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契約の祠

ルーシャ村滞在3日目、勇樹達は契約の祠を目指し北西の方角へと歩き始める。

今回、勇樹と契約したいと申し出た精霊ミカヅチは雲の上からついてきている。精霊との契約……以前自分は冗談交じりに言っていたが、本当に精霊を扱えるようになれるとは思っていなかった。

契約はどうやってするのだろうか……勇樹は緊張していた。

アルベージュの言ったとおり祠には2日で到着した。


「ここが、契約の祠……」


そこは小さな洞窟だった。


「では僕は外で待ってますので契約を済ませてきてください」


「え、ついて来てくれないのかよ」


「僕は契約者じゃありませんから待ってますよ」


勇樹は仕方なく一人で洞窟に入っていく。

洞窟は狭く奥に小さな泉があり女性を形どったご神体が置かれていた。


「では、契約の儀式を始めようとするか」


青白い光と共に勇樹の目の前にミカヅチが現れる。


「お、おう。よ、よろしく」


「なに、そんな緊張する程のものではない。すぐに終了する」


安心させるためかニカッと白い歯を見せてミカヅチは笑う


「では…ゆくぞ」


ミカヅチが泉の中に入り勇樹に顔を向け傅いた。


《我、大精霊ルーモスの名において契約者の剣とならん》


ミカヅチがそう言うとご神体が白く光り輝く。そしてどこからともなく女性の声が響いた。


《汝、ミカヅチよ。大精霊ルーモスの名において、風森 勇樹の剣となる事を許可せん。その命が失われし時まで尽くすがよい》


そして、勇樹の目の前にソーダーライトに似た石を中央に埋め込んだ青銀の籠手が現れた。


「うぉ?」


《我は大精霊ルーモスなり。それは守護装具しゅごそうぐこのミカヅチの力を制御するお前を護りしものだ。受け取るがよい》


「あ、はい」


勇樹は籠手を装着する。籠手は金属製の見た目より軽かった。なんだか変な感じではあるが徐々に慣れていくだろう。ミカヅチは再び青白い光になると籠手の中へと入っていく。


「この守護装具こそ我らがルーモス様の下、契約した証なり。よろしく頼むぞ勇樹殿」


そう勇樹も笑顔を浮かべ、洞窟の外に出る。

アルベージュが待っていた。


「終わりましたか」


「おう、守護装具?っての大精霊にもらった」


「契約は無事終了したみたいですね。なによりです。キミは籠手ですか」


「みたいだな。籠手だった」


「では一度、人気のないところに行きましょうか。一度力を使って見なくてはね」


近くにいい場所を見つけたんですよ。とアルベージュが先導する。

そこは人気のない山だった。


「ではミカヅチを呼び出してください」


「え、どうやって?」


「籠手に想いを込めて詠唱すればいいんです」


「え、詠唱!?」


マジか……


詠唱と言えばゲーム内でよく見る「大地を焦がせ__ボルケーノ!!」とか言う呪文みたいなアレだ。

普通に呪文を言うのであれば恥ずかしくは無いが、詠唱はなんだか恥ずかしい。


《勇樹殿。どうしたでござる?》


「は、恥ずかしいんだけど」


《詠唱を恥かしいとな!?そんな人間は初めてでござる》


ミカヅチはオーバーに驚いてみせた。それが勇樹の恥ずかしさをくすぐる


「どうしたんです?詠唱しないんですか?」


「い、今するよ…えっと…えっと…籠手に想いを込めるんだったな。古の大地を穿つ蒼き雷よ。契約者の命において命ず。我が前に姿を現せ!」


勇樹の口が勝手に動き呪文を唱えた。

すると籠手が青白い光に包まれ、中央のソーダーライトにいかずちが落ちる。

そして、武士のような男が姿を現した。


《うむ。成功でござる》


ミカヅチはニッカリと人懐っこい笑みを浮かべる。


「これ、いちいち言わなきゃいけないのか……」


「嫌なんですか?」


「嫌じゃないけどさ…笑われないかな」


「戦闘中に笑う人なんていないと思いますよ」


アルベージュはきっぱりという。


「これで晴れてキミも召喚士ですね。魔物を倒していくと魔王軍にバレてしまう可能性がありますが、頑張りましょうね」


アルベージュがニコリと笑む。


《なに、我らが居れば百人力、心配は無用でござるよ》


「さっきから気になってたんだけど……お前のその"ござる"口調は何?」


籠手に戻ったミカヅチに向けて勇樹が言う

さっきからミカヅチの口調がおかしかった。突っ込むのも面倒だが…だんだんイライラしてきたのでツッコむことにした。


《これか?これは勇樹殿と契約した折に見えたビジョンでな。我は"サムライ" "ブシ" "ニンジャ"というものが大層気に入った。ゆえに口調を真似してみたのだが、どうだ?》


どうだ?と無邪気に尋ねるミカヅチに勇樹はため息を吐く


「別に。今の格好にあってるからいいけど、そのうち寿司が食いたいとか言うなよ?」


《すし!?天ぷら!!作れるのでござるか?》


「職人みたいに美味いもんは作れないけど、作り方ならとりあえず知ってるし見よう見真似でできるぞ」


《おぉおおお!さすが日本男子でござる!拙者、命の限りついていくでござるぅ!》


精霊の口から日本男子という言葉が出てくるとは思わなかった。

勇樹がミカヅチのテンションに軽く引いていると「いいですか?」とアルベージュが地図を広げながら言った。


「次の場所ですが……」


「サンフォードだろ?」


「ええ。ですが、近場であるとまた魔物の襲撃に遭うと思いますので、こちら、ドルミアの街に致しましょうか」


「ドルミア?」


「ええ。ドルミアの街は貿易が盛んな商業都市なんです。色々な人種や職業の方が訪れます。なので色々な話が聞けるかと」


「なるほど。んじゃそこでいいよ」


「ふふっ…ありがとうございます。では行きましょうか」


アルベージュはくすりと笑った。

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