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思いがすり替わる時

作者: 麻上空

 キスから始まった恋はどこへ行くのだろうと、少女は思う。憧れの人はいつも先にいて、きっと自分の気持ちには気づいてなんかいない。未熟な精神でも、心を奪っておいてと思いながら、恋慕を積もらせるのができることの精いっぱい。


 その後ろを追いかけて、憧れの人の真似で始めたバスケット。中々上達は出来なくて、こんなことをして意味はあるかなと少女は思い始めた頃、その人は少女が同じ道にいることに気づいてくれた。そして、同じ道に立ったことで気づく、本当の意味での自分と、その人との距離。


「君は僕より強くなれるよ」


 ひどく無責任だと少女は思った。手が届かないとさえ思わせているのは、一体誰ですか。打ち解けて、キスをしたことなんて幼すぎたからか、覚えてすらもいない相手に、本心なんて言えるわけもない。


「当たり前じゃないですか。先輩は追い越されないように頑張ってくださいね」


 出てくるのはいつの間にか減らず口。昔はあんなに素直だったのにと、憧れの人は言う。少女は貴方の口はいつまでたっても、自分の心を揺さぶるのですね。それもまた言えない秘めたる思い。だから、関係を崩さないまま構ってほしくて、出るのは減らず口ばかり。


 試合の時はいつも緊張した。自分のせいで、チームが負けたらと思うと、プレッシャーを感じて吐きそうになる。でも、憧れの人は試合前に何かしらの手段で『緊張しないように』と伝えてくれることで、いつの頃から少女は己のパフォーマンスを発揮できるようになった。


 充実したバスケットは、少女に楽しさを感じさせた。正しく言うなら、それはもうとっくに感じていたものを、自覚できるようになったのが今頃なだけだった。だから、少女は少し困惑しなければいけなかった。今抱いている気持ちと、憧れの人への気持ち。追いかけていたのに、どうして前者の気持ちの方が強くなっているのだろう。


「僕と勝負したいの?」


「…お願いします」


 だから、本当の意味で憧れの人は追い抜かなければいけない壁になっていた。もちろん性差の違いや、経験に費やした時間の差は、どんな時にも付きまとう。戦って追い抜いて、何が起きるかなんて少女は考えられるほど成熟していない。


 少女は成長した、派手なプレイはないが裏方に徹したプレイはチームの背後を任せられるまでになった。その真逆のスタイルである憧れの人も、多少の苦労はしたもののそのディフェンスを崩せないほど追いつかれたわけではない。呆気なく、横を通り過ぎてゴールポストのネットが揺れる。


 勝てなくて当然だという気持ちが湧き、それに少女は腹立たしかった。練習を積んで、きっとこの人を超えて見せると気概が満ちていく。


「次は…!」


「うん」


 憧れの人の目は相変わらず優しい。だから、少女の目からも気概が溢れ洩れていく。


「勝ちます!」


「待ってるよ」


 すり替わった渇望は、強くなるという気概になり、熱を持って少女を満たしていた。

ツイッターで企画がございます。フリーワンライ企画さんの予行練習です。第127回目にございました「キスよりも熱い、熱をください」を使って、内容に沿って執筆しました。


構想30分、執筆時間1時間というルールでしたが、思ったより早くまとまって30分ぐらいで終わりました。ただまぁ、あったお題がたまたま書きやすいだけだったのやも。


とあるところで告知がありまして、次回参加してみようかと思い練習。ちなみに、現在最新分が第128回目ですが、その告知の際にお題を見たので第127回目のでやってます。


詳しくはフリーワンライ企画さんのツイッターでもググって見てくださいな。

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