02話付与術王の力
「おい坊主、お前名前はなんていう」
「アオって言います」
「アオか、仲間の所に連れてってやる。ついてこい」
アオの前にいた、大男はそれだけ言うと先に歩き出した。
冒険者ギルドの中は結構広く、屈強な男達が騒いでも窮屈にならないスペースはある。
「あぁ、勢いでパーティーに入ったけど。大丈夫かな」
そんな、不安を抱きながらも男の後を追ってついていくと1つのテーブルの前にたどり着いた。
その、テーブルには男1人女1人の計2人が座ってジョッキにたっぷりと注がれたエールを飲みながら楽しそうに騒いでいた。
「おい、お前ら騒ぎすぎだ。新しい新入りだ可愛がってやれ」
「新入り? リーダー何をしてたのかと思えば新しい子を探してたのか」
「へーー、けっこう可愛い顔してる子じゃない。可愛がっていいのよね?」
「おい、アオ」
少し置いてけぼりになっていたアオは、縮こまりながらも紹介された2人の前に出て行った。
「よ、よろしくお願いします」
アオは緊張しながらも自己紹介をするとリーダーから順番にアオに説明をしてくれた。
「俺はこのパーティーでリーダーをしてるダズだ」
「私わ弓使いをしてる、リーナよ」
「最後は俺か、盗賊をしてるガーナだ」
へー、弓使いに盗賊かぁ。冒険者っぽい職業だ!
「でも、なんで僕みたいな新入りをパーティーに?」
僕みたいな駆け出しの冒険者をパーティーに入れるメリットなんて、何もないはずなのに。
「あぁ、俺のパーティーは昔から新入りを育ててるんだよ。その為にどんな新入りが入ってもいいように、バランスも良くしてるしな」
とパーティーの方針をリーダーから聞いた僕はこのパーティーに入ることが出来たのは幸運だったなと思った。
(僕の冒険がここから、始まるんだ)
「ねーー、アオ君の職業ってなんなの?」
そう言って、リーナは思春期のアオには刺激の強すぎる豊満な胸を押しつけながら聞いてきた。
整った顔をしている、年上の女性に抱きつきかれて年相応に照れているとリーダーのダズが助け船を出してくれた。
「やめてやれ、リーナ。お前は刺激が強すぎるんだよ」
「はーい、でも何の職業か気になるわよ。ね? ガーナも気になるでしょ」
「まぁ、気にならなくはないな。リーダーが連れてきたってことは何かあるってことだろ?」
「アオの職業は付与術王だ」
ダズがアオの職業を言った瞬間、2人の目の色が明らかに変わったのにアオは気づくことが出来なかった。
「ますます、この子を気に入ったわ。たっぷり、可愛がってあげる」
そう言うと、リーナはアオから離れた。
(す、凄かったな……リーナさん)
思春期の男子に意識するなと言う方が無理な話だろう。
「よし、新入りに自己紹介も済んだんだ。依頼を受けに行くぞ」
「依頼か、楽なのがいいな」
「私は汚れないのがいいわね」
と、順にダズ、ガーナ、リーナが会話をしながら依頼のボードに向かうのを置いていかれないように、アオはついていく。
知識のないアオ以外の3人が話し合った結果、今回は手頃な依頼のオーガ五体の討伐に決まった。
「オーガなら、まず負けることはないだろ」
「オーガって、ゴブリン従えてるから嫌なのよね。アイツら年中発情してるし」
「まぁ、そういなってリーナ。アイツらは強くはないけど、金にはなるんだから」
オーガ、確かCランクの魔物だったはず。この人達のランクCはあるのかも。
そうだとしたら、中堅ぐらいのパーティーだ。
やっぱ、ついてるな!
じいちゃん、僕頑張るよ!
◆
「おい、こっからはオーガの生息する洞窟だ」
僕は、今オーガの生息する洞窟前に来ている。
ダズさん達は各々の職業にあった装備をつけて武器を構えて、これからの戦闘に備えている。
新入りの僕ができることなんて、限られている道中の荷物持ち、ご飯の支度、マッサージ。
僕にできることと言ったら後は、
「アオ、強化を頼む」
ダズさん達の強化だ。
ダズさん、リーナさん、ガーナさんは自分の武器を僕に預けてくれた。
僕はすぐさま、自分の使うことの出来る付与『攻撃力上昇』を使った。
すると、武器の姿が変わってしまった。
「「「は?」」」
その場にいる全員が、何が起こったのか理解することができなかった。