第12話 そして、現実がやってきた
「やばい、遅刻だ!」
僕は慌てて飛び起きた。
何せ初日の今日は教室でクラスメイトとの顔合わせがあるのだ。
この初動をミスれば、クラスで浮いてしまう。
「頼む、起きてくれリカンツちゃん…!」
僕は隣で寝ているリカンツちゃんを引っ張り起こそうとする。
「むにゃむにゃ…。わー、巨大ロクトロボだ…」
…なんの夢を見てるんだ。
「そんな。私にロクトロボに乗れって言うんですか…! 親父ロボにも乗ったことないのに…!」
なんの夢を見てるんだ!?
「ごめんリカンツちゃん! でも起きてくれ!」
僕は幸せそうな彼女の寝顔に申し訳ないと思いつつ、掛け布団を引き剥がす。
「こうなれば自爆するしか…あっ。…おはよロクトくん」
彼女はぱっちり目を覚ました。
「寝起きで悪いんだけれどリカンツちゃん、もう時間がやばい。すぐに支度して出ないと…」
僕は魔術時計を指さして置かれた状況を説明する。
しかし、彼女の支度は異常なまでに早かった。
「うーんと、魔法発動、『支度』っと」
彼女が眠たそうな目を擦って呟くと、先程まで一糸まとわぬ生まれたままの姿であったリカンツちゃんは一瞬にして制服に着替え、さらに亜空間からカバンを取り出していた。
「あれ…マジか…」
「さ、行こ。ロクトくん」
僕は慌てて準備を完了させる。
「あ、ああ。…行こうか」
僕達は部屋を後にした。
*
昨日、僕はリカンツちゃんから学園の仕組みについてある程度は学んでおいた。
まず、入試の成績に応じてクラスが分けられるらしい。
S、A、B、C、D、Eの6つのクラスがあり、上であればあるほど学校の支援が手厚くなるようだ。
厳密には国によって制度が違うため一様には言い難いが、親が貴族であれば学園は入学を拒否しないため、毎年300人前後の生徒が入学するらしい。
つまり、一クラス大体50人といったところだ。
そして使用人となった生徒はマスターとなる生徒と同じクラスに移動となる。
僕は、最強クラスのジョブである賢者リカンツはSクラス、運が悪くてAだろうと見込んでいた。
だが、この結果はいかなるものだろうか。
僕たちがいるこのクラスはE級。
最底辺のE級だ。
「なあリカンツちゃん、流石にこの冗談は僕でも笑えないぜ」
「んーん、冗談なんかじゃない」
彼女の表情は至って真剣そのものだった。
その時、がらりと扉が開かれ、一人の背の高い女性が入ってくる。
「全員揃っているな。よろしい」
その女性は教壇に立つと、指先に魔力を込めて黒板に文字を書き込んでいく。
「『夜来』。私の祖国『風花帝国』では、これでヤライと読む。貴様らの教室を預からせてもらう担任のヤライだ、よろしくな」
ヤライと名乗る女性は僕たち学生を舐めるように見る。
どことなく高圧的なその雰囲気に、生徒はみな気圧されている。
「早速だが、貴様らの現在の成績を発表する」
そういうと、ヤライ先生は黒板に魔力を込める。
すると、すかさず大量に名前と数字が同時に現れる。
それに合わせて周囲にざわつきが起こる。
「おい、オレはいきなり12万だぜ…!」
「マジか、俺は2万だ…。下から三番目だよ」
各々点数を見て喜んだり悲しんだりしている。
だから僕は、それを楽観視は出来なかった。
”リカンツ=モンドワール -887万点”
そう、僕の誇るべき優秀な彼女、リカンツちゃんは最下位だった。
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