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151.もぐらっ娘、隠し通路を掘る。


 モグレムによるセキュリティーシステムの運用がはじまって数日。特に目立った混乱も不具合も起こらず、日々は平穏に流れた。


「ただいまー♪」


 強いて変化を挙げるとするなら、家の入口にもモグレムを配置したことで玄関を施錠しなくなったことぐらい。外出時も帰宅時もモグレムたちが門と扉を開けてくれるから、ちょっと偉い人の気分を味わえる。

 メイドさんどころか専属のドアマンがいるなんて、ほんと我が家も裕福(リッチ)になったもんだよ。


「さてと、今日も今日とて穴を掘りますか」


 現状、もはや安全性に関しては一抹の不安もないけど、やりすぎてよくないなんてことはない。

 万一の万一に備えて、私はサリエルが寝泊りしてる地下1階のゲストルームに向かった。


「エミカー、何してるの~?」

「隠し通路の場所を考えてる。んー、やっぱ作るとしたら東側?」


 ズバリ、やることは以前パメラとも話した緊急脱出路の設置。

 モグラの爪の効果で地下に関しては火攻めの心配はないけど、環境的に水攻めされたら一巻の終わりだからね。それに露天風呂の底をぶち抜いたりしちゃったりとか突発事故なんかも怖い。

 聖杯の儀の時みたく入口が陥落した時点で袋のネズミにならないためにも、やっぱ打てる対策は予め講じておかないとだった。


「――モグラショートカット!」


 さっそく南東側の壁を数フィーメルほど掘削。あくまで非常口なのでそれほど横幅は広げずに。人が2人並んで通れるほどの幅で掘り進めていく。

 暗黒土竜の魔眼で位置を確認しながら微調整。ぴったし〝経度〟を合わせたところで一気に真北へとまっすぐ掘り抜いた。



 ボコッ――!



「――よし、到着っと」


 そうやって繋げた先はモグラ屋さんの地下倉庫(バックヤード)

 非常口にもなる上、急用がある時はお店への近道として使えて一石二鳥だった。


「みんなおはよー」

「あ、ご主人様! おはようございます」

「倉庫の中にいらっしゃったんですか。気づかず申しわけありません」

「あれ? でも私、朝からずっとここで準備してたよ……?」


 ついでにやり残してた所用を済ませるため地下倉庫(バックヤード)から出ると、従業員スペースでスーザフさんホルームンさんユーフォニアさんの3人組と出くわした。どうやら開店前の作業をしてるみたいだ。

 彼女たちは突然背後から現れた私にちょっとびっくりしてたけど、事情を説明すると、あーそういうことかと納得した表情を浮かべた。


「そうだスーザフさん、こないだ話した木材製品の件なんだけどまた相談したいことがあって。今、大丈夫かな?」

「はい、もちろんですとも。ではあちらの席で」


 そのあと店内で仕事をいくつか済ませてから、再び作業開始。

 当たり前だけど、隠し通路なのでその存在を隠す必要がある。非常口と平行に倉庫の床に小さな凹凸をつけてから、その上にかっちり嵌まる棚をクリエイトして乗っける。

 さらに裏面には取っ手をつけて、通路側からでも横にスライドしやすいようにしておいた。


「んー、ちょっと重いかな……?」


 会長室にあった隠し階段を参考にしたけど、腕力のない人だと開けづらいかも。あとで床の凹凸部分に油でも塗っておくとしよう。

 続いて通路内に照明を設置しつつ、倉庫側出口近くの空間を広げてそこに検問所を作った。脱出口側から侵入されたら元も子もないし、必要な措置だ。そして監視役はもちろんモグレムにお任せ。

 万一お店のほうで何か起こった場合、それも含めて対応してもらうことになる。そう考えるとけっこう重要な役割だ。なので検問所は戦力高めに、赤モグオンリーの精鋭7体を配置した。


「よっし、まずは1つ目完了!」


 そのまま家のゲストルームに戻って倉庫側と同じスライド式の棚を設置。まだ油を塗ったり、この出口の存在を家のみんなに知らせる必要があるけど、とりあえず【家⇔店】間の隠し通路は完成だった。


「んじゃ、さくさくと次!」


 続いては地下2階に下りて、一番奥にあるメイドさんたち専用の談話室まで移動。

 地下1階のゲストルームと同じく南東側の壁に穴を開けて、私は隠し通路を掘った。



 ――ボコッ!



 2つ目は教会にあるキノコの栽培所に繋げた。

 モグラショートカットの影響だと思う。想定以上に浅い位置にある階段の踊り場に出ちゃったけど、地上に近いほうが何かと都合もいいので良しとする。

 そのまま店側の隠し通路と同じく検問所を作り、モグレムたちを配置。

 ぱぱっとさらに手際よく、私は非常口を完成させた。


「あ、一応ジャスパーとヘンリーにはいっといたほうがいいかな?」


 キノコを収穫する時、非常口を隠してる棚を怪しがって2人が開けるかもしれない。通路に入ってもモグレムたちに止められるだろうけど、下手に抵抗でもしようものならきっとロープでぐるぐる巻き。そのまま連行確定だ。


「でも、なんかちょっと面白そう。やっぱ黙っておこうかな、フフ……」


 なんて一瞬、小悪魔のしっぽが生えかけたけど、ウソウソ。心優しい私はそんなことしない。

 しっかり報告するため、地上に出る。


「あ、しもふりピンクさん!」

「ぴぐぅ~」


 栽培所の入口に隣接してある、小さな家の前でしもふりピンクさんとばったり遭遇。

 熱い抱擁後、そのまま抱っこ。私はしもふりピンクさんと一緒にモグラ農場へ向かった。


「しもふりピンクさん、あの2人はちゃんと働いてますかねー?」

「ぴぐぅ~」

「そうですかそうですか。それはいけませんねー」

「ぴぐぅ~」


 ミニゴブリンたちと違って、しもふりピンクさんの言葉はよくわからない。なので適当に会話を合わせて親交を深めといた。


「みんな、ジャスパーとヘンリー知らない?」

「まだ戻ってきてないよ」

「というか、さっき出たばっか」

「だね。ちょうど店のほうに着いた頃だと思う」

「あう……」


 モグラ農場で農具を片づけてた子たちに訊くも不在とのこと。しかたない。なら隠し通路を経由してまたお店に戻ろうかな?


「あら、エミカ」

「あ、先生」


 なんて思ってきた道を戻ってると、途中で重そうな小麦袋を抱えたテレジア先生とばったり。

 どうやら食糧庫に荷物を運んでる途中みたい。

 手伝いたいけど、私はしもふりピンクさんを抱っこするという重大な使命の真っ最中だ。

 なので代役としてその場で白モグを召喚した。


「先生の荷物を運んであげて」

「これは……太ったエミカ?」

「違うよ、ゴーレムだよ先生。いろいろ命令を聞いてくれるの」

「あらあら、これも土の魔術?」

「え? あー、まあそんなところかな……」

「便利ね。たくさんいたら毎日の収穫もあっという間に終わりそうだわ」

「……ん、教会にたくさん? あ、そっか!」


 モグラ農場の警備もモグレムに任せればいいじゃん。

 不意にそれに気づき、テレジア先生にその場で話を持ちかける。すぐに二つ返事でおっけーをもらえたので、その場で赤モグ1体&白モグ20体を召喚。教会の防衛とともに、みんなが困ってる時は力を貸すよう命じておいた。

 これで警備費も浮くし、セキュリティーも向上。

 良いこと尽くめだ。


「お試しで1チーム置いてくね。ま、これで十分だと思うけど」

「ところでエミカ、この太ったエミカたちは何を食べるの? お肉? お魚?」

「いや、だからゴーレムだって先生……」


 再度テレジア先生にモグレムたちのことをしっかり説明して、帰宅。

 何か大事なことを忘れてるような気もしたけど、その日は最後に非常口の凹凸にヒマワリ油を塗って作業完了の達成感に浸った。



「おい、コラ! 放しやがれゴーレムども!!」

「僕らが何をしたっていうんです!?」

「あっ……」



 翌朝、ジャスパーとヘンリーが赤モグたちに連行されてきたのは、また別の話。



挿絵(By みてみん)




挿絵(By みてみん)




挿絵(By みてみん)




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