覚醒
ずいぶんと遅くなって申し訳ありません!
お詫びと言ってはなんですが、2話と3話に分けて投稿するつもりだったものを1つにまとめて、2話として投稿させていただきます!では是非お楽しみ下さい!
「お前はバカなのか!?俺はただの高校生
だ!アレを倒すなんてできるわけない!!」
俺は、黑刃の頭が大丈夫なのか真剣に心配に
なった。しかし、彼女はわめく俺を見据えて
こう言い放った。
「そうだね。確かにできないよ?マスターひとりでは…ね。」
「は?」
俺は黑刃の言葉を理解できず、固まってしま
った。きっと口を開けてマヌケ面をしていること
だろう。黑刃はそんな俺にも構わず、こちらへと近づいてくる。
気が付けば黑刃の顔が、驚くほど近くに来ていた。
「うわっ!!近すぎだお前!」
思わず、離れてしまう。が、黑刃が俺の腕をつかんで引き寄せる。
「ねぇマスター...。ようやく接続≪リンク≫したんだ。だから...私を受け入れて...?」
意味が分からない黑刃の言葉。けれど、一つだけわかることがあった。
黑刃に、この少女にこんな寂しさに満ちた顔をさせてはいけないと...!
俺は黑刃の手をつかみ、そっと俺の腕から外させる。そしてそのままその手を握りしめる。
「...分かった。俺は、立花夜刀は...お前を受け入れる...!?」
その宣言と同時に、俺は立っていることができず膝をつく。
なぜか。それは頭の中に膨大な量の情報が耐え難い頭痛とともに流れ込んできたからだ。
「ぐっぐうぅぅぅぅぅぅっっ!!!!」
脳内を掻き回すような痛みが襲ってくる。吐き気がする...意識が飛びそうだ...!
俺がその場に倒れかけたその時、
「マスター!落ち着いて!!」
黑刃の声が響く。鈴の音のような声だ。
その声を聴いた途端にさきほどまでの痛みが嘘のように引いていく。
そして、打って変わったように脳内がすみわたる。
「ぐっ...はぁはぁはぁ...」
黑刃がこちらを心配そうにこちらを見つめている。
そんな彼女に大丈夫だと頷いて見せる。そしてゆっくりと立ち上がる。
「......マスター」
「ああ...分かってる」
そう。分かっている。あの化け物を倒すためにどうすべきなのかが分かる。
俺は握った黑刃の手を更に強くにぎり、その言葉を唱える。
『魔を断つものよ... 虚を斬るものよ...
今、この手に 顕現せよ! ”断魔刀・宵闇”!』
黑刃の体を黒い霧が覆い始める。そして、握った手の温もりが徐々になくなり質感が変わってゆく。
硬く、ザラッとした質感になり手にしっかりとした重みを感じる。
次第に霧が霧散していったが、俺の右手の先に黑刃の姿はなくなっていた。
いや、変化したというべきだろう。そう、俺の手には代わりに一振りの刀が握られていた。
見た目や刃渡りは太刀と呼ばれる刀となんら変わりがない。
しかし、その刀身は黑刃の髪と同じ鴉色に染め上げられていた。
光が当たるたびに鈍く輝いている。ため息がでるほど美しい刀だ。
そしてその刀は、長い間使っていたかのように俺の手に馴染んでいる。
「おお...本当にできた...」
そう言って武器変化という現実ではありえなかったことに一人で感動していると
「グガアァァァァァァァァッッ!!」
化け物が警戒していた黑刃がいなくなったと思ったのかこちらへと突進してくる。
「さて、やるか。知識はある...。あとは体がついてくるかどうかだな...」
俺は”宵闇”を正面に構えて走り出す。目測では相手との距離は十歩分ほどある。
一歩、二歩、三歩...数えながら速度を上げていく。
徐々に距離は縮まっていき、相手との衝突の瞬間、大きく真横に飛びながら
横一文字に刀を振りぬく。
「グゴァァアアッ!?」
ピシュッと化け物の顔に切れ込みが入り、鮮血が噴き出す。
「思ったよりいけるな...」
傷つけられるのが、初めてなのか痛みに地面をのたうち回る化け物。
それを尻目につぶやき、再び走り出す。
「苦しんでるところ悪いが、いくぞ!!」
大きく上段に刀を振りかぶり、化け物めがけ振り下ろす。
このままいけば、絶命させれられるはずだろう。
が...
ドゴンッッ!!
「ぐっ!?がはっ!!」
次の瞬間には、俺は化け物の尻尾に打ち据えられ、壁にたたきつけられていた。
全身がミシミシと嫌な音を立てる。胃液が口内まで上がってくる。
「ごほっごほっ!!...油断しちまったか...」
先程まで苦しんでいた化け物は表面が赤黒く染まり、少し硬質化したように見える。
どうやら怒らせてしまったようだ。
「痛ぇなぁ...骨折れたりしてねぇよな」
俺はふらつきながらもゆっくりと立ち上がる。
痛む身体を叱りつけて再度構えをとり、走り出す。化け物は小さく吠え、
尻尾を大きく 払ってきた。それを横に転がって避け、
化け物へと肉薄する。
「さっさとくたばれ...よっ!!」
今度は化け物の側面を縦に切り裂く。
ギャリギャリギャリィィィィッ!!
だが、それは不快な音を出し、少し削っただけ
に終わった。
「まじかよっ!?めちゃくちゃ硬くなってんじゃ
ねぇか!!」
悪態をつきながら体当たりしてくる化け物を
避ける。おそらくだが、このまま攻撃しても
意味はないだろう。
なら、どうすればいい...?
ひたすら避けつつ、対処方法を考える。
その時、
(マスター!!)
「うおっ!?」
突然頭の中に黑刃の声が響く。驚いて思わず声を上
げた。
(アレの弱点は顔の下だよっ!そこなら柔らかくて
刃も通るはず!)
「!!っそれは確かなんだな?」
(うん!それと倒すなら、あの技を使った方がいい
と思うよ?)
会話しつつ、相手の攻撃を捌いていく。
「はぁ!?無茶言うなっ!技は知っているが、
それ も知識として知っているだけだ!その通り
にできるとは限らねぇ!!」
(大丈夫だよ、マスターなら!)
「お前のその信頼はどっから来るんだよ...。
はぁ...失敗したらお前のせいだからな」
(マスターなら大丈夫!私を信じて!)
「おう!」
そして、俺は攻撃を避けつつ化け物と距離を
とる。構えをとくと大きく息を吐いた。
「いくぞ...黑刃!!」
化け物の正面に立ち、右足を前に出して刀を顔
の横に構える。呼吸を整え、全身に力を貯めていく。
化け物は、こちらを睥睨し全力で突進して来る。
徐々に距離が近くなってくる。
だが、俺は動かない。まだだ...まだ...。
もう少し......今!!
「おぉぉぉぉっっ!!”断魔壱の型・穿”っ!!」
俺は全身の力を解き放ち、身体をねじり刀へと
力を伝える。左手で握り締め、右手を離し片腕で
前へと突き出す。
全ての力が乗せられたその切っ先は突進してくる
化け物の喉元へと音もなく、吸い込まれていく。
そして、そのまま鍔元まで深々と突き刺さった。
「グガッ...グギャアァァァァ!!」
化け物が喉元から大量の血を吹き出しながら、横倒しになった。
叫びながらしばらくのたうち回っていたが、やがて動かなくなった...。
「案外、最期は呆気ないもんだな...」
小さくつぶやきながら、亡骸から刀を引き抜く。
そして、俺はそのまま立っている力もなくその場に
倒れてしまった...。
どうでしょうか?まだまだ戦闘シーンは慣れないものでして…。楽しんでいただけたなら幸いです!では、まだ3話でお会いしましょう!