03話オーガの群れ
どうなってるの?……僕の知ってる付与魔法ってその武器の持ち主の基礎力をあげるだけだったはずなのに。
「おいおい、どうなってんだ? これは」
「私の弓が凄い禍々しい姿になってるんだけど……それに、なんか力が湧いてくる」
「俺の、短剣は安物の鉄製だったんだがな。これって、なんの材質だ? 軽くて凄い硬いぞ」
「アオ、お前のスキルか?」
「わ、分かりません。でも、たぶん僕のスキルだと思います」
「まさか、付与術王のスキルは武器まで強化するのか? ただでさえ、普通の付与魔法より強力なのに……こりゃ、いいのを引き当てたな」
どうしよう、変な力だと疑われてるのかな?
僕だったら、正直得体の知れない力って怖くて使いたくないや。
「まぁ、いい。今回はこのままオーガの討伐に行くぞ」
「あっ、リーダーずるい。先に試したいだけだろ!」
「行くわよ、アオ君」
「はい!」
(良かった、変な力だとは思われてないみたいだ)
薄暗い洞窟の中は、窮屈さを感じさせることはなく。
大人が3人並んでも戦えるほどの幅の広さに、見えないほど高い天井。
その、通路を盗賊のガーナ、剛剣士のダズ、弓使いのリーナ、アオの順に進んでいく。
すると、順調に進んでいた先頭のガーナが急に止まり、手で停止の合図をした。
「雰囲気が変わった、こっからは奴らの縄張りだ」
「そうか、なら俺が前にいこう。ガーナはリーナを守れ」
(あれ、僕は? 自分の身は自分で守るのか)
アオの装備は、じいちゃんが昔使っていた装備をメンテナンスして使えるようにしたものだ。
元の素材が良かったのか、急所を守る胸当てはしっかりとした作りで防具としての機能を発揮するのには充分だろう。
「おい、お前ら! 気を引き締めろ。お出ましだ」
ダズがそう言った瞬間、通路の奥から赤色の皮膚に、口から生えた鋭い二本の牙、アオの腰回りほどの太い腕が特徴的なオーガが三体現れた。
オーガ達は全員、棍棒を左手に盾を右手に持っていてその姿は兵士に見えなくもない。
「俺が二体相手してやるから、ガーナとリーナは残りをやれ」
と、ダズが言った瞬間オーガ達が距離を詰めてきた。恐らく、一番の脅威だと感じたダズを倒そうとしたのだろう。
だが、オーガ達の攻撃がダズに当たることは無かったダズがその力を見せつけるように、横からのなぎ払いをしただけでオーガ達の体は上下に分かれてしまった。
「おいおい、これは凄いな。いつもの何倍も力が上がってる……なによりも、その力に耐えれるように変わったこの武器だ」
ダズが元々持っていた大剣は、鉱石をメインに使われた中級冒険者がよく使う普通の大剣だった。
それが、どんなものでも切り裂くことが出来ると思わせる業物になっていた。
「これは、一体どういう仕組みなんだ……それが分かればもっと、利用できるぞ」
(す、凄いダズさん。オーガ達をたった一撃で倒すなんて)
「あーあ、リーダーが一人で倒すからつまんなかったな」
「そう言うなって、俺もここまでとは思ってなかったんだからよ」
「ガーナ、私たちは残りの二体を貰いましょうよ」
「それも、そうだな。リーナはいいこと言う」
アオがダズの強さに驚いてる間にも、ガーナは手際よくオーガから金目の差材を回収していく。
「おっ、このオーガ金貨もってるじゃん」
「へー、金持ちのボンボンでも殺したのかしら」
2人の、殺す殺されるの話を身震いしながら聞いていると。
オーガを倒した後ろから、ペタペタという足音がこちらに近づいてきていた。
「お、あれは?」
ガーナが、敵の確認をしようと足音を消して近づくと近づいてきた足音の正体を知る。
それは、さっきまで相手をしていたオーガの約2倍はあり手に持っている武器は棍棒ではなく背の丈ほどある大きな両手斧だった。
なによりも、目を引くのは鮮やかな色青色の皮膚に身体中に刻まれた紋章のような刺青だ。
「やべぇ、あれはオーガ亜種だ。俺たちより1つ上のランクの魔物だ」
自分より格上の相手との、戦闘は避けようとガーナが撤退を促そうとした時、
「ゴアァァ!!」
ありえないほどの声量の雄叫びを、オーガ亜種があげた。
それは、侵入者を感知し駆除をするという警報のようにも聞こえた。
さっきの雄叫びでガーナ以外の3人も、目の前に迫ってきている脅威に気づいただろう。
この、危険な場面をどう乗り切るかが冒険者の腕が問われるところだ。