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143.氷壁ダンジョン

 久々のエミカ視点です。



「――というわけで、それが昨日あったことよ」

「そんな……なら、パメラはもう……」


 パメラを襲った双子のドワーフ。

 そして、メンバー全員が天賦技能(ギフト)持ちの謎の集団。

 私が会いにいくと、会長室にいたアラクネ会長は包み隠さず詳細を語ってくれた。


「さっき見せた地下室の魔法陣で移動したのなら、もうこの街どころか王国内にもいないでしょうね」

「……その双子は、パメラをどこへ連れていったんですか?」

「訊いてどうするの? まさかモグラちゃん、あの子を助けにいくつもり?」

「もちろんですよ! パメラは大事な妹というか、もうウチの大事な家族なんです! そんな怪しい人たちの仲間になんてさせられません!!」

「あの子は連中の仲間になるために双子を逃がしたわけじゃないと思うわよ」

「え?」

「自分から降りかかる火の粉を払いにいったのよ。今頃もう決着もついてるかもしれないわね」

「だったらなおさら放っておけないじゃないですか!? 会長、パメラが連れていかれた場所を早く教えてください!!」

「モグラちゃん、熱くなりすぎよ。少しはあの子が選択した意味を考えなさい。あの子はあなたたちに迷惑をかけたくない一心で連中と1人戦うことを決めた。モグラちゃんが今やろうとしていることはその覚悟の否定よ。それに万一助けにいったモグラちゃんが連中に捕まった場合、あの子はさらに苦境に追いこまれることになる」

「だとしてもジッとなんてしてられないんです! もういいです、アラクネ会長には頼りませんから! 失礼します!!」

「……あーもう、待ちなさい。モグラちゃんってば頑固なんだから……わかったわ。連れていかれた場所かどうかまでは知らないけど、連中のアジトを教えてあげる」

「ほんとですか!?」

「ええ、ただし1つ条件があるわ」


 必ず正体を隠した上で救出に向かうこと。

 それがアラクネ会長が出した条件だった。


「連中がモグラちゃんのほうに興味を示したらそれこそ大変なことになるでしょ」

「変装しろってことですね……わかりました! それで、そのアジトってどこなんですか!?」

小国(シュネー)という国にある全階層が雪と氷で覆われたダンジョンよ。人類が20年前に攻略した迷宮で、氷壁ダンジョンと呼ばれているわ。双子の姉の話によればそこの最終階層が根城だそうよ」


 ダンジョンの内部。

 不幸中の幸いだった。

 それならまだ確定ではないけど〝望み〟はある。


「ありがとうございます! 私、さっそくパメラを助けにいってきます!!」

「不可能よ――そういいたいところだけど、モグラちゃんのことだから当てがあるんでしょうね。方法を訊くなんて野暮なことはしないわ。でも、くれぐれも無茶はしないようにね」

「はい!」


 振り返らず返事をして会長室を出ると、私は全速力で我が家に走った。

 帰宅後、大広間に下りてそのまま一番南の個室へと向かう。

 勢いよく扉を開けると、中では天獄の一件以来なぜかずっと我が家に棲みついてるサリエルがベッドの上ですやすやと寝息を立ててた。


「サリエル起きて!」

「……ん、んんっ、んにゃ……あ、エミカぁ……♥ どうしたのぉ~?」

「ごめん、いきなりだけどお願いがあるんだ!!」


 サリエルを揺すって無理やり起こすと、私はパメラがトラブルに巻きこまれてしまったことと今すぐ助けが必要なことを説明した。


「わ~、それは大変だー」

「だから私を連中のアジトまで運んでほしいの! 氷壁ダンジョンっていうね、氷と雪がずっと続く迷宮らしいんだけど……」

「あー、前に雪をいっぱい食べたとこだぁ~」

「わかるの!?」

「うん。そこなら天獄経由でいけばすぐだよー」

「ほんとに!?」

「うんー♪」

「わかった! なら私、今すぐ準備するから!!」


 変装として自室でモグラきぐるみーを装着し、モンスター的なシルエットになった私はそのままサリエルと一緒にアリスバレー・ダンジョンに急行した。


「げっ、なんだよあれ!」

「うわっ!?」

「モンスターか!?」

「いや、違うぞ!」

「あ、あれは……モグラの精霊〝モグエル〟!?」


 ダンジョンに突入するまで街の人たちが漏れなくこちらを二度見して指を差してきたけど、今は緊急事態。そんなことはいちいち気に留めてられなかった。


「それじゃ、一旦天獄に移動するねー」

「おっけー!」

「目的の煙突まで魔法で飛ぶから、こないだみたいに振り落とされないように気をつけてねー」

「……お、おっけー!!」


 直後、もう何度目かも忘れた例の不気味な異音とともにダンジョン内部から()()()()へと転送。そのまま天獄の大空へと私たちは投げ出された。



「――天使乱舞(ロンド・ロンド)



 浮遊感を覚えた瞬間、急激な横移動。

 身長が何倍にも引き伸ばされるような感覚を味わいながら、私はサリエルの身体に死にもの狂いでしがみつく。


「エミカ、あれが目的の煙突だよ~」

「あばばばばっ!?」


 神々しい光の渦から突き出た煙突。出てきたアリスバレー・ダンジョンの物と同じで形状も大きさも一緒だ。

 私がそれを確認したと同時、サリエルはさらに加速して煙突に突入。

 真っ暗になったと思った次の瞬間だった。

 視界はホワイトアウト。世界は突如、白一色に染まった。


「うぎゃっ!?」


 わずかな落下の感覚のあと、私はやわらかい雪の上に顔から突っこんだ。



 ――ボフッ!!



「ぶはぁっ……!」


 起き上がると、周囲はすべて雪原だった。

 雪原しかないため、空と大地との区別もつかない。

 奇妙なことに冒険者の姿どころかモンスターの影すらなく、辺りは異様な静寂に包まれてた。


「……こ、ここが氷壁ダンジョンなの?」

「うん。その一番上の拡張スペースだよー」

「会長はここの最終階層が連中の根城だっていってた!」

「なら移動するー?」

「お願い! あ、あとサリエルは王都の時みたくまた透明になっておいて!!」

「はぁーい♪ それじゃ、いくよー!」



 ――ドウ”ゥ~~~ン。



 再び不気味な転送音が響く中、私は天使とともに一気に最終階層まで飛んだ。


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