第1話★そして、栄光を失った
「ロクト、お前は追放だ」
「はい…えっマジ?」
それを言い渡されたのは、唐突だった。
宮殿に響き渡る親父である子爵、ユキノフの声が響き渡る。
「本当だ。全く、お前という愚か者は。剣技も粗末、魔術も粗末…。『改造士』なるレア職業だったからこそ判断は遅くなってしまったが…やはりお前は余の失敗作に他ならん」
「…」
言い返せない。
確かにその通りだからだ。
10歳の時の鑑定の儀で、『改造士』という判定を受けてからというもの、猛特訓の日々だった。
剣の技は剣聖の叔父さんが見てくれていたし、魔術は帝国の大賢者を雇って教えてくれていた。
なのに、15の僕ときたら剣術も魔術もてんでダメ、使えるようになった固有スキルは『名前をつける』だけだ。
なんだ、名前をつけるって…?
一体それのどこが役に立つというのだろうか。
『名前をつける』と、名前をつけた生物の上に半透明で名前が表記されるようになる。
ただ、それだけ。
他の人からは名前は見えてないようだし、ただ僕にとっての快適性が微弱にあがるだけのゴミスキルだ。
だから僕は、言い返せない。
「もう我は貴様の顔すら見たくない。だが、国外に追放してこの無能の息子が知られてしまえば、更に余の顔に泥がついてしまう。よって貴様は王立学園に送る。精進せよ」
王立学園、それを父の言葉で言い表すなら、醜悪そのものらしい。
────王立学園は栄光だ。
学費も安く、学園生活の多くを五大国が負担し、入学すれば将来は安泰と言われる名門である。
だが、現実にはそんなに都合のいいところは存在しない。
王立学園では、なんと入学試験の不合格者も入学させるのだ。
一見すると入試の意味もないし、高待遇のように見えるが、それは違う。
学園には、落第者をコンパニオンとして扱う制度があるのだ。
コンパニオンとは、奉仕する貴族のやや下の地位で、貴族に仕える職とされている。
やはりというか、実態は甘くなく、落第者は否応なくコンパニオンをさせられ、辞めることが出来ないため、仕える貴族にとって都合よく使われているのが現実。
まあ一応名誉ある職ではあるので、家の最低限の威厳は保たれる。
そして、僕がそうやって一生を費やすことを父は望んでいる、ということだろう。
「そうですか」
言い返せないが、あまりに言いたい放題なので、腹が立つ。
「これは手切れ金だ。学園には寮がある。ああ、言い忘れておったわ。二度とブラン家の名を騙るでないぞ。もうお前は何者でもない。我が息子でも、ブラン家の長男でも、栄えある者でもない。何物でもない純度100%のダメ人間のロクトだ。お前を着飾っていた華美な鎧は二度と繕えないと知れ」
栄光のブラン家。
僕は、代々戦闘職となり、広大な土地を手に入れたブラン家の名を失ったのか。
剣聖である父は金貨の入った袋を僕の足元に投げつける。
「…閣下。最後にひとことだけ、よろしいでしょうか」
「不許可だ、弁えよ」
知らね〜!
言ってやる。
「…とっととくたばれクソ親父!」
僕はこのゴミスキル、『名前をつける』で父に『バカ』と名前をつけてやった。
「…連れて行け」
僕を見る全ての目が、侮蔑の色を含んでいる。
絶対だ。
絶対に僕はこのどん底からゴミスキルで這い上がって、復讐してやる。
こうして俺は領地を追い出され、どの領地にも属さない五大国不可侵の地、『学園』という名の監獄へと連行されたのだった。
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