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第13話 そして、天誅は下った

”リカンツ=モンドワール -887万点”


 そう、僕の誇るべき優秀な彼女、リカンツちゃんは最下位だった。


 下から二位との差は740万点。


 この点数に、僕は思い当たるところがあった。


 

 僕はシュトリにハメられた昨日の事件を思い出す。


 推測だが、例の『ポイント』は成績に直結するのだろう。


 そして使用人である僕の負債は、マスターであるリカンツちゃんの負債となって返ってきている。


「ごめんロクトくん、言い出せなくて」


 いや、謝るべきは僕の方だ。


 それに正直、嬉しかった。



 こんな惨めな思いをすると分かった上で、僕を使用人に選んでくれたのだ。


 この恩は返す、絶対に。



「いや、僕の方こそごめん。そしてありがとうな。借りたものは絶対返すよ」


「できる範囲で、やれるだけ頑張ろうね」


 彼女はニコッとはにかむ。



「───校内の設備の説明は以上だ。必要なものがあればポイントで購入しろ。それとこれをみなに渡す」


 ヤライ先生は生徒全員に指輪を渡す。


「これは魔力を通すことで装着者のポイントが分かるようになっている。ポイントは定期試験やダンジョン攻略、そして決闘などで増やせる。そして一年後までに100万ポイントを集められなければ、そいつは使用人に落ちる、精進しろ。明日から本格的に授業を開始する。今日は解散だ」



 早々にヤライ先生は立ち去って行った。


 それと同時に緊張感はどこかへと消え失せ、各々がしたいことについて話し始める。


 みなポイントでの購入について話し合いっているようだ。



 それと分かったこと。


 案の定、使用人は少ないように感じた。



 このクラスで使用人を従えている生徒は今のところ4〜5人といったところだ。


 だが、ヤライ先生の説明によれば最終的に卒業する頃には9割以上の生徒が使用人となるらしい。


 さて、まず僕はポイントを稼ぐ必要があるだろう。


 正攻法では厳しいかもしれない…。


 なら───



「痛ーーーい!」


 突如教室に少女の声が響き渡る。


「ふん、私の刀を愚弄するからよ」



 僕はそっちの方を見ると、なにやら揉め事が発生しているようだった。


 背は決して高くないが、体格がよく武人のような雰囲気を漂わせる和装独特の雅さを感じさせる艶やかな黒髪の少女と、なにやら見覚えのある少女がいた。



 この学園ではそれぞれの文化を尊重し、制服があらゆるパターンから選択することが出来る。


 見覚えのない彼女は水兵服(セーラー)という格好だからか、とても目立つ。


 そして見覚えのある彼女は、よく見ると昨日僕を助けてくれた慈善事業の金髪星占い士だ。


 彼女は地面に座り込み、手首は赤くなり、捻ったような後がある。


 察するに、この水兵服の女がやった。


 僕のことではないので深入りすべきではないだろうが、僕は彼女に恩義があるし、仲裁くらいなら受け持とう。


「やあ、昨日はありがとう。同じクラスだったんだな。僕はロクト。何かあったのか?」


 僕は彼女に手を貸す。



「ありがとー! でも大丈夫だよ! わたしはエリカ。ちょっとそこの女の子にお話に付き合ってもらってて。剣術が得意だーっていうからね、わたし剣術苦手だなって思ったから、その『八岐(やまた)流』っていうの教えて〜って言ったら怒られちゃった、てへへ」


 僕はなんにせよ暴力は良くないと思ったが、僕の話ではないのだ。


 深く踏み入るのは尚早だと思い、踏みとどまる。


「ふん、では私はこれで。E級と群れる気は毛頭ないのよ」


 ゆらゆらと風花帝国人特有の黒い結った髪をなびかせ、和装の武人は去ろうとする。


…お前もEだろ。



「ちょっと待って!」


 エリカはそんな彼女を制止する。


「さっきはごめんね? わたしエリカ! 一緒にがんばろうね!」


そう言って、握手を求めて腫れてない右方の手を女に差し出す。


 すごいコミュニケーション能力だ。


 さっき暴力を奮ってきた相手にとれる態度じゃない。


 馬鹿と天才は紙一重というが、彼女は、どうだろう。



 女は一瞬固まったが、彼女の方に手を伸ばす。



 だが、女は握手をしようとはせず、その手をエリカの頬に振りかざそうとした。



 すかさず僕は間に入り、女の手首を掴む。


「それはまずいだろ、お前」


 一度信じた仲間に裏切られる感覚は酷く不愉快なのだ。


 僕はそんなエリカがとても他人事には思えなかった。



「何ですか貴方。使用人の分際で私に触れるとは」


 女の鋭い目線は僕を捉える。


「大丈夫だよロクトくん。わたしは大丈夫だから…ね?」


 エリカは怯えるように手が震えている。


 これが大丈夫であってたまるか。


 だが、彼女が心配してくれている理由も分かる。



 この女はE級ではあるが、一目で分かるほど修羅場を乗り越えてきている。


 もし事の運びが悪く、決闘になってしまえば勝ち目はない、とエリカは考えているに違いない。


 この学園には決闘が存在する。


 双方の同意さえあれば、どんな法外な賭けや内容でも成立するし、学園は黙認する。


 エリカには悪いが、その心配は杞憂にとどまらない。



「いいわ、決闘よ。剣を取りなさい、ロクトだったかしら。お前は見たところ剣士のようだけれど、まさか逃げ出したりしないわよね」


「ああ、いいよ。ただし…」


 僕は二つ返事でオーケーする。


 だが、タダで受けるほど僕もお人好しじゃあない。


「ポイント3000万。前借りになるけれど、これをベットしよう。そして僕が勝ったら語尾に『にゃん』を付けて反省してくれ」


「ちょっと…! それはいくらなんでも返せる額じゃないよ!」


その言葉に、エリカは戦慄する。



 そこにリカンツちゃんが割って入ってくる。


「私は全然オーケーだよ。ロクトくんは強いんだから」


 ああ、ありがとうなリカンツちゃん。



「ふふ、いいわ。天誅! 天誅よ!」


 僕たちは闘技場へと向かうのであった。


おもしろい 続きが気になる


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そのワンアクションによって、私は書いていてよかったなと思いますし、今後とも面白い作品を目指して書いていけます。


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