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63.もぐらっ娘、家を改築する。


 アリスバレーに帰ってきて3日が過ぎた。そのあいだアラクネ会長に王都でのことを報告したり、家の掃除や修繕をしたり、ささやかながらもパメラの歓迎会を開いたりした。

 普段の日常が戻ってきた感じ。

 なんか心が安らぐ。


 でも、1ヶ月も帰ってないとやることは意外と溜まってるもんで、未だに初日にやろうと計画してたことに取りかかれてなかった。

 いい加減、狭い我が家で4人での生活はきつい。昨日の夜なんか寝ぼけてパメラを抱き枕にしてたら、めっちゃ怒られたし。

 ということで本日、私は家の改築に取りかかることにした。


 ちなみに、シホルとリリは授業のある日なので朝から教会に出かけてる。帰ってくるまでに作業を終えて2人をびっくりさせるのも計画のうちだ。


「んじゃ、この辺りに階段作るからお願いね」

「ああ。いでよ、我が大剣(マテリアライズ)――」


 今さらだけど木材はモグラの爪では取りこめない。なので作業をはじめる前に床板を取り除く必要があった。

 パメラが大剣を豪快に突き刺し、寝室の床にザクザクと切りこみを入れていく。もっとバキバキに折れるかと思ったら切れ味がヤバい。これならあとで断面をやすりがけする必要もなさそうだね。


 ――パカンッ。


 やがて部屋の隅の床が真四角に刳り貫かれると、床下からは剥き出しの地面が現れた。

 そのまま地面に下りてモグラクローで土を掘り、気持ち横幅広めの階段を作っていく。そして3フィーメルほど掘り下げたところで、家の真下に当たる場所に大きな穴を開けた。

 地図スコープのライトをつけて確認。

 居間の2倍ほどの広さは確保できたっぽい。

 我が家に立派な地下室ができた瞬間だった。


「相変わらず便利な能力だな」

「えへへ」

「で、ここを新しい寝室にするのか?」

「んー。それでもいいんだけど、せっかくだしみんなの部屋を作っちゃおうかと。パメラも自室ほしいでしょ?」

「どっちかっつーと、オレは自室よりも訓練場がほしい」

「訓練場?」

「ああ、身体が鈍るのは我慢ならないからな。まー、居候の身で贅沢を押し通すつもりはねーけどよ」

「えっと、ようは大剣を振れる部屋があればいいんだよね? おっけー、ちょっと考えてみる」

「おう、任せた。んじゃ、オレは上に戻って階段のとこに柵でも作っておくわ。リリ嬢が落ちたりしたら危ねーからな」

「ありがと――って、パメラって生産系スキルまで身につけてるの?」

「まぁな。だけど、嗜み程度のスキルだ。あんま出来は期待するなよ」

「はへー」


 階段を上っていくパメラの背中を感心しながら見送る。

 剣術に魔術に大工。色々できるってかっこいいね。私も何か新しいスキル、身につけようかな。職の選択肢も広がるかもしれないし。

 でも、覚えるとしても、一体なんのスキルを習得すれば?


「うーん。ま、それは追い追い考えよう」


 得意の問題を先送りするスキルを発動させて、作業を再開する。

 とりあえず暗いので、王都の地下道で使った角灯の余りを壁にポツポツと仮置きしていく。全体が照らし出されると、とても広く感じた。きっと1階の居間や寝室と比べて天井が高いせいだ。


「さて、どうしたもんかな……」


 しばらく考えた末、この場所は地下室用の居間にして周囲にみんなの部屋を作ることに決めた。


「試しに私の部屋からだね」


 階段のある東側の壁にモグラクロー(弱)2発を上下に放ち、入口用に縦長の穴を開ける。扉をどうするかは今後の課題として残るけど、とりあえずその先をほどよく広げれば完成だった。

 大体、床の縦と横で各4フィーメルほどのスペースを確保。

 さらに同じ広さの部屋を南側に2つ、西側に1つ作った。


「西側はパメラに使ってもらって、南側はシホルとリリでいいかな? あ、でも、リリに一人部屋はまだちょっと早いか……」


 シホルには悪いけど、やっぱ南側の部屋は壁を取り除いて横長の一部屋に作り変えた。いつでもモグラリリースで二部屋に区切れるし、今はこれで。


 部屋割りが決まったところで、モグラクリエイトで加工した岩石を部品ごとに繋ぎ合わせて、寝台や机や椅子なんかを作成。各部屋に設置してみる。


「おっ、いいね!」


 どうしてもシンプルな物しか作れないのが改善点だけど、家具を置くと一気に空間が部屋っぽくなった。


「んー。でも、やっぱ全体的にまだ重苦しい感じがなぁ……」


 窓がない上、木の温もりが感じられないってのがあるんだと思う。

 なので天井と壁に、白っぽい岩石でクリエイトしたタイルをぱぱっと固定してみた。

 暗い土の赤褐色から、清潔で落ち着いた感じの乳白色へ。これなら長時間いても暗い気持ちにならないはずだ。

 他にも居間に本棚や円卓、長椅子なんかも設置。

 大まかな地下1階の作業は大体それで完了だった。


「必要なものがあれば追加すればいいし、今はこれでいいよね。よし、次いってみよう!」


 続いて私は北東側の隅に、さらに地下へと続く階段を掘った。

 照明を設置しながら、今度は5フィーメルほど下りたところで地下1階の真下に大部屋を作る。床面としては地下1階の部屋を全部合わせたぐらいの広さになった。専門的なことはわからないけど、一人用の訓練場ならこのぐらいのスペースがあれば十分だろう。

 でも、やっぱ暗い感じだったので、今度は青みがかった岩石で作ったタイルを全体に張ってみた。


「――お、柵だ」


 作業を終えて1階の寝室(元)に戻ってくると、トンカチを持ったパメラが階段の回りに設置した柵をつかんで、何やらガタガタと前後に揺らしてた。どうやら強度を測ってるらしい。


「もう完成したの?」

「いや、ちょっとまだ弱いな。もっと強めに固定したい。てか、そっちこそもう終わったのか?」

「うん、大体ね。あとは寝台にマットレスを乗っけたりするぐらいかな。でも、家にある分だと数が足りないから買いにいかないと」

「ならオレもいくわ。強度を上げるにはちょい木材が足りないからな」


 そのあとパメラと色々店を回って必要な物や、そんなに必要じゃない物も購入。家に戻ってきて4台のベッドを完成させたあと、お花屋さんで買った観葉植物やドライフラワー、雑貨屋さんで買った小物などで部屋を彩る。

 照明の位置などにもこだわり、最後には例の宝石でシャンデリアっぽい物もこしらえて天井に設置してみた。


「我ながら中々の出来だと思うんだけど、どうかな!?」

「へー、やるじゃん」


 柵を完成させたパメラにも内装を見てもらったけど評価は上々。あんな立派なお屋敷で生まれ育った人に褒められたわけだし、これは素直に自信を持ってよさそうだった。


「てか、マジで訓練場も作ってくれたのか。これで鈍らずに済むわ、あんがとな」

「えへへ、どういたしまして♪」


 実際の土地よりも地下の使用面積がかなり大きくなっちゃったけど、街のルールとして取り決めはないみたいだし、問題はないはず。ま、もし万一何か問題があればそれはその時に考えればいいしね。


「「ただいまー」」


 やがて夕闇が迫る頃、シホルとリリが教会から帰ってきた。


「わぁ~、ひっろーい!」

「こ、これっ……エミ姉とパメラさんが作ったの?」

「オレが作ったのは1階の柵だけだ。地下は全部、お前らのねーちゃんの仕事だよ」

「おねーちゃん、すっごーい!」

「エミ姉って、大工さんになったの……?」

「ん? 大工ではないと思うよ」


 だって、木材使ってないし。


「それよりほら、こっちこっち。今日からここが2人の部屋だから、自由に使ってね」

「わああぁぁー、おっきいベッドーー!!」

「こ、ここが私たちの部屋……? ほ、ほんとに……?」


 地下の自室を見た妹たちは大いに喜んだり、驚いたりしてた。

 ふっふっふ、こっちの計画も大成功。

 よかったよかった。


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