60.6:小話3-3
◆セシリアと最近よくある光景
セシリアは受付に座り、またしても頭を抱えていた。
近頃の自分の行動を思い返し、反省しているのだ。
レインとの仲を周知させようと思い若手冒険者たちの前で変なことを言ってしまったり、『スキル共有』したくて何度も『お口ぺろぺろの刑』を実行しようとしたり、嫉妬心に駆られてレインからアイシアたちを引きはがしたり、オーファを相手にレインへの独占欲を剥き出しにしてしまったり、などなど。
どう考えてもやりすぎだ。
後から思い出すと、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
あまり変なことをしすぎるとレインに嫌われてしまう。
そうは思うものの、いざレインを前にすると、どうしても感情が暴走してしまう。
無性に抱き着きたくなったり、変なイタズラをしてみたくなったり、大胆なことを言ってみたくなったり。
そんなことしちゃダメだってことは、わかっている。
なのに止まれない。
セシリアはそんなことを考えながら悩んでいた。
そんなとき、食堂の方から声が聞こえてきた。
セシリアは視線だけをそちらに向けた。
会話をしていたのはレインと若手冒険者たちだった。
「レインはセシリアさんとオーファさんの、どっちが好きだべ?」
なんだその面白そうな質問は!
セシリアは顔ごとそちらを向いた。
セシリアとしては、レインが「オーファより、セシリアさんのことが大好きです」と言ってくれるのはわかっているが、とても興味深い。
ぜひレインの口から聞きたい。
セシリアからはさっきまでの反省がすでに吹き飛んでいる。
レインは少し赤い顔になり、小声でなにかを言った。
「……ぉ……ぁ……」
セシリアの位置では遠すぎて聞き取れない。
なんて言ったのか気になる。
「だべ! レインはオーファさ――」
「わああああっ! そんな大きな声で言わないでよっ!!?」
「ぐえっ、ご、ごめんだべ、ぐるじいべえええ!」
「レインはオーファ」という言葉に、セシリアの目から光が消えた。
「レインはオーファさんが好き」と続くのだと理解してしまったのだ。
だが次の瞬間、こんなことを考えた。
きっとレインは「僕はセシリアさんのことが大好きだけど、オーファのこともそれなりに好きだよ」と言ったに違いない。
そしてあのレインに絞められている冒険者は、「だべ! レインはオーファさんより、セシリアさんのことが大好きなんだべ。2人のお似合いさを見たら納得だべ」と返したのだ。
絶対にそうだ。
そうに決まっている。
セシリアの目に光が戻った。
そしてちょっとイタズラをしたくなった。
受付を出て食堂に近付く。
「レインくーん!」
「セ、セシリアさん」
レインはさっきまでの会話が聞かれていたのかと思って、ちょっと焦った。
だがセシリアはそんなことおかまいなしに、レインに話しかける。
「レイン君、ちょっとこっちの椅子に座ってくれる?」
「え? はい、わかりました」
「ありがと、それじゃあ、しつれいします♡」
「へっ!?」
セシリアは素早くレインのひざに跨った。
先日アイシアがやっているのを見てから、自分もやってみたいと思っていたのだ。
ちなみにアイシアもそうだが、スカートの丈が長いので、ひざに跨っても捲れておらず、脚を露出することはない。
大胆なのにとてもガードが堅い。
「ねえ、レイン君♡」
「な、ななな、なんですか、セシリアさん」
「私ね、ちょっと疲れが溜まってるみたいなの」
「え!? だ、大丈夫ですか? まさか、どこか身体の具合が?」
「ふふ、心配してくれてありがと。でも大丈夫よ」
「ほっ、それなら良かったです」
「けどね、レイン君にマッサージしてほしいなぁ、って思って」
「はい、もちろ――」
もちろんと言いかけて止まるレイン。
前回の騒動を思い出したのだ。
迂闊な発言はできない。
だが言葉を止めたのが少し遅かった。
セシリアがイタズラっぽい顔でこう言った。
「ありがとー。それじゃあ今日の夜は、レイン君が触りたいところを重点的に揉んでね?」
レインは色々と想像してしまい、ビシィっと身体が硬直させた。
ビィィンッと硬くなったともいえる。
ビンビンである。
健全な若者なので仕方がない。
セシリアはもぞもぞと座る位置を調整しながら、そのことを確認し、秘かに喜んだ。
なんとも度し難い。
その様子を見ていた若手冒険者が騒ぐ。
「まただべか、レイン! また1人でそんな美味しい思いをおおお!」
「レインはきっと美人姉妹を並べて、交互にマッサージする気だべえええ!」
「おのれ破廉恥なあああ! 羨ましいべえええ!」」
やいのやいのと騒ぎたて、地団太を踏む。
最近よくある光景である。
その後、休憩が終わったレインたちはセシリアと別れ、再び訓練所へと戻っていった。
この後も一緒に訓練するのだ。
年が近いレインと若手冒険者たちは、なんだかんだで仲が良い。
セシリアも受付に戻った。
そして、またやっちゃったー! と、頭を抱えたのだった。
最近よくある光景である。
◆棒をつっこむ
王都の街中。
レインとオーファとエルトリアは、棒のついたアメを舐めていた。
3人ともそれぞれが違う味である。
オーファはレインが舐めているアメに興味を持った。
「レイ、そのアメはどんな味なの?」
「ちょっと舐めてみる?」
レインはそう言いながら、自分のアメを差し出した。
「え!?」
と、驚くオーファ。
思わぬ行幸だ、間接キスなんて嬉しすぎる。
こんなご褒美がもらえるなんて、買い食いもたまには悪くない。
そう思って、喜んだ。
だがレインはその反応で勘違いをした。
「あ、ごめん、僕が舐めたアメなんて嫌だよね?」
「嫌じゃない! いい! すごくいい!」
オーファは慌ててレインのアメに手を伸ばした。
しかしレインは、オーファが自分に気を遣ってそう言っているのだと思った。
アメをオーファから遠ざける。
「オーファ、そんなに無理しなくていいよ」
「無理なんてしてないもん、舐めさせて」
「無理しなくてもいいってば!」
「レイのを舐めたいもん!」
頑ななオーファ。
だがレインは、そこまで言われると逆に疑わしいと思った。
優しいオーファのことだから、絶対に自分に気を遣って無理をしているに違いない。
大好きなオーファに無理をさせたくない。
そう考えたレインは、自分のアメを一口で食べた。
「ぱくっ! ばりばり、ごくん」
「ああ!?」
落ち込むオーファ。
それを見ていたエルトリアは、自分のアメをレインへと向けた。
「レイ君、わたくしのアメを、ぜひ味見なさってください!」
「え、いえ、でもそれは」
「お願いします、味見してくさい、少しでいいですから」
「で、では、ぺろ」
と、舐めるふりをするレイン。
エルトリアはふりと気付かずに喜んだ。
「わーい、ありがとうございます!」
大喜びだ。
レインは舐めたふりをしたことに、微妙に罪悪感が湧いた。
オーファもふりに気付いていないので、悔しがっている。
「ぐぬぬ、あたしは舐めれなかったのに!」
「それでは、ふふ、わたくしは今からこの、ふふふ、レイ君に舐めていただいたアメを、ふふ、舐めて、ふふふふふ、じゅる」
だらしなく緩み切った顔のエルトリア。
そのとき突如、オーファが遠くを指した。
「あ、見てエル、あっちにレイに関するすごいものがっ!」
「ええっ、な、なんですかぁっ!?」
くわ! とそっちを見るエルトリア。
「すきあり! ぺろ」
「ああっ!? レイ君に舐めていただいたアメがあああ! ひどいですぅっ!」
「ふふん、残念だったわね!」
「レイ君、もう一度、舐めてください!」
「レイ、あたしのも舐めさせてあげる!」
「え、いやあの、流石にそれは」
「「えい!」」
「むぐぅ」
強引に口にアメを入れられるレイン。
2人とも普段は優しいのだが、競い合っているときは過激になる。
◆いらいら男子
レインのクラスメイトの男子たちは、いつもイライラしている。
レインばっかりが女子にモテるのが面白くないからだ。
子供の頃の男子たちの興味は、年上のイヴセンティアに向いていた。
だが歳月が経つにつれ、クラスの女子たちにも興味を持ち始めた。
貴族の子女が通う王立学院には、成績に、『容姿』という評価項目がある。
クラスの女子たちは全員、その『容姿』が非常に優れている。
奇跡といえるくらい、ハイレベルな美少女しかいない。
年頃の男子たちは、そんな美少女たちに興味津々なのである。
だが学院の女子たちの興味はレインに集中している。
いつもいつもレインが美少女を独占しているのだ。
レインの『容姿』は、せいぜいが『並』程度。
美形には程遠い。
むしろ他の男子たちの方が美形である。
男子たちのレインの評価はこうだ。
貴族ですらない平民の男。
親に捨てられた汚らしい孤児。
貧乏。
顔の造りは普通。
スキルは『攻撃力上昇』が1つだけ。
最底辺のイジメられっ子。
社会のゴミ。
男子たちは、そんなゴミのようなレインが美少女たちにモテることが面白くない。
でも何も言うことができない。
レインと和解すれば、おこぼれに預かれるかもしれないと考えたこともある。
だが、そんなことをする気は毛頭ない。
「おはようございます、レインさん」
「レインさん、クッキーを焼いてみたので、もしよかったら」
「レインさん、私はお紅茶を用意してきました」
クラスの女子にチヤホヤされるレイン。
男子たちはそれを妬ましく思いつつも何もせず、今日もダラダラと過ごしたのだった。
◆開戦、いきなりの劣勢。
ついにヴァーニング王国と獣人連合国の戦争が始まった。
開戦から数日、ヴァーニング王国はすでに劣勢である。
東にある穀倉地の4分の1以上を制圧されてしまった。
王国市民は新聞からその情報を得ていた。
ちなみに王立新聞がプロパガンダに利用されることはないので、正しい情報源として重宝されている。
レインたちはギルドで戦争についての話をしていた。
今日は久々に、ルイズたちが王都に帰ってきている。
「ルイズさん、このまま王都も戦場になるんでしょうか?」
不安げなレイン。
だがルイズは首を横に振って答えた。
「いやそれはない。獣人連合国が欲しいのは穀倉地だけだ。わざわざ王都に攻め込んできたりはしないはずだ」
「そうなんですか?」
「ああ、獣人連合国は慢性的な食料不足が問題視されているからな。今回の戦争も、食料生産地の確保が目的だろう」
「獣人連合国では、土地が痩せていたりするんですか?」
レインは土壌が貧困だから作物が育たず、食料不足なのかと考えた。
しかし、それにもルイズは首を横に振った。
「いや、違う。食料が足りないのは1つの国に様々な獣人が一緒に住んでいることが原因だ。種族によって主食が違うから、国の主導で食料の大量生産を行えないんだ。特定の種族を優遇するわけにもいかんからな」
レインは、なるほどと納得した。
それと同時に、別の不安が持ち上がった。
「ということは、穀倉地が全部奪われてしまうかもしれませんね」
そうなれば、王都で暮らすことはできなくなる。
みんな飢えてしまう。
「いずれはそうなるかもしれん。だが、すぐではない。今の獣人連合国には、これ以上、占領地を広げることはできんはずだ。戦力が足りん」
「そうなんですか?」
「ああ。獣人連合国も1枚岩ではないからな。今回の戦争も、一部の種族が暴走しただけだろう。おそらく何年か前に王都に来た狼人族だな。1つの種族では農村を制圧統治するにも、数に限界がある」
「なら、しばらくは被害が広がることはなさそうですね」
「そうだな。だがもう少ししたら、他の種族も動き出すだろう。このままなにもせずに見ていたんじゃ、せっかくの新しい領土を、すべて狼人に独占されてしまう。それは他の種族にとって面白くないだろう」
そんな感じで、ルイズによる戦争情勢の勉強(?)は進んだ。
翌日の新聞にもルイズの見解と同じような分析が書かれていた。
王国民たちは食料難になることを予想し、早くから自主的に節制を始めた。
レインが街でプリミスト卿と出会うと、いつもはまん丸の頬が、少し痩せていた。
どうやらプリミスト卿も節制しているらしい。
外見の割に、意外と真面目だ。
そんなこんなで戦争にはなったが、王都は割と平和である。
◆運営理事
王立学院の運営理事たちは1つの議題について話し合っていた。
すなわち、『レインを卒業させるか否か』についてだ。
大多数が『否』を主張している。
だが中には、別に卒業させても良いのではないかと考えている者もいる。
「スキル無しの割には成績も良いようだし、卒業基準は満たしている。卒業試験にさえ合格すれば、卒業させても問題ないだろう」
1人の男が、手元の成績表を見ながらレインの卒業を認める発言をした。
とはいえ、別にレインのことを思っての発言ではない。
面倒くさいから、早く会議を終わらせたいだけだ。
ちなみに、レインが『攻撃力上昇』のスキルを持っていることは周知されているのだが、運営理事たちの手元にある資料にはそういった非公式的な情報が載っていない。
なのでレインのことを、いまだにスキル無しの『無能』だと思っている。
さらに当然ながら、レインがエルトリアたちと仲が良いことも知らない。
教育現場を自分の目で見ていないので当然だ。
上がってくる事務的な資料のみで判断しているのだ。
そんな理事たちだが、自分たちが王立学院を運営していることに誇りを持っている。
その誇りは、自分たちの名誉や名声を守るためにだけにあるものだ。
理事たちの生きがいは、己の名誉欲を満たすことなのだ。
1人の男が激昂しながら、レインの卒業に『否』を唱えた。
「馬鹿を言うなッ! 『無能』を卒業させるなど、誇りある王立学院の恥だぞ! 卒業生の名前は、外部機関にも記録として残るのだ。我々の栄光ある職歴に、未来永劫、消えない泥を残す気か!?」
他の理事たちもそれに続く。
「その通りだな。それに今まで『無能』を在籍をさせていたのは、イジメの受け皿として優秀だという報告があったからだ。すでに姫へのイジメの心配がないなら用済みだろう。さっさと退学させるべきだ」
「あの『無能』はどこの貴族家にも属していないのだ。なら、誰にも文句は言われまい」
次々にレインの卒業に『否』を唱えていく。
最初に卒業を認めるという発言をした男も、いつの間にか『否』へと意見を変えていた。
その方が早く会議が終わりそうだと思ったのだ。
あっという間に、全員の意見が『卒業は否』でまとまった。
「退学させるのは良いが、一応は何か理由が必要だろう。どういう理由で退学させる?」
「卒業試験で不合格にすればいいだろう」
「それだと留年扱いになるだけで、退学にはできん」
「そもそも理由なんていらんだろ。無理やり退学という事実だけを押し付けて、学院から放り出してしまえばいい」
内務担当の理事の言葉に、外務担当の理事が首を振る。
「そうもいかん。外部に渡す資料に、すぐにバレる嘘を書くわけにもいかんのだ。私たちの仕事内容を馬鹿にされてはかなわんからな。それなりに信憑性がある理由が必要だ」
「そうだな。雑な処分方法では、我々の名誉に傷がつく。ことは慎重に運ぶべきだ」
理事たちは、自分たちの名誉や名声を守ることには勤勉である。
それだけが生き甲斐なのだ。
あーでもない、こーでもない、と頭を悩ませる。
だがなかなか決まらない。
そんなとき、1人の男がこんなことを言った。
「卒業試験の内容を、1人だけ過酷なものにするのはどうだ。それで『無能』を事故死させればいい」
王立学院の卒業試験は、それぞれの生徒に、1人ずつ違う課題が与えられる。
所持しているスキルや、専攻している授業に合わせて内容が決められるのだ。
「それは良いが、確実に事故死するような試験なんて用意できるのか?」
「ああ。今は丁度、東が賑やかだろう?」
東にあるのは獣人連合国。
「なるほど。戦場に送り込んで、獣人どもに始末させるということか」
『無能』が獣人に出会えば、抵抗すらできずに確実に殺されるだろう。
賛成多数で、その案が採用されることになった。
特に、自分たちの手を汚さずとも、獣人が勝手に『無能』を処分してくれるという点が決め手になった。
「具体的な試験内容はどうする?」
「敵の前線基地への、単独での強行偵察任務という設定での試験はどうだ。それで間違いなく死ぬだろう」
「もし逃げだしたら?」
「行方不明でいい」
「逃げ戻ってきたら?」
「もう一度行かせればいい」
着々と試験内容が決められていく。
「だが流石にこの試験内容だと、『無能』も不審に思うんじゃないか?」
いくら『無能』といえど、試験内容がおかしなことにすぐに気付くだろう。
学生が単独で敵の前線基地に乗り込むなど、普通はあり得ない。
「信じやすくなるように、これを飲ませる」
1人の男が怪しげな薬を取り出した。
「なんだこれは?」
「『酒酔剤』、魔力活性薬の一種だ。これを飲むと、半日ほどの間、酒に酔ったのと似たような状態になる。冷静な判断が難しくなるだろう」
「便利なものだな?」
「ああ。だが効果自体は薄い。精々がコップ1杯の麦酒程度の酔いだ。大量に飲ませても効果は変わらん。だから泥酔にはできん。その代わり、毒無効スキルでもない限りは防ぐ手段がない代物だ。茶にでも混ぜて飲ませれば、少しは信じやすくなるだろう」
「なるほど。この薬を使うことで、何か問題はあるか?」
「飲んでからしばらくすると、かなり気分が悪くなる。だが半日経てばそれも治るはずだ。だから大した問題じゃない」
「ふむ、決まりだな」
「ああ」
こうして理事たちの悪巧みは続いた。
◆ナカルド、お尻のピンチ!
田舎者のナカルドたちは、なんやかんやあって怖い筋肉男たちに絡まれた。
筋肉男たちは戦場付近の街から逃げてきた難民だ。
いろいろあって、とても怒っている。
難民になる前は自警団に入って訓練していたので、ガタイも良く、人数も多い。
若手のナカルドたちでは敵わない。
「や、やめてくれだべ!」
「うるせぇ! こっちに来やがれ! テメェら全員、ケツ叩き100発だっ!!!」
「だべええええ!」
路地裏に引き込まれそうになるナカルド。
このままではナカルドたちのお尻がボッコボコにされてしまう。
絶体絶命のピンチ。
そこに、たまたま通りかかったレインが助けに入った。
「ま、待ってください!」
ナカルドたちには、颯爽と現れたレインが王子様に見えた。
とても格好いい。
「ああんっ!? なんだテメェはっ!?」
「なにがあったかは知りませんが、乱暴なことはやめてください!」
「その制服は……」
筋肉男たちは、王立学院の制服を知っていた。
なのでレインを貴族の子供だと思った。
乱暴はできない。
二の足を踏む筋肉男たちに、レインは頭を下げた。
「お願いします。僕の友人たちが、貴方たちに失礼を働いてしまったのかもしれませんが、どうかお許しください。この通りです」
腰を深く折るレイン。
やたら頭の低いレインに、筋肉男たちは怒気をそがれた。
ちなみにレインの後ろには表情のないオーファが立っている。
レインはオーファが暴れ出さないように必死だ。
筋肉男たちはオーファを見て驚いた。
生まれて初めて見るような美少女である。
この子も貴族の子供だろうかと考えた。
それからその美貌に見惚れ、ぐぬぬと歯ぎしりしてから、引き下がることにした。
命拾いしたともいえる。
「ちっ、わかったよ。おい、そっちのガキども、この黒髪のお坊ちゃんたちに感謝するんだな」
そう言い残し、立ち去っていく筋肉男たち。
お尻のピンチを乗り切ったナカルドたちはレインに感謝した。
口々にお礼を告げる。
「助かったべ、やっぱりレインは心の友だべ!」
「ありがとうだべ! レインは格好いいべ!」
「オラ、セシリアさんとオーファさんの気持ちがわかったべ!」
その後、レインはナカルドたちから事情を聞いた。
「なんであの人たちは怒っていたの?」
「だべ、『オラたちの憧れのセシリアさんとオーファさんに比べたら、おめぇらの憧れの女なんて腐ったジャガイモだべ』って言ったら、キレられただ」
あっけらかんと言うナカルドに、レインは呆れた。
それはキレて当然だ。
お仕置きが必要かもしれない。
「みんな、今度、マフィオさんにお尻を叩いてもらおうね?」
「だべっ!?」
マフィオによる尻叩きは痛いだろう。
きっと筋肉男たちの比ではない。
再び訪れたお尻のピンチ。
ナカルドたちは慌てて筋肉男たちに謝りに行った。
「「「さっきはひどいことを言って、ごめんだべ!」」」
「いや、もう気にしてねーよ」
結果的に、無事に和解して、平和な解決をみたのだった。
◆あとがき
それは本編で書けよ! みたいな情報もガンガン小話内に書いていくスタイル。




