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01話職業適性

「アオさん、順番が来ましたので受付までお越しください」


「は、はい!」


「アオさんは十歳ですね。職業適正を受けに来たんですか?」


「そうです」


 僕は今日、職業適正を受けるために冒険者ギルドのある王都まで、村に来ていた商人のおっちゃんに乗せてもらっていた。


「じゃあ、簡単な書類の必要事項に記入をお願いします」


「はい」


 僕が、書類に目を通している間にも受付のお姉さんは淡々と説明を進めていた。


「職業適正は大きく二つに分けれます。一つは冒険職、そしてもう一つは生産職です」


 そう、僕が欲しい職業適正はとにかく冒険職だ。


 村にいる子供は僕だけだった時の一番の楽しみだったのは、色んな冒険者の話を村に来る商人のおっちゃんから聴くことだったのと。


 じいちゃんが、寝る前に読んでくれていた英雄の物語シリーズだった僕が冒険者に憧れるのは自然なことだった。


「まぁ、その顔を見れば分かります。というか、ここに来る人の大半は冒険職を希望してますから」



 そのまま、順調に説明を聞きながら書類を書いた僕は今運命の分かれ道にたっている。


「では、この水晶に手を置いてください」


 僕は言われるがままに、水晶に手を置くと透明だった水晶が金色に輝いた。


 眩しいけど……すごいなぁ、こんな演出まであるなんて。


「金色っ!? アオさん、職業適正は何でしたか」


 なぜか、鼻息の荒い受付のお姉さんに引きつつも水晶を覗くとそこには僕が生涯付き合っていくことになる職業が書いてあった。


付与術王(エンチャンターキング)?』


 あまり、強くなさそうだな。


 じいちゃんの話してくれる物語では剣豪とか魔道王とかカッコ良さそうなのばかりだったのに。


「そんな、こんな辺境の子供が……後方支援職最高位の職業適正を持ってるなんて……」


 どうしよう、僕の職業が微妙だったのかな?受付のお姉さん、喋らなくなっちゃった。


 でも、これってどっちかというと冒険職だよね。


「やった」


 最低限の望みは叶ったぞ。


 じいちゃんが言ってたもんな、


「アオ、英雄の物語が好きか?」


「うん! 大好き」


「そうか。じいちゃんも好きだぞ」


「じいちゃんも?」


「あぁ、実を言うとなじいちゃんも英雄に憧れていた時代があったんだぞ」


「えっ、そうなの?」


「まあ、憧れで終わったんだけどな。憧れるのは個人の自由だからな」


「なんで、じいちゃんは憧れてたのーー?」


「そりゃあ、アオ英雄には力がある。例えば、この村を国にするくらいのなぁ」


「この村も、昔はもっと人がいたんだがな」


 僕が育った村はいわゆる、辺境の地って言葉がぴったりな場所にある小さな村だ。


 村の人口は減少し続きていて、今では人数は二桁ギリギリの十人程だ。


 じいちゃんが英雄に憧れていた、意味が何となくわかった気がする。


 きっと、生まれ育ってきた故郷を(さかえ)させたかったんだと思う。


「僕が、冒険者になって村を(さかえ)させてみせるよ!」


「そうか、そうか。儂の夢や憧れを孫に(たく)すのもいいかもしれんなぁ」


「なら、冒険者になるために最低でも冒険職に適正がないといかんなぁ」


「よし、これから体力づくりから始めるぞ!」


 そう言って、鬼教官となったじいちゃんのスパルタ訓練が始まったのもいい思い……出かな。


「あ、アオさん。スキルはどんなのがありますか?」


「スキルですか?」


 職業適正意外にも、スキルなんてのもあるんだ。


 じいちゃん……聞いてないよ。


 そう、心の中で聞くと「えっ、聞かれてないもん」って返答があった気がしてムカついたのでじいちゃんに頭の中でエルボーをかましてやった。


「アオさーん? 聞いてますか?」


「はい!」


 そうか、スキルだ。


 えっと……『攻撃力上昇』だけだ。


「攻撃力上昇ってのだけでした。これって、どうなんですか?」


 いまいち、強さが分からないな。


「パーセントは書いてませんか?」


 パーセント?あっ、ほんとだ小さく書いてある200%だ。これって、どうなんだろと受付嬢に聞くと目を見開いて愕然(がくぜん)としていた。


「200%!? 高すぎます、普通の付与術師は2%くらいなのに……」


 どうしたんだろ、受付のお姉さん。また、ブツブツ何か言ってるよ。


「お姉さんーー??」


「は、はい! すみません」


 呼びかけると、すぐに正常に戻った受付嬢は職業とスキルを専用のカードに読み込むと。


 元の営業スマイルで、


「お待たせしました。貴方なら、とてもいい冒険者になれると思います」


 と言った。


「あなたに、ぴったりなパーティーを私が……」


 受付嬢の言葉を遮るように、一人の男が大きな声で(さえぎ)るとこちらへと近づいてきた。


 135センチくらいしかない僕からしたら壁のようにしか見えない大男が。


「坊主、まだここに来て冒険者になったばかりだろ?」


 その威圧にビビりながらも、返事をすると。


「はい」


「なら、俺のパーティーに入れてやるよ」


 そうして、僕は冒険者登録をして5秒でパーティーに入ることになった。


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