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121.もぐらっ娘、キノコの栽培所を作る。

※栽培所の階段をモグラクローで作製しているところを、モグラショートカットに変更しました(2018/8/28)。



「――トリュフ? あー、それなら、コロナさんのお屋敷に招待された時に食べたよ」


 帰宅後、我が家の料理長(シホル)に例のキノコのことを訊くと、そんな答えが返ってきた。

 どうやら、すでに私も食してたみたい。

 でも、まったく記憶にないね。ヘンリーがいうには超高級食材らしいし、そんなおいしいキノコなら印象に残ってるはずなんだけどな。ま、食べれば思い出すか。


 翌日、お店に一度寄ったあとで野菜を運んできたジャスパーたちと教会へ移動。さっそく栽培所作りに着手――と思ったけど、その前にテレジア先生にあいさつ。

 ヘンリー曰く、もう許可は取ってあるって話だけど、こういうのは直接言質を取らないと安心できないからね。何事も慎重に慎重に。


「話は聞いてるから問題ないわよ。ただ、ほ(・)ど(・)ほ(・)ど(・)にお願いね、エミカ」

「あ、はい……」


 〝ほどほど〟ってところがすごい強調されてた。言質を取るつもりが、なぜか釘を刺された感じに。

 やっぱ先生はジャスパーやヘンリーを含めて、教会の子供たちにはあんまお金を持ってほしくないみたいだね。

 んー、ほどほどにか……。


 良い言い方をするなら思いを汲み取りつつ、悪い言い方をするなら圧力に屈しつつ、私はキノコの栽培所作りに臨んだ。


「テレジア先生は教会の敷地内ならどこに作ってもいいと仰ってましたけど、どうします?」

「場所も含めて私に考えがあるよ。収穫までの日数もかなり短縮できると思う。ま、あのドングリが本物ならだけどね」

「魔術のことなんて俺らにはわかんねーからな。その辺は全部お前に任せるぜ」

「では、僕たちはそのあいだに諸々の準備を進めておきましょうか」


 教会の入口付近で2人と別れると、私はそのまま敷地内にあるワインの熟成所へ向かった。

 地上ではスペースの問題もあるので、今回はこの辺の地下に作る予定だ。

 ただ、地下に作るにはもう1つ大きな理由があったりする。

 それは、魔力栽培とモグラストレージの効果を〝併用〟するため。

 早い話が魔力土を使えば苗木から木を育てるのに数日かかるけど、今回はその時間すらもモグラストレージで速度アップ。さらに生長を加速させちゃおうというわけだ。


「――よ~し、やるぞー!」


 まずは熟成所付近の地面をモグラショートカットで掘って、階段を作製。一定の間隔で踊り場を作りつつ、折り返し折り返しで地下へと続く段差を伸ばしていく(一気に階段をダダダッと作るよりもこっちのほうが安全だからね)。

 ヘンリーの話によると、オークの木は平均で30フィーメルほどの高さにまで成長するらしい。なので、今回は余裕を持って40フィーメル(実際は2500フィーメル以上)下まで掘り進めておいた。


「――モグラショートカット!」


 先に〝最下層〟部分の空間を作っておいてから、階段を駆け上がり地上付近まで戻る。続いて暗黒土竜の魔眼も使いながら慎重に、栽培所の〝最上層〟部分となる空間を確保。

 そこからは上層から下層に向けてボコボコと貫通させるように、さらにモグラショートカットで穴を掘っていく(ついでに天井には今のうち照明も設置)。


「よしよし、これなら高さも広さも十分」


 大きな樹木1本を育てられる空間を作ったあと、最上層部分を確保するために開けた入口を塞いでから、また底の部分に戻る。

 仕上げにさらに数フィーメルほど掘り下げて、最後に魔力土をドバドバ流しこめば、作業は9割方完了だった。


「うわっ、もう作ったんですか!?」

「掘るだけだからね。そんな時間はかからないよ」

「いや、いくらなんでも早業すぎるだろ。モグラかよ……」


 微妙に否定できないことをいわれた。

 少なくとも両手は暗黒土竜(モグラ)だ。

 あと付属品だけど、目と足もね。


「購入しておいた苗木も持ってきましたし、さっそく植えましょう!」


 モグラの爪で掘ると固定化させてしまうので、植樹は2人が手作業で行なった(モグラリカバリーを使えばできるだろうけど、念のため)。


「先にドングリも埋めちゃう?」

「いえ、木がどこまで生長するかもわかりませんし、根の位置を把握した上で蒔こうかと」

「おっけおっけ。んじゃ、もうモグラストレージ状態にしちゃうねー」


 誰も栽培所に残ってないことを入念に確認したあとで、階段側に作った入口をモグラウォールでピシッと密閉。

 これで準備は完了。普通の環境なら苗木から70年ほどで樹高20フィーメルほどになるらしいけど、魔力栽培の効果で大きな樹木でも4日~5日ぐらいあればかなりの段階まで生育するはず。

 プラス、その時間すらもモグラストレージで短縮が可能。

 木1本を育てるのに、大体2アワもあれば十分。


 てか、この合わせ技で人工的に森林を作っちゃえば、街規模で木材には困らなくなりそうだね。問題は木を切り倒して地上まで運ぶのが大変だってところだけど、地下に加工施設を作っちゃえば、ある程度労力も軽減できるかもだ。

 モグラの爪で陶器の食器や鉄製の家具はクリエイトできても、温かみのある木の食器や家具は作れないからね。木こりとして働いてる人や、大工屋さんや家具職人さんとは特にいい関係を築いていかなきゃって考えてたところだ。この件は今度ロートシルトさんにでも相談してみよっかな。



「――おねえちゃーん!」



 木が育つまで階段部分の照明を足したり、入口を屋根や壁で覆って扉やキノコをかたどった看板なんかをつけて時間を潰してると、教会の入口からリリが走ってきた。

 続いてパメラにシホル、なぜかイオリさんまでも出てくる。


「こんなとこで何やってんだ、お前ら」

「うっす、姉御」

「おはようございます、パメラの姉御」

「木が育つまでダラダラと時間を潰してるところだよ」

「は? 木がなんだって?」

「おねえちゃん、ひまひまー!?」

「うん。暇といえばすごく暇だね」

「ならいっしょにあそぼあそぼー!!」


 どうやら休み時間らしい。というわけで、久しぶりにみんなでかくれんぼをして遊ぶことになった。


「――ご主人様、それはズルいっすよ! 反則っす!」


 モグラウォールで四方を壁で囲んで隠れてると、なぜか〝鬼(it)〟だったイオリさんに外から一発で看破された。


「くそー、なんで私だってバレたんだ」

「あんな隠れ方、エミ姉にしかできないよ……」

「つぎはおいかけっこやるー!」

「んじゃ、卑怯な手使ったエミカが鬼(it)な」

「えー、追いかけっこはあんま自信ないんだケドナー」


 フフッ、なーんちゃって。

 暗黒土竜の後脚を舐めてもらっちゃ困るよ。

 30数えたあと、すぐに同じ方向に逃げた野郎ども2人とシホルを追いかけて次々にタッチ。

 それが終わると方向を変えて、その先にいたイオリさん目がけてダッシュ。

 瞬く間に距離を詰めてタッチ――したと思ったら、その場で身体をねじってかわされた。

 ほー。


「やるね」

「くっ――!」


 ただのメイドさんにしとくには惜しい俊敏性。

 とってもいい反応だよ。

 でも、今度は一度フェイントを挟んだあとでトリッキーに腕を伸ばしてタッチ。イオリさんは「そんなの無理っすー!」と降伏してその場に座りこんだ。


 よし、これで早くも残すは妹2人。

 リリは最後まで遊ばせてあげる予定なので、必然的に次のターゲットはパメラとなる。物影にでも隠れてるかと思ったら割と近い位置にいたので、すぐに追いかけっこ開始。

 むっ、速い。

 さすがは超上級冒険者だけあってすばしっこいね。

 だけど残念、地の利は私にあるのだ。


「――モグラウォール!」

「あ、お前っ!?」


 土壁で逃げ道を塞いで一気に距離を詰める。不意打ちを食らったパメラは為す術なく私にタッチされた。


「また卑怯な手使いやがって! 今の反則だろー!!」

「フッフッフ、負け惜しみはあとでゆっくり聞くよ」

「こ、この野郎……!!」


 これで残るは1人。

 といっても相手はリリなので手加減は必須。

 スタート地点のほうにその姿を確認したので、ゆるりと追いかけていく。


「まてー」

「きゃー!」

「まてまてー」

「きゃっきゃー!」

「……ん?」


 あれ、おかしいな。

 距離が縮まらないぞ。

 てか、むしろ離されてる……?

 しかたないので徐々にスピードを上げていく。

 やがて、そのまま全力疾走。

 あ、ダメだこれ!

 まったく追いつける気がしないんだけど!?


「――モグラウォール!」


 こうなったらパメラも葬った奥の手だ。

 でも、ケガをさせるわけにはいかないので、離れた場所の進路を先に塞いでおいてから、最終的に袋小路に追いつめる戦法を取った。


「リリー、もう逃げ場はないぞぉ~!!」

「きゃー!!」


 これで追いかけっこも終わり。

 ゆっくり追い詰めつつ、捕まえようと腕を伸ばす。

 だけど、次の瞬間、不意にリリの姿が消えた。



  ――ダンッ!


         ――ダンッ!


  ――ダンッ!


         ――ダンッ!


  ――ダンッ!



「へ?」


 左右の壁を交互に蹴って、何(・)か(・)がすさまじい速さで上へ上へと駆け上がっていく。それはすぐさま高い壁のてっぺんにまで達して、ぴょーんと向こう側に消えていった。


「マ、マジか……」


 残像のようにしか見えなかったけど、状況を考えればそれがリリだったことに疑いの余地はなく。私の作った完全なる包囲網から、妹は見事脱出を果たしたのだった。


「ぜえ、ぜえ、はぁはぁ……ま、まってぇ~……!」

「きゃっきゃっ!」


 やがて、休み時間も終了。

 結局、私は最後までリリに追いつくことができなかった。


「たのしかったー!」

「エミ姉にたくさん遊んでもらえてよかったね、リリ」

「すごい攻防を見たっす! 感動したっすよ!!」

「まー、そんな落ちこむなよ、エミカ。負け惜しみならあとでいくらでも聞いてやっから」

「ぐ、ぐぬぬ……!」


 それぞれの感想と言葉を口にする妹たち&イオリさんと別れて、後片づけ後、私はヨロヨロと栽培所の入口まで戻った。

 リリを捕まえられなかったのはかなりショックだったけど、ここはいい暇潰しになったと考えることにしよう(精神の安定を図るともいう)。


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― 新着の感想 ―
[良い点] リリちゃんフィジカル最強伝説。パメラとのたたかいごっこの時も思いましたが、無垢さと最強さはアラレちゃんを彷彿つさせますね。あとさりげないお笑いポイント、すごく好きです。
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