幕間 ~予感~
今回更新早めですが、かなり短めです。
ちょっとこの先コロコロ視点変更が続くかもなので、更新をどうしていくか悩み中。あ、あと今後の展開がアレってのもあって念のため保険として【残酷な描写あり】にチェックを入れました。血とかなんかいろいろ出ちゃいそうなので、はい。
胸の内から絶え間なくわき上がってくる、ざわついた予感――
四年前、先代の国王であったヴァンス公が亡くなった朝もそうだった。
六年前、三番目の妹が企てたあの事件の夜もそうだった。
(これは、何か良からぬことが起こる前触れ……)
ティシャーナは不意に訪れた変調に、すでに確信めいた予兆を感じ取っていた。
しかも、今日というこの日である。
関連付けできる出来事は明白だった。
――聖杯の儀。
間違いない。
王子様とリリ様の身に、危機が迫ろうとしている。
しかし、現在はコロナの代理として諜者を務める身である。
迂闊に城を離れてよいものか。ファンダイン家当主代理の心は揺れていた。
「どうしたのですか、ティシャ?」
「……それが、気がかりなことが一点ございまして。どうか進言のご許可をいただきたく」
根拠に乏しい予感を伝えるべきかどうか逡巡しているあいだ、その迷いが顔にも出てしまっていたらしい。
だが、ミリーナ女王に問われたことで却って踏ん切りも付いた。
ざわざわとしたこの胸の鼓動と違和感。ティシャーナは自らの過去の体験と共に懸念を伝えた。
「つまり、こう言いたいのですか? 何者かが凶行に及ぶと……?」
「はっきりしたことまではなんとも申し上げられません。下手をすると、まったく別の案件かもしれません。しかし、私としては、やはり王子様やリリ様の身に危険が迫っていると考えるのが妥当に思えるのです」
「……わかりました。そこまで言うのならば至急出発の準備を。あなたにはこれから祠に急行してもらいます」
「はっ。かしこまりました」
「騎士団に早馬の用意をさせるわ」
「いえ、女王様、それには及びません」
馬よりも自らの足で走ったほうが早い。
ティシャーナは速断で申し出を断りその場で一礼すると、振り返ることなく執務室を出た。
「これ、一本お借りします」
「え? あ、はい。別に構いませんが……」
城外へ向かう途中、来客の食器を下げにきていた若い女中に声をかけて、配膳ワゴンから銀のナイフを拝借。武装に時間をかけている暇などなかった。今は、一刻を争う時。
予感はもうそのすべてが確信へと変わっていた。
「あ、ちょっ、何をしてるんですか!? 落ちたら危ないですよ!!」
「どうかご心配なく」
「えっ――!?」
開け放たれていた北側の窓。
そこから王都を囲う防壁目がけて颯爽と飛び下りると、ティシャーナは凄まじい脚力を以って疾風の如く駆け出した。
向かうは東門。
そして、レコ湖方面へ。
一方、同時刻――
レコ湖遥か上空では一匹の翼竜が雄々しくも優雅に飛翔していた。
その青い鱗の背中に、四人の終焉の解放者を乗せて。











