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140.救出

 ( ˙-˙ )クリスマスだそうです。

 今年も『巨人の星』の一人クリスマス回を見て悟りを開いた修行僧の如く心を落ち着かせたいと思います。

 それでは……ahaha! MerryChristmas!!(機関銃をぶっ放しながら)


 あ、あといつもよりちょっぴり短めです。



 飛び去ったドラゴンが夕焼け空にすっと消えていく。

 その様子を慎重に見送ったあとで、私は潜んでた木々の陰から出た。


「……ほっ、よかった。あきらめてくれたみたいだね」


 少し前のこと。

 空を泳ぐ翼竜の姿を目撃した私はすぐに王子様とリリを連れて逃げ出した。そのまま脱兎のごとく森の中へ。

 だいぶ距離もあったし、あっちはこっちにも気づいてない様子だったけど、一般的にドラゴンなんていわれるものを見たのは生まれて初めてで、私は半ばパニックに陥ってた。

 そのせいで地面の穴を塞ぎもせず逃走しちゃったのはよく考えれば相当まずいポカだ。

 でも、結果的にはこうして襲撃者たちが帰っていく様子をこの目で確認できたわけだから、逆によかったのかもしれない。


「てか、あの竜と竜に乗ってた人も襲撃者の仲間だったなんて……あの人たち、一体何者なんだろ……」


 ミハエル王子を誘拐しようとしてたってことは身代金が目的? いや、お金がほしいだけならわざわざ一国の王子様を狙ったりしないか。いくらなんでもリスクが高すぎるもんね。


「ま、私が考えてもしかたないか。今はそれよりも……おーい、2人とも~! もう大丈夫だからこっちにおいでー!」


 森の入口から森の奥に向かって呼びかけると、遠くの木々の根元に隠れてたリリと王子様が小動物みたいな仕草でひょいっと顔を出した。そのまま2人は駆け出してくる。


「おねーちゃん、おっきなとりさんは~?」

「さっきの悪い人たちと一緒にどっか飛んでっちゃった。てか、鳥さんじゃなくて竜ね。乗ってた人がいたから魔物飼い(モンスター・テイム)で飼いならされたやつなんだとは思うけど」

「ドラゴンをあやつってた人も、ぼくをさらおうとしてた人のなかまだったんですね」

「うん、そうみたい。あ、いや……そうみたいです。でも、とりあえず連中はあきらめて去っていったんで安心してくださいね。王子様」

「はい。だけど、エミカさん。これからどうしますか?」

「ええっと……」


 うーん。

 暗黒土竜の魔眼があるから迷う心配はないけど、これから辺りは真っ暗になる。近くに害獣やら野生化したモンスターなんかがいないとは限らないし、やっぱここは掘った穴からまた鍾乳洞に戻って出口を目指すのが一番安全かな?

 それに王子様の手前あんま考えないようにしてたけど、襲撃者たちが地上に出てきたってことは30名近い護衛全員がやられてしまったってことでもある。正直、かなり心配だった。


「わかりました。エミカさんにしたがいます」


 再度、夜の帳が下りはじめてる空を慎重に確認したあとで私たちはさっき出てきた穴の中に戻った。

 今度は出口をちゃんと塞いでから地下へ向かう。

 途中、モグラシュートで使った宝石の回収やモグラアッパーの後始末をぱぱっと済ませつつ、襲撃された地点まで急いで戻った。


「ひどい……」


 現場に到着すると、そこは私たちが逃げ出す前よりも遥かに凄惨な状況と化してた。

 あっちこっちで崩れ落ちた天井や壁の残骸。多くの王立騎士団の団員さんたちがその下敷きになってる。まだ意識があって抜け出そうと動いてる人もいれば、まったく身動きしてない人もいた。

 予想してたよりも状況は深刻そうだ。

 私は急いで動いた。


「大丈夫ですか!」

「う、うぅ……」


 瓦礫の山をモグラの爪で取り除きつつ鍾乳洞を駆け回ってると、途中で地面に横たわる蒼の光剣(ブルーウォリアーズ)のアーサーさんを見つけた。

 声をかけると、彼は上手くしゃべれないのか目だけで何事か訴えかけてくる。その視線が腰の革袋へ向いてることに気づいた私は急いでそれを手に取った。中を開けるとウチのお店のスクロールが何本か入ってた。


「ゴホゴホッ……ありがとう。また君に助けられた」


 治癒(ヒール)のスクロールを抜き取って使用すると、アーサーさんは血の塊を吐きながらふらふらと起き上がった。


「まだ無理しないほうが……」

「いや、おちおち寝てはいられないよ。それよりも襲撃者たちは? 君が全員倒してくれたのか?」


 竜のことも含めてこれまでのことをざっくり説明すると、アーサーさんは満足そうに大きく頷いた。


「やっぱり君に託して正解だった」

「でも、みんなが……」

「わかってる。これからできる限り多くの負傷者を救おう。僕はグリフさんとゲンドルさんを探す。あの人たちもスクロールは持参してるから僕の残りのスクロールは君が持っててくれ」

「わかりました」

「使うならばできるだけ重傷者に。頼んだよ」


 アーサーさんと別れてさらに鍾乳洞を出口側に進むと、懸命に治療に当たってる神官さんたちと再会した。

 王子様の姿を見て胸をなで下ろす彼らに状況を説明後、一番の重傷者の下へ案内してもらう。

 そこで私はマストンさんが命の危機に瀕してることを知った。


「――治癒(ヒール)! 治癒(ヒール)!!」


 アーサーさんからもらった残り3本のスクロールを全部使ったけど、マストンさんの胸の傷は半分も塞がらなかった。


「延命にはなったでしょうが、もっと高位の回復魔術が必要です。早く王都の神殿まで彼を運ばなければ」

「しかし、もう我々の魔力も尽きかけています。とてもではありませんが、それまでは……」


 ここでマストンさんを見捨てれば、神官さんたちの魔術でより多くの人たちを確実に助けられるかもしれない。

 残酷な天秤だった。


「……大丈夫、王都までの〝道〟なら私がなんとかします!」

「え? いや、ですが――」

「――リリと王子様はここにいて! 絶対に神官さんたちから離れちゃダメだよ!」


 引き止める声を無視して、私は暗黒土竜の魔眼を頼りに西側の壁へと走る。高低差はあるけど、地図どおりここをまっすぐ掘れば祠の入口まで最短の近道を作れる。それも、それはただの近道じゃない。



「――モグラショートカット!」



 数ミニットほどでぱぱっとトンネルを開通させると、私は狙いどおり祠の入口付近に躍り出た。

 これで守備隊と合流して助けを呼ぶことも可能だ。私はすっかり日の暮れた暗い出口を目指して突き進んだ。


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