番外編:それでも世界は美しい
――嗚呼、神よ。
我、ここに存在せし。
高い空の下、暗黒の大地より生まれ出づる。
地上に息吹を受けた刹那より知恵も知識も備わり、理を解する。
――嗚呼、慈悲深き神よ。
しかし、我は何者か?
そして、どこへ行くのか。
――救いを。
世界は鬱蒼と繁り、恵みたる禁断の果実は実る。
我は仙人にあらず。
霞を食して生きることは叶わん。
空腹を埋め、神に感謝せり。
産まれること。
生きること。
死ぬこと。
厳かなる世界の時間が過ぎ行く中、我、熟考せり。
しかし、一向に真理を得ること叶わん。
伸ばした手の先にあるのは雲。
掴もうとも、答えは虚しく霧散するばかり。
――嗚呼、神よ。
我は何者か。
存在する意味は。
生きる目的は。
――どうか、真なる救済を、我に。
誕生し、ただ朽ちていくだけの存在。
それならば、なぜ神は我を作りたもうた。
それも、やはり答えは得ず。
時は、ただ残酷に過ぎていく。
――神よ、貴方はもう我を見捨てたか。
願いは一つ。
ただ、救済を望む。
だから、我は今日という日に祈る。
そして、明日も明後日も、その次の日も。
祈り、続ける。
――叶わぬ願いはやがて変質する。
しかし、いつか祈りが〝呪い〟に変わる日。
その日が訪れた時、我は正気を失うだろう。
それは本能で解する世の理。
肉体を構成する無数の細胞。
そこに刻まれた記憶が我に語りかけてくる。
――神は忌むべき存在だ。
違う!
神は尊ぶべき存在だ!!
――憎め、お前を棄てた世界を憎め。
違う!
我は棄てられてなどいない!!
――もう願いは、届かない。
違う!
違う……願いは、我の、願いは……!!
Still the world is beautiful...
あれから、どれだけの時間が流れただろう。
一瞬のようにも思え、永遠のようにも思える。
ある日、なんの脈絡もなく唐突に背後に気配を感じた。
振り向くと、そこには異形なる者の姿。
我は、夢でも見ているのだろうか。
しかし、その者は言葉を投げかけると、その腕で我を抱擁した。
(嗚呼、なんと温かい……)
慈愛に満ちた他者の温もり。
抱き竦められた次の瞬間、我はすべてを理解した。
(そうか。ならば、貴方こそが――)
待ちに待った邂逅が叶い、厳かな世界に二つの声が木霊していく。
そして救済の女神は慈愛の抱擁を解くと、何も持たぬ我に一つの名を与えてくれた。
「――よし、今日から君は〝しもふりピンクさん〟だ!」
し も ふ り ピ ン ク さ ん
嗚呼、なんと美しく荘厳な響きであるか。
我は名を授けられ、今日生まれて初めて他者から観測される存在となった。
もう世界でただ一匹の孤独な獣ではない。
これを救済と呼ばず、何を救済と呼ぶか。
(おお、神よ。偉大なる神よ。御導きに感謝いたします)
悠久にも感じられた試練の日々と、輝きに満ちたこれからの未来に想いを馳せて、我は小さくぴぐぅ~と泣いた。
お前かーい( ´(00)`)ブヒ
【ご連絡】
というわけで少し前に予告していたとおり、今話で『もっとのんびり編』は終わりとさせていただきたいと思います。そして、もう毎度のことではございますが、次章開始までには少しお時間をもらう形になるかと。いろいろ没にしたのでまだプロットすらもできていないのです(゜∀゜)アハハ
【感謝】
ブックマーク数も初期の頃より大幅に増加し、また(一年と四ヶ月ほどかけてようやくではありますが)こうやって五十万字の大台にも到達しました。すべては皆様のご声援あってのこと。
この場にて心よりお礼申し上げます<(_ _*)>











