEを意味するものだ。
Eランクね…。
そういえば試験は最初の初級魔術で失格だったからな…。
そして彼女の肩にはAランクを表す紋章が描かれている。
つまり、総合的な評価はE級相当だが、戦闘において彼女はAに匹敵する剣の才能の持ち主ということらしい。
しかし、これで強いか。
彼女ほどのオーラを放つ剣士が、そう簡単に僕の攻撃でやられるはずもないだろう。
ここから導き出される結論として、彼女は起死回生、大逆転、大番狂わせ、火事場の馬鹿力といった感じの一撃必殺のスキルを持っているに違いない。
彼女はあえて攻撃を受けたのだ。
そして僕をおだてて、強力な一撃を叩き込んでくるはず。
「なるほどな、合点がいったよ。さあ、来いよ。もう整ってるんだろ?」
「…っ。いいわ。これなるは八岐流剣術壱の型にして究極奥義────」
彼女は右足を大きく後ろに引き、剣を矢を番えるようにして狙いを定める。
瞬間、彼女は高速で僕へと迫る。
「───烈一閃牙突!」
猛烈なスピードを一撃の攻撃に全て変換して叩き込まれるそれは、僕を貫こうとする。
だが、まだ遅いな。
僕は剣を地面に這わせ超高速振動を起こし、剣を前に振りかざしてその勢いで突きを中和させる。
「く、また僕はやってしまった…」
僕はあいからわず剣術が下手くそだった。
「かはっ!」
僕の発生させた振動は彼女のアーマーだけでなく、貫いて身体にダメージを与えてしまったのだ。
中途半端にダメージを与えては、彼女のスキルがどう来るか分からない。
僕は次の一手を考える。
だが、彼女は一向に体勢を整えようとしなかった。
そのままぐらりと地面に突っ伏して、動かなくなった。
指輪が再び赤く光り、試合終了を告げる。
「な…僕は勝ったのか?」
いとも容易く、呆気なく試合は決まる。
どうやら僕は改造士のスキルを一切使うことなく決闘に勝利したらしい。
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