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30:ベッドの上

 レインは1階のキッチンで紅茶を淹れていた。

 加熱用の魔術具に魔力を流しこみ、湯を沸かし始める。


 余談だが、紅茶が発祥した国はノスウェという名の王国だ。

 すでに何百年も前に滅びた国である。

 魔術実験で失敗したことが原因らしい。


 ……。


 そんなこんなでレインは、素早く紅茶を淹れ終えると、お茶請けと一緒にトレイに乗せ、2階へと戻った。



 レインが2階の部屋に戻ると、エルトリアは可愛らしい笑顔でベッドのふちに腰かけていた。

 その姿には気品があり、高貴な空気をまとっている。

 エルトリアが王女であることを再認識するには、十分な光景だ。


 「エ、エルトリア様、お待たせしました。お紅茶をお持ちしました」


 レインは今更になって緊張が高まっていた。

 自分が入れた紅茶を振る舞う相手が、王女様であることを意識してしまったからだ。

 エルトリアが気さくに話しかけてくれるおかげで忘れがちになるが、王女様と言えば、この国で上から数えた方が早いくらい偉い人だ。

 無礼など、絶対にあってはならない。

 本来ならば雲の上の存在だ。

 そんな人の口に入れる飲み物を、自分が用意しても良かったのだろうか。

 そう考えると不安になる。

 そんな偉いお方が質素なベッドの上にいるということにも、なにか問題があるような気もしてくる。

 だが、今更、「ベッドから降りろ」とは言えない。


 そんなふうに思考を巡らせるレインへと、エルトリアがにこやかに声をかけた。


 「ありがとうございます。もしよければ、レイ君もどうぞ、ご一緒にお掛けください」


 自分は立っていようと思っていたレインなのだが、目上の人に座れと言われてしまっては、座らないわけにはいかない。

 そんな気がする。


 「は、はい、失礼します」


 レインは小棚に紅茶セットを置き、恐縮しながら、ベッドのふちに腰を下ろした。

 当然ながら、座る場所はエルトリアから少し離れた場所だ。

 真横に座るなんて恐れ多い。

 だから、2人の間には子供3人分ほどの距離がある。

 小さなベッドの上で、その距離はとても長い。


 エルトリアにはその距離が寂しい。


 「レイ君、わたくし、もっと近くに座って欲しいです。ダメですか?」

 「い、いえ」


 当然、「ダメです!」と言えないレインは、素直にエルトリアの望む通りに動く。

 少しだけ腰を浮かせ、子供1.5人分ほどの距離を横へとずれた。

 流石に、すぐ隣に密着するように座るなんてことはしない。

 身体を触れ合わせるなんて恐れ多いにもほどがある。

 絶対にそんなことをしてはいけない。

 そんな気がする。


 だが、残り子供1.5人分の距離を、エルトリアがススッと即座に詰めた。

 ピタッと触れ合う身体。

 伝わる体温。


 レインはこれでもかと言うほど背筋を伸ばして緊張した。


 「レイ君、わたくし、レイ君のお家に来ることができて、とても嬉しいです」

 「こ、光栄です」


 耳元で囁かれる言葉に、レインは背筋の辺りがぞくぞくするのを感じた。

 女の子特有の柔らかい身体の感触と、花のようないい匂い。

 脳髄が痺れそうになる。


 「レイ君、今日は良いお天気ですね?」

 「は、はい」


 確かに今日は良い天気だとレインは思った。

 だから戸惑いつつも即座に頷いた。


 「レイ君、昨日も良いお天気でしたね?」

 「はい」


 確かに昨日も良い天気だった。

 やはりレインは即座に頷いた。


 「レイ君、お身体に触れてもいいですか?」

 「はい、…………え?」


 レインは即座に頷いてから、質問の意味に驚いた。

 だが、すでに遅かった。

 すぅ、と伸ばされたエルトリアの腕がレインの腰に回され、抱き着くような姿勢になった。


 「レイ君、……わ、わたくしにこうされることは、嫌じゃないですか?」


 レインはエルトリアの声が不安そうに震えていることに気が付いた。

 拒絶されることを怖がっているのかもしれない。

 そう思うと、とてもではないが「嫌だ」とは言えない。

 そもそも「嫌だ」とは微塵も思っていない。

 「嫌だ」と思う理由がない。


 だから、戸惑いつつも、レインはそのことを告げた。


 「い、嫌じゃないです」

 「そうですか、よかったです」


 エルトリアが安心したような声を出した。

 そのことにレインは、ほっ、とした。


 だが、


 「……ところで、レイ君?」


 なぜかエルトリアが少しだけ低い声を出したことで、レインは再び緊張した。


 「は、はい、なんでしょう」

 「この髪は……、誰の、ですか?」


 エルトリアの手には一本の髪の毛が摘み持たれていた。



 「赤い髪なら、オーファ……ですかね?」


 レインはエルトリアの摘み持っていた髪の毛を、オーファの髪の毛だと判断した。

 というか、この部屋に落ちている髪の毛など、自分かオーファかセシリアしかあり得ない。

 セシリアは、赤色というより茶色の髪をしている。

 だから、赤い髪ならオーファのはずだ。


 「オーファ……さん、ですか」


 エルトリアは『狼殺しの神童オーファ』のうわさを思い出した。


 曰く、10才にも満たない幼少期に、単独でオオカミの群れを撃破した戦闘の天才。

 その死体となったオオカミのことごとくが一撃で命を刈り取られており、発見者たちを戦慄させた。

 その事件は、もともと聖カムディア女学院で『神童』として知れていたオーファの名を、さらに王都中へと轟かせた。


 また、所持スキル8という恵まれた能力に驕ることなく研磨を続ける努力家としても知られている。

 すでに近隣諸国も含めて、同世代の人間・・・・・・では最強との呼び名も高い。

 さらには、学業の成績も優秀であり、その容姿も非常に整っていて、将来は相当の美女になるだろう、と。


 これらのうわさは、エルトリアが王城の侍女たちに聞いたうわさだ。


 ちなみに、レインも、オーファの名がときどき新聞に載っていることは知っている。

 しかし、オーファは人気者だなぁ、すごいなぁ、程度にしか思っていなかった。

 残念ながら、うわさや流行に疎いのだ。


 「……オーファさんとは、どのような関係なのですか?」


 エルトリアの質問。


 レインは、オーファとの関係を説明しようとした。

 しかし、いざ言葉にしようと思うと、なんて言えばいいのかわからなくなる。

 いつも強気でとても頼りになる友達。

 強くて優しい友達。

 頭も良くて人気者の友達。

 活発で可愛い友達。

 実はかなり心配性の友達。

 自分と一番仲が良い友達。


 「オーファは、僕の自慢の友達です」


 いろいろ考えたが、一言でまとめると、自慢の友達だった。

 レインはオーファのことを考えると、知らず知らずのうちに顔が綻んだ。


 その顔はエルトリアの見たことがある、レインのどの表情よりも幸せそうだった。


 そのことでエルトリアの胸がきゅっと苦しくなった。


 レインが幸せなら自分も嬉しいはずなのに。

 レインが笑顔なら自分も笑えるはずなのに。


 なのに、その幸せそうな笑顔を与えたのは自分じゃない。

 そう思うと、エルトリアは苦しかった。


 「……」

 「エルトリア様?」


 心配そうな表情のレイン。


 エルトリアは、レインにそんな表情をさせてしまったことが、また、苦しかった。

 なので、精一杯の笑顔でこう言った。


 「せっかくなので、レイ君の入れてくれたお紅茶をいただけますか?」

 「はい、よろこんで」


 レインが笑顔になってくれた。

 だから、これで良かったのだ。


 そう自分に言い聞かせるエルトリア。


 だが、諦めるつもりはない。

 レインを幸せにするのは自分なのだ。



 「それではスキル鑑定を始めましょうか、レイ君」


 2人で紅茶を楽しんだ後、エルトリアが本日の主題を切り出した。

 もちろんレインに否はない。


 「はい、よろしくお願いします」

 「それではレイ君、ベッドに仰向けに寝そべってください」

 「え? 寝そべるのですか?」


 てっきり座ったまま鑑定してもらうと思っていたのだが、違うのだろうか。

 レインにはスキル鑑定に関する知識があまりないので、よくわからなかった。


 「そうですよ?」

 「わ、わかりました」


 さも、当然じゃないですか、というようなエルトリアの態度に、レインは簡単に納得した。


 ちなみにだが、ベッドに寝そべる理由は、単にエルトリアがレインと触れ合いたいからだ。


 エルトリアは今日のために、本で読んで学んだことを思い出していた。

 それは、『男は女と触れ合うと喜ぶ』という内容の本だ。

 だが、『男』というより『男の子』といった年齢のレインを、その一般的な男性の例に当てはめていいのか、いまいち確証が持てない。

 しかし、もしかしたら、レインが自分との触れ合いで喜びを感じてくれるかもしれない。

 そう思うと、つい期待してしまう。


 そんなことを知る由もないレインは、大人しくベッドの上で横になった。


 「レイ君、もう一度聞きますが、わたくしに触れられて、嫌じゃありませんか?」

 「え? はい、もちろんです」


 レインはベッドに仰向けに寝そべったまま、不思議そうにそう答えた。

 エルトリアに触られるのは、恥ずかしいけど、嫌じゃない。

 嫌なわけがない。


 そんなレインの言葉に、エルトリアは思わず口元が緩んでしまいそうになったが、気合で堪えた。


 「では、またレイ君に触れますが、良いですか?」

 「はい」


 確認を終え、エルトリアはいそいそとレインの傍へと近付いた。

 そして、


 「レイ君……、失礼いたします、よいしょ」

 「えっ!?」


 レインの腹の上に馬乗りになった。

 もぞもぞと、座る場所を調整するように、お尻を動かす。


 「重くはないですか?」

 「い、いえ、全然重くはないですけど、でも」


 レインは、自分の下腹部の辺りでもぞもぞ動くエルトリアの動きに、不敬な感情が鎌首をもたげているのを感じた。

 子供であっても、オスの本能は持ち合わせているのだ。

 自分の腹上でふにふに動くエルトリアのお尻。

 その感触に、ついレインの男の子が反応してしまう。


 そして、エルトリアもそのことを察していた。

 レインが自分に反応してくれている。

 そして、その反応は、レインの男としての幸福感の表れかもしれない。

 そう思うと嬉しくて堪らない。


 だから、ちょっとだけ、調子に乗ってみたくなった。


 「レイ君、わたくし、ちょっと暑くなってきました」

 「そ、そうですね、僕も少し暑いです」


 お互いに真っ赤な顔で、じっとりと頬に汗が伝うのを感じる。

 暑くて堪らない。

 だから――。


 「ぬ、脱ぎましょうか?」

 「絶対にダメですっ!!!」


 制服のボタンに手をかけようとするするエルトリアを必死で止めるレイン。


 「大丈夫です! 今日はお気に入りの下着を選んできましたから!」

 「それは大丈夫とは言わないです!」


 この後、しばらく戯れた2人は、ようやくスキル鑑定を開始したのだった。

◆あとがき


ずっとエロトリアのターンッ!


ドローッ、ベッドでイチャイチャ!

ドローッ、着衣騎乗位!

ドローッ、腹上ストリップ!


もうやめてぇっ!

レイン君の精神力は0よ!


ネタが古いΣ( ̄□ ̄;!?




以前あとがきで、

PVが1万を超えました、わーいやったー


みたいなことを書いたのですが、

今度は10万を超えたみたいです。

ブクマやら評価やらをつけてくださった方々にも感謝感激です。

ありがたいことです(´人`*)なむなむ

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