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53:平和な朝

 レインは16才になった。

 王立学院に通うのも今年で最後だ。


 今は早朝。

 日課の配達を終え、家へと帰ってきたところだ。


 「おはようございます、セシリアさん」

 「おはようレイン君」


 いつものようにセシリアが朝食の支度をしてくれている。

 やはり料理の手際がいい。

 みるみる朝食が出来上がっていく。


 セシリアの容姿は、レインと初めて出会ったころからまったく変わっていない。

 オーファが言うところの、『すごい老化防止スキル』の効果だろう。

 本当にすごい。


 ちなみに今では、セシリアよりもレインの方が背が高い。

 2人で並ぶと、なんだか不思議な気分だ。

 すごく大人だと思っていたセシリアだが、見た目だけなら、今では同世代に見える。

 流石にまだセシリアの方がお姉さんだが、後数年もすれば、レインの方が年上に見えるだろう。


 レインはそんなことを考えながら、セシリアに問いかけた。


 「なにか手伝いましょうか?」

 「うーん、もう少しで朝ご飯の用意ができるから、レイン君はオーファちゃんを起こしてきてもらえるかしら?」

 「わかりました」


 レインは頷き、オーファの寝室へと向かった。

 オーファは朝に弱いので、レインが起こすことは珍しくない。


 コンコン、とノックして呼びかける。


 「オーファ、朝だよ」


 返事は無い。

 よく眠っているようだ。


 「入るよ?」


 扉を開けて中へと入る。

 部屋はカーテンが閉まっている。

 朝だが薄暗い。

 オーファはベッドで、すぅすぅと静かに眠っているようだ。


 「オーファ、朝だよ、起きて」

 「うぅん……すぅ」


 長い睫毛がぴくぴくと動いたが、また眠ってしまった。


 「ほら、起きてオーファ」


 レインはそう言いながら、オーファのほっぺをくすぐる。

 白くてすべすべの肌は、もちもちしていて柔らかい。


 くすぐられたオーファが、もぞもぞと身をよじった。


 「ふふふ、くすぐったいよぅ、レイ、むにゃ」


 完全に寝ぼけている。

 結局また眠ってしまった。

 だがオーファが身をよじったことで、被っていたシーツが少し捲れた。


 ぽよーん。


 大きい。

 オーファはとてもスマートだが、その双丘はとても大きい。


 オーファの寝間着は薄手のキャミソールだ。

 形と大きさがはっきりとわかる。

 それどころか谷間まで見えている。


 オーファがレイン以外の男の目があるところで肌を露出することは決してない。

 だが逆に言えば、レインの目しかないところでは露出度の高い服を着ることがある。

 寝間着姿はレインかセシリアにしか見せないので、少し大胆なキャミソールなのだ。


 肩は完全に出ている。

 身体のラインもはっきりわかる。

 胸元の露出度も高い。


 ごくり。


 レインはオーファの胸に目が釘付けになっていた。

 若くて健康な男の子なのだから当然の反応である。

 だが慌てて目を逸らし、捲れたシーツをかけ直した。


 そして思わず、いや、かけ直してどうする! と内心で自分にツッコミを入れた。

 起こしに来たのにシーツをかけ直していたのでは意味がない。

 本来はシーツを剥ぎ取って然るべきなのだ。

 しかし、これ以上オーファの無防備な姿を見ていたら理性が危ない。


 オーファがレインに暴力を振るうことなど絶対にない。

 だがオーファのスタイルの良さはとても暴力的だ。

 レインの理性をガンガンと破壊してくる。

 悩殺と言ってもいい。

 殺人的なプロポーションの良さである。


 レインはもう子供ではない。

 ゴブリンがなぜメスを欲するのか。

 その質問がなぜ皆を困らせるのか。

 その理由をちゃんと理解している。

 それくらい大人なのだ。


 そんなレインの目の前で無防備に眠るオーファ。

 今や『三優美女』の1人と謳われる美貌。

 奇跡のような造形美。


 三優美女とは、ヴァーニング王国三大美女のことである。

 ヴァーニング王国は世界有数の大国で比較的美人が多いことでも知られている。

 その国で頂点と言うことは、世界最高峰の美人という意味にもなる。


 世の男たちなら、そんなオーファの寝顔だけでも生唾ものなのだ。

 初心うぶなレインには、露出度の高い寝間着姿の刺激が強すぎる。

 大人になっても、やはりレインはレインなのである。


 「オ、オーファ、朝だよ、お願いだから起きてよ」


 そう言いながら、シーツの上からオーファの肩を揺する。

 その声は微妙に情けない。


 そんなレインの声を、微睡まどろみながら聞いているオーファ。

 その顔は、寝ぼけつつも幸せそうだ。


 もし聞こえてくる声が他の男の声だったら、即座に覚醒して殴り飛ばしているだろう。

 むしろ声が聞こえる前に、気配だけで覚醒する。


 しかし、世界で一番大好きなレインの声を聞いていると、どこまでも心が幸せに蕩けていってしまい、いつまでも微睡まどろんでいたくなってしまう。


 「レイぃ、ふふ」


 オーファは寝ぼけたままレインへと腕を伸ばしてじゃれつく。

 再び捲れるシーツ。

 ゴリゴリ削れるレインの理性。


 「オーファ、お願い起きて! ちょっと待って、抱きつかないで! ダメだってば、起きてよオーファ!」

 「んん、やぁだぁ、いっしょに寝よぉ?」


 2人の幸せな格闘はしばし続いた。



 「ごめん、レイ。ちょっと寝ぼけてたみたい」


 ようやく目が覚めたオーファがレインに謝った。


 レイン的には全然「ちょっと」ではなかったが、オーファ的には「ちょっと」だったようだ。


 とはいえレインもそれを責める気はない。

 なにせオーファが寝ぼけるのは珍しくないことなのだ。

 レインが起こしに来ると、かなり高確率で寝ぼけている。


 「ううん、気にしてないよ。じゃあ先に行ってるから、ちゃんと服を着て来てね」


 レインにしてみれば、キャミソールはちゃんとした服ではなく、ただの肌着だ。

 感覚的には下着に近い。

 そんな扇情的な姿でうろうろされたら理性がもたない。


 そんなわけでレインはオーファの部屋からそそくさと立ち去ったのだった。



 しばらくするとオーファが着替えて起きてきた。

 3人そろって食卓に着き、朝食を食べ始める。

 ラインリバー家の毎朝の光景だ。


 今日のお互いの予定を確認し合ったり、雑談に花を咲かせたり。

 3人にとっては、とても楽しく大切な時間だ。


 トーストにジャムを塗り終えたセシリアが、ふとレインに問いかけた。


 「ところで、レイン君は卒業後どうするか、もう決めてるの?」

 「王国軍に入隊しようと思っています」


 レインは昔から騎士になることを目標にして、王立学院に通い続けてきた。

 イジメられても学院に在籍し続けたのは、その目標があったからだ。

 高等部に進学してからは、騎士専攻の授業を多く選択して受けている。


 だが、そんなに簡単には騎士になれないこともわかっている。

 なのでとりあえず、卒業後は軍に身を置きつつ、一般の兵科から騎士を目指そうと思っている。

 王立学院の卒業生は下級士官として扱われるので、騎士を目指しやすい。


 そんなレインの進路計画だったが、セシリアの表情はあまりよろしくない。


 「レイン君は貴族じゃないんだから、別に軍に入る義務はないんじゃないの?」


 セシリアは、レインが軍に身を置くことを心配している。

 特に今は獣人連合国との関係が最悪なので、その心配も大きい。


 日々高まる両国の緊張感、いつ開戦してもおかしくない状態だ。

 軍属になれば、前線へ赴くこともあるだろう。

 そうなれば最悪の場合、死んでしまうかもしれない。


 いかにも心配性のセシリアらしい考えだ。


 オーファもそのことを心配しているが何も言わない。

 できる限りレインの望むようにしてやりたいと思っているからだ。

 それにもしレインが前線に行くのなら、自分もついていって守ってあげればいい。

 そんなふうに考えている。


 レインとしてもセシリアの心配は良く分かるし、その気持ちをありがたくも感じる。

 だが今のところ、その進路予定を変える気はない。


 「確かに義務はないですけど、王立学院の卒業生が一番なりやすいのは軍属ですからね。それに一般兵ならそこまで危険じゃないですし」


 今の戦争の主流は、少数精鋭同士のぶつかり合いだ。

 大昔のように、何万人もの兵士を並べて戦ったりはしない。

 戦力外の一般兵をどれだけ前線に並べても、無駄な戦死者が増えるだけで意味がないからだ。


 戦争で実際に戦うのは、主に騎士たちなのである。

 騎士隊以外の兵科が最前線で戦うことは少ない。


 だからセシリアが心配するほど危険ではないのだ。


 「そうなの? レイン君がそう言うのなら無理には止めないけど。……卒業しても、2階に住んでくれるの?」


 セシリアが秘かに気にしていることは、実はこれなのだ。


 セシリアにとって、最早レインは家族なのである。

 オーファと3人での暮らしは、とても楽しいし幸せだ。

 なのでレインが家を出ていってしまうと、とても寂しいし悲しい。

 できればこれからも2階に住み続けて欲しいと思っている。


 とはいえ、そう思っているのはレインも同じだ。


 「セシリアさんさえ良ければ、このまま住まわせて欲しいです」

 「うん、いつまでだって居ていいからね」

 「はい、ありがとうございます」


 そう言って笑顔になる2人。


 オーファも満足気な表情で、もふもふとトーストを食べている。

 レインが2階に住み続けてくれることが嬉しいのだ。


 ラインリバー家は、今日も平和である。

◆あとがき


平和へいわな朝です。

平和ピンフな朝と読んだ人は麻雀のやりすぎです。

自重してください。



さて、いよいよオーファちゃんが美少女感を発揮し始めました!

いままでは美幼女でしたけど、これからは美少女です!


……11才前後って幼女であってますよね?

小五ロリとも言いますし、少なくともロリではあるはず。



先日、親戚の家でジャンプ黄金期の漫画『シティハ○ター』を読みました。

その作中に「18才ってことは女子高生じゃねーか。あのオッサン、ロリコンかよ」みたいな台詞が書いてありました。


1980年、90年前半ごろは女子高生でもロリの部類だったということです。

ということは、オーファちゃんもまだまだロリっ子で通用するはず!


これでヒロインは幼女しか認めない勢の紳士諸君も安心ですね←

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