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72.もぐらっ娘、最後は握手で。

ちょっと短めです。

前話で区切ったとこが中途半端でした。



「――退職ってなんで!? あ、まさか私に構いすぎて、仕事をクビに!?」


 露店商をはじめてかれこれ2週間。

 もうずっと無償で手伝ってもらってる。

 普通に考えれば、商会側から見ればなんの利益もない話だ。

 もしかしたらそれが原因で上司に叱られて、ぺティーは仕事を辞めることになってしまったのかも。


「ご、ごごごごめんぺティー! 私も商会に謝りにいくよ! クビを撤回してもらおう!!」

「あ、いえ、エミカさんのせいというわけでは」

「へっ! ち、違うの……?」

「商会を辞めることは前々から決めてたことなので」

「でも、なんで? あ、もしかして結婚するとか?」


 あっさりした薄顔で大人しい印象だけど、ぺティーはかなりの美人さんだと思う。いい寄ってくる男の人も多そうなのでありえそうな話だった。


「お、お付き合いしてる男性もいませんので……。その、私、以前仕事で大きな失敗をしてしまって。いうならば、それが原因でして……」


 それは1ヶ月以上前のこと。

 いつものように業務で商談を受けたぺティーは、とある商人から契約を取りつけたという。


「だけど私の助言のせいで、その方に大損させることになってしまって……」


 売買契約を結んだのはアリスバレー近郊に嵐がくる直前のことで、もし数日あとに商談が成立すれば、作物の価格はぐんっと跳ね上がってたそうだ。


「えっ? それってぺティーが悪いの? 天気がいつ大荒れになるなんて、誰にもわからないじゃん……」


 それに、最終的に契約を結ぶかどうかは商人側の判断のはず。まさか商会側が無理やり契約させたわけじゃないだろうし。


「もちろん、お客様に契約を強制させるような行為は一切してません……。しかし、今売り切ったほうが得だと、たしかにそう発言してしまったのも事実なので……」


 そこまでなら普通、「くやしい損した!」で終わる程度の話だと思う。

 だけど、相手の商人は底意地の悪い男で、作物の価格が上がりはじめると、ひどく横柄な態度で難癖をつけにやってきた。

 ちょっとした騒ぎになり、代わって対応した上司も商会側に落ち度がないことをきちんと説明したそうだ。

 それでも、男の怨み言は次の日も、その次の日も続いた。

 挙句、大勢の同業の商人たちに、男はあることないことぺティーの噂を吹聴して回ったという。


「あっ――」


 そこで、ふと思い出す。


 そうか。

 何度か商会の受付にいったけど、いつもぺティーの窓口に人がいなかった理由は、それか。


「ぺティー、今そいつどこにいるの?」

「どこと訊かれましても……。あ、あの、居場所を知って何をする気ですか……?」

「決まってるでしょ! そんな輩は私が取っちめるよ、この爪で!!」


 許すまじ。

 絶対にモグラパンチで〝サンドバッグの刑〟に処してやる。



 ――シュ、シュッシュッ!(超高速シャドー)



「や、やめてください! そんなことしたら捕まっちゃいます! そ、それに、もう終わったことなので――」

「終わったこと!? 腹いせに悪い噂を広められたせいで、ぺティーのとこに商人さんが相談しにこなくなったんでしょ!? 全然終わってないじゃん!!」

「いえ、それも明日で終わります。あと、誰もこなかったわけじゃありませんよ。私の前には、エミカさんがきてくれたじゃないですか」

「え? いや、それとこれは……」

「上司も気の済むまで自由にやりなさいといってくれましたし、最後にエミカさんの仕事が落ち着くまでは続けようと決めていたんです」

「私を最後に辞める必要はないと思うけど……ぺティーだって、ほんとはまだ続けたいんでしょ?」

「エミカさんみたいな人とも出会えますし、この仕事は好きです。ただ、さすがにこれ以上は、商会にも迷惑をかけられませんので」

「ぺティー……」


 彼女のすっきりした顔を見れば、決意が固いことは明らかだった。

 それに、もしここで引き止めに成功しても、職場の環境が改善されるわけじゃない。根本的な解決にはなんにもならないだろう。残念だけど、もう私からいえることは一つだった。


「親身になって尽くしてくれて、ありがとう……。そのバカ商人がなんと噂しようが、ぺティーは私にとって最高の担当さんだったよ!」

「いえ、むしろお礼をいわなければならないのは私のほうです。最後に受けた案件で、まさかあんな大口の売買契約を結べるとは夢にも思いませんでした」

「えっと、明日はきてくれるの?」

「……ごめんなさい。明日は同僚に私の代理を頼みましたので、その者がお手伝いをさせていただきます」

「そっか。んじゃ、一緒に仕事するのもこれで最後か……」

「はい……。エミカさん、短いあいだでしたが本当にありがとうございました」


 最後は笑顔のぺティーと握手して別れた。

 せっかく知り合えたのに、ほんと残念。

 ま、そこまで大きな街ではないし、きっとまたどこかで会えるよね。


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