一話
崖に立っている
あと一歩で、今までがなくなる
「楽だな」
僕は言った
足を踏み出そうとする、死に近づく
「ねぇ」
背後で声がした
咄嗟に振り向く
長い髪で、整った顔立ちをした女が立っている
世間一般的にはこういう顔をした女を綺麗と言うんだろう
「相葉君、死にたいの?」
矢吹夜がそこにはいた
6月下旬、朝のホームルームで突然 そいつ はやってきた
担任の叶先生が言う
「今日から転校生が来ます」
教室が一気にざわめく
「じゃ、入ってきて」
叶先生がそういうと、1人の生徒が教室に入ってきた
「矢吹夜です、親の事情で引っ越してきました。よろしくお願いします」
機会が一連の動作をただ繰り返すように、挨拶を終える
先生が何やら指示をして、矢吹は僕の隣の席に座った
「僕は相葉凛、よろしく」
とりあえずで思いついた挨拶をする
「よろしくね」
とだけ、矢吹は返してきた。
ホームルームが終わると矢吹が突然話しかけてきた
「相葉君はさ、生きる意味ってなんだと思う?」
「わかんないよ」
とだけ僕は答えた
その日、何も無く学校は終わった
僕の家から十五分程自転車を漕いだところに、崖がある
崖と言っても山の中にあるのだが、僕はよくそこに行く
崖の淵に立つ、1歩足を出せば死が迎え入れてくれる
自分が生きているのかどうかわからなくなってくる
感覚が自分のものじゃないようになってくる
「ねぇ」
咄嗟に振り向くと
矢吹がいた
「相葉君、死にたいの?」
この状況を見れば、普通の人間ならまず心配の色を顔に浮かべるんだろう
だが、矢吹は違った
普通じゃない
矢吹の顔には心配の色はない
むしろ、期待のような感情があるように感じられた
「そんなわけないだろ」
面倒事になったら困るので、とりあえずこう返した
矢吹は顔に一瞬疑問を顔に出した
だが、すぐに何も無かったように顔を戻して
「嘘つき」
ニヤリと笑みを浮かべた




