幕間 ~漆黒ノ刻~
黒よりも深い深淵。
もうどれほどの歳月が流れたか。
牢に囚われ、ただ滅びを待つ身となった我に時の感覚は既に無し。
一瞬とも永久とも定かではない闇は、我を内包したまま永遠の眠りへと誘い続けている。
――暗黒。
それは神が与えし呪いか。
それとも祝福か。
それすらもう我には識別が叶わず。
ただ、黒色だけが延々と刻まれていく。
まさしく、無限の闇。
まさしく、無限の静。
まさしく、無限の無。
外界を途絶する漆黒匣。
――気配。
しかし、これは定められた運命か。
永遠だったはずの孤独は、その邂逅を持って唐突に終焉を迎えた。
何者か。
我を呼びし、この者は何者か。
それは皮肉にも、我を生み出した存在たちと非常によく似ていた。
――紅蓮の少女。
然らば、偽物の神々の末裔か。
否、彼奴らは自らの後継を産めず。
ならば、この少女は天獄の外界から生まれし存在。
正統なる、この世界の後継者。
――共鳴。
光。
力強い光。
それは我が悠久の中で求め続けていた救いだった。
たとえこれが、あの偽りの神々が定めた宿命だとしても。
たとえこれが、あの偽りの神々が用意した物語だとしても。
抗うことはこの身に叶わず。
――契約。
盟約を基に資格を有すこの紅蓮の少女に、この力を託そう。
呪詛から生まれしこの身に叶わずとも願わずにはいられない。
我が盟友に、せめてもの祝福があらんことを。
――禁魔法。
我が名は、暗黒土竜。
土の覇者にして闇の君主。
偽物の神々に抗う、最初で最後の爪である。