表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/368

10.封印されし暗黒土竜


「良いニュースと悪いニュース、どっちから先に聞きたい?」


 依頼を受けた翌日、私は勧められたとおり朝一でギルドに向かった。もちろん、何よりも頼りになるのは黒髪の幼なじみだ。

 というわけで、ユイに昨日のできごとを粗方話した上、彼女にもろもろを調べてもらっていた。


「良いほうでお願いします、先生!」

「そうやって問題を先送りにするタイプだから、家賃も滞納するのよ」

「す、すみましぇん……」


 良いニュースというのはコカトリスからドロップしたアイテムの件だった。正式名称は〝凶鳥の羽根〟というらしい。


「高い魔力が秘められていて、調合薬や防具などの素材になるわ。この大きさだったら三十万以上の価値がつくはずよ」

「三十万――!?」


 手っ取り早く現金にしておきたかったのと、私自身にその手の商人のコネがなかったこともあり、ギルドに直接買い上げてもらう方向で頼んだ。コロナさんの依頼報酬と合わせれば、これで滞納した家賃の七割は確保した計算になる。


「さて、次は悪いニュースね」

「帰ってもいい?」

「あなたがそれでいいなら、別にいいわよ。あとでどうなっても知らないけど」

「うぅ……」


 悪いニュースというのは……ま、当然、私の両手の件だった。


「武器に防具、あらゆるアイテム鑑定のスキルを使ったけど、結果は全部鑑定不能(アンノウン)だったわ」

「呪われてるから鑑定もできないとかじゃなくて?」

「カースアイテムでも鑑定は可能よ。その場合、正式名称の頭に、〝呪われた〟とか〝呪いの〟って言葉がつく。たとえば、〝呪われたモグラの爪〟とかね」

「ほえー」

「だから、この爪はアイテムではない――という仮定で話を進めるべきだと思う」

「でも、アイテムじゃなかったらなんなのさ?」

「それを確かめるには、またあなたの身体を解析する必要があるわね」

「えー、昨日今日で、そんな大して変わらないと思うけどなぁ……」


 とりあえず、また生物解析(アナライズ)で基本能力値を測ることになった。それに加えて、今回はさらにスキルチェックも行なうとのこと。

 まずわかりやすいように、ユイが前回使った用紙に追加する形で、私の現在の基本能力値の念写ソートグラフィーをはじめた。

 ま、でも昨日はあれだけの冒険をしたんだ。少しは上がってくれてるとうれしいなぁ、とかなんとか思ってたら、結果はすぐに出た。




―――――――――――――――――――――――――

※分析結果(一昨日のもの)


 腕力 :F(15)

 体力 :F(10)

 魔力 :F( 3)

 気力 :A(97)

 知性 :E(20)

 俊敏性:F(18)

 幸運 :D(49)


     ↑これが




         ↓こうなった


 腕力 :F  ⇒S(115)△UP  変動100

 体力 :F  ⇒F( 10)

 魔力 :F  ⇒F(  3)

 気力 :A  ⇒A( 99)△UP  変動2

 知性 :E  ⇒F( 19)▼DOWN 変動1

 俊敏性:F  ⇒F( 18)

 幸運 :D  ⇒G( -1)▼DOWN 変動50


―――――――――――――――――――――――――




「は?」

「……」

「な、何これっ!?」

「エミカ、まずは落ち着いて。冷静になりましょう……」

「私の知性Fに下がっちゃってる!」

「一番最初に驚くとこがそこなの!?」

「え?」


 あ、ほんとだ。

 よく見たら、幸運もめちゃくちゃ下がってた。いや、マイナスって!?

 それに比べて腕力は、異常なほど上がっちょる。

 えっと、ひーふーみーで、Fが四個だね。んで、S・A・Gが一個ずつ、か。なんだ、この気持ち悪いステータス……。


「気力と知性の変動は微差だから、ごく自然的なものでしょうね。だけど、腕力の上昇と幸運の減少はあきらかに違う。何かしらの外的要因を受けたものと考えるべきだわ……」


 続いてスキルチェックの結果をユイは書き出してくれた。




―――――――――――――――――――――――――

※保有スキル


 ・穴掘り(ディッグ)<Lv.∞>

 ・鉱石鑑定(アナライズ・オーレ)<Lv.2>

 ・投石(スロー・ストーン)<Lv.1>

 ・料理(クッキング)<Lv.1>

 ・禁魔法(ドグラ・モグラ)<Lv.1>


―――――――――――――――――――――――――




「禁魔法なんて、いつのまに習得したの!?」

「禁〝魔術〟ではなく、禁〝魔法〟ってのも問題よね……。しかも、穴掘りレベルも意味のわからないことになっているし」

「これも、この爪を装備した影響なのかな?」

「でしょうね。でもそれ、さっきも言ったけど、アイテムではなく……」


 これまでの分析の結果から、すでにユイは一つの結論にたどり着いていた。


「もう一度、解析系のスキルを使えば、はっきりすると思う。エミカ、ちょっとまた両腕を前に出してくれるかしら」

「ん、これでいい?」


 指示を受けてモグラの爪を広げると、ユイは予告したとおり解析のスキルを使った。なんでも、モンスターをより細かく調べる際に使うものらしい。

 え、モンスター……?




―――――――――――――――――――――――――

※分析結果(対象:エミカ・キングモールの両手)


 個体識別名:封印されし暗黒土竜

 形態   :唯一体

 属性   :土


 能力値  :すべて不明(算出不可)


 使役条件 :基礎気力95以上

       穴掘りスキルLv.7以上


―――――――――――――――――――――――――




「やっぱり……」

「あ、暗黒土竜……?」

「エミカ、これから私の結論を言うわ。ちょっと長くなるけど、聞いて」

「うん」

「通常、能力付与効果のある武器や防具を装備した人物を生物解析(アナライズ)しても、基本能力値やスキルレベルの変動が数値として表れることはない。だけど、変身魔術でモンスターに化けた人物を生物解析(アナライズ)した場合、その基本能力値やスキルは変化したモンスターに準じて変動するの。これら二つの法則的条件を踏まえて考えると……エミカ、あなたの能力の異常変化は、あなたと()()()同調しているために起こっているものだと推測できるわ」

「ど、同調……?」


 うー、まどろっこしくてわかりにくいなぁ。

 こちらから顔を背けて、なんだかとっても暗い顔をしてるユイに、私はより簡潔な説明を求めた。すると、今度は一切の遠慮なく、幼なじみは明け透けに言い放った。


「あなたの手、なんかわけわかんないモンスターに寄生されてる」

「………………」


 え?



挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

html>html>

ke8v85imjkqm5jd6dmbxewosbk6s_42w_5k_8w_9    gd109dru4pq91oc7h2x874y73lq6_1q2_5k_8w_b    le5lmdl0tju10152gyhn77by6h_196l_5k_8w_ad


c76ieh9ifvcs70tieg1jdhb3or_f5l_8w_8w_18l
↑↑↑ 投票(1日1回可能) ↑↑↑
d(>ω<*)☆スペシャルサンクス☆(*>ω<)b
表紙絵
― 新着の感想 ―
[良い点] 頑張り屋の主人公は好感が持てますね [一言] シルバー以上の冒険者が苦戦するほどの強敵のレアドロップでも家賃3ヶ月分にもならないのは幸辛いですねぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ