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幕間 ~終焉の解放者11~


 氷壁ダンジョンの最終階層からシュテンデルートに転送したロコとモコは、慣れない街に多少迷いつつもアレクベルからの情報をもとにダリアの潜伏先へ辿り着いた。


「どうやらここみたいね。でも、なんであの女こんな豪邸に……」

「謎」


 広い庭に噴水まである邸宅。見る限り大貴族の家といった外観だ。

 念のため正面からではなく、双子は裏から窓を割って侵入した。


「何よ、これ……」

「……」


 そして、ティーカップ片手に広間で寛ぐダリアを見つけるまで、双子は邸宅内で多くの惨殺体を目にすることになった。

 たとえ女でも子供でも容赦なし。

 遺体はすべて平等に、そして残虐に切り刻まれていた。


「ちょっとあんた、どういうつもり!?」


 その姿を発見すると同時、ロコはダリアに詰め寄った。背伸びしながらテーブルを力一杯、両手でバンと叩く。ティーカップがカチカチと揺れる中、非難された死神はわざとらしくその場で小首を傾げた。


「いきなりなんの話ぃ~?」

「この家の惨状の話よ! この殺人狂!!」

「えー、殺しを稼業にしてる殺し屋が私を非難する~? あなただって今まで数え切れないほどたくさん殺してきたくせにー」

「私は意味のない殺しはしないわ! 殺し屋には殺し屋の美学があるの! あんたのはただの殺戮よ! 一緒にしないで!!」

「あはは。すぐ怒って子供だな~。少しは寡黙でかわいい弟君を見習ったら~?」

「うるさい!」

「というか、この家のことなんかよりさっさと任務をこなさないとまたジーアに怒られるんじゃない? ただでさえ誰かさんのせいで予定が遅れてるわけだしー」

「ぐっ……! そ、そんなのわかってるわよ!」


 完全に痛いところを突かれ、その場は大人しく引き下がるしかなかった。


「モコ、移動の準備!!」

「んっ……」


 そのまま片割れを連れ、ロコは広間の床に白い魔法陣を描くよう指示する。すでに数週間ほど前に準備は終え、先方の根城にも侵入してマーキング済みだ。作戦はいつでも実行可能だった。


「ほら、いつまで寛いでんのよ。さっさと行くわよ」

「はいはい~♪」


 モコの〝まる描いてポン(マーク&テレポーター)!〟で転送すると、三人は木箱と本棚で埋め尽くされた物置のような場所に出た。部屋の奥には窓があり、そこから覗けば山岳に囲まれたシュテンデルートの街並みが一望できた。


「おー、いい眺め~!」

「もう敵のド真ん中なんだから静かにしなさいよ。緊張感ないわね……」


 そこはこの辺境一帯で最も高い建物――シュテンデルート城の内部だった。


「ここってお城のどのへん?」

「執務室のすぐ近くよ。ターゲットはこの時間いつもそこにいるから」


 すでに相手の行動も調査済みだった。そのまま三人で堂々と部屋を出て、廊下の角を曲がる。


「ん? おい、なんだお前た――」


 目的地である執務室の前には鎧を着た二人の衛兵が立っていたが、ロコがナイフを喉元に転送させて片方を黙らせると、もう一方もダリアが瞬く間に大鎌で首を刈り取り無力化した。


「ちょっと、あんま派手に殺るなって言われてたでしょ……。どうするのよ。これじゃ掃除も大変じゃない……」

「まーまー、あとの心配はあとで、今は今やるべきことを優先――っというわけで、おっ邪魔しまーす♪」


 執務室の扉を蹴り破るように開けると、ダリアは一切の躊躇なくズカズカと上がり込んだ。


「な、なんだ貴様らは!? おい、衛兵たち何をしておる!!」

「あはは。助けを呼んでも無駄むだ~」


 扉を開ける直前に拾い上げた衛兵の首をブラブラと翳しながらうろたえるターゲットに近付くと、ダリアはそこで自分の目隠しを外した。


「えっと、シュテンヴェーデル辺境伯様だっけー?」

「く、来るな!!」

「別にあなたに怨みはないんだけど命令なんでここで死んでもらうね~」

「ひっ!?」


 そこで露になったダリアの闇色の双眸を見て、シュテンヴェーデル辺境伯は恐怖に魅入られた。


「でも、綺麗に殺すよう言われてるからさー」


 次の瞬間、死神は飛びかかると辺境伯の身体を力尽くで押し倒し、その口元を手で塞いだ。

 深淵のような瞳が真の恐怖を呼び起こす。


「この目で殺してあげるね~♪」

「ん”っ! ん”ん”ンンッ――!?」


 シュテンヴェーデル辺境伯が至高の恐怖に呑み込まれているあいだ、ロコとモコは衛兵の死体を室内まで運び込んで扉を閉めると、執務室内の床に白と黒二つの魔法陣を描き淡々と次の準備を完了させた。


「それじゃ、私たちはパープルたちを呼んでくるから。それまでにそいつちゃんと殺しておいてよ」

「はいはい~♪」

「ン”ッ……! ン”ンンッ――!?」


 結局、〝双眸恐怖症(この世で最も恐ろしい)〟を連続で四回行使したところで辺境伯の心臓は止まった。

 常人であれば一度の使用で卒倒、嘔吐や失禁などの症状と共に精神が崩壊することも珍しくない。それを考えれば平均以上には耐えたほうだろう。


「あー、楽しかった~」


 ダリアが仕事を終えて再び目隠しをしたところで、双子が小国(シュネー)にいたパープルとジーアとユウジの三人を連れて戻ってきた。


「お疲れ様。あとは私がゾンビにして――って、一人頭がないじゃない……」


 衛兵の死体を長杖の先で突きながらジッと睨んでくるジーアからサッと視線を逸らすと、ダリアはそのまま知らない振りを徹した。


「……ま、いいわ。パープル、こっちはいらないから廃棄して」

「わかった」


 次の瞬間、遺体の下側に紫色の大きな穴が現れたかと思えば、首のない死体はゆっくりと沈み込むように呑まれていく。やがて床に残っていた血痕もすべて吸い取ると、何もかもが嘘だったように穴も消失した。


「これでいいか?」

「ええ、それじゃ領主のほうから手早くゾンビにしましょう。ユウジ、あなたも手伝いなさい」

「うげ、マジか……」


 〝従属する死と腐敗マリオネットゾンビーズ〟の発動条件を満たすため、死体の損壊をはじめたジーアたちを遠巻きに眺めつつ、役割を終えたダリアはそこで双子の耳元で囁いた。


「ねー、先にアジトに帰らない?」

「は? 何言ってんのよ。部屋の前だって血だらけのままだし、辺境伯を傀儡にしたら綺麗に証拠隠滅しないとでしょ」

「そんなのパープルがやれば一瞬で終わるしー」

「それはそうだけど、そういうわけにもいかないわよ……」

「ちぇ~。あ、なら弟君はー? 暇でしょ、私と帰らない?」

「どうでもいい」

「ちょっとあんた何モコに話しかけてんのよ!? 殺すわよ!!」

「うわ、聞いた弟君? 怖いお姉さんだね~」

「そうでもない」


 アジトに早く戻るため双子を言い包めようとするも失敗。

 しかし、そのあとアレクベルからジーアに連絡が入ったことで運良くダリアが望む展開になった。


「――え? どうしてそんな状況になってるのよ? いや、そもそもなんで戦ってるの? 説得して連れてきたんじゃないの? うん、うん……はぁ? あー、もういいわ……。とにかく今、誰かを戻らせるから……」

「なんかあったのか?」

「どうもアジトのほうで勧誘した新人と戦闘になってるみたい」

「は? なんでだよ?」

「そんなの私が知りたいわよ……」


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