4
「話は出来た?」
王宮のあてがわれた部屋に戻って来た二人を見て戒は言った。
「話はした。が、王になれと言われた」
なぜだ?と蒼は言った。
眉をひそめる。
「あなたはどうなの?
王になりたいの?」
「王になる気はない。
今までなりたいと思ったこともなかった。
それなのに…」
そうね、と戒は蒼の頭をなでた。
「理由が知りたい?」
戒の言葉に蒼が顔を上げる。
真剣な戒の顔。
「知りたい。
なぜ、王は他では駄目だと言ったんだ?」
「それはね、私が傍にいるからよ」
「?」
「私はこの国の王冠の精霊なのよ」
そう言って戒はニヤリと笑った。
戒が精霊?
蒼は驚いて、開いた口がふさがらなかった。
「やっぱり…」
今まで何も話さなかった静がつぶやいた。
蒼は首をかしげて静を見た。
「ふふ、バレてた?
あなたの精霊が言ったのかしら?」
戒は静の背後を見ている。
「…いや、話していない。
なんとなく、気配で分かったのだろう」
静の背後に突然男が現れた。
青い目と髪をして、額に雷の印がある。
雷、と静は男を呼んだ。
蒼は驚いている。
「雷は私の精霊です。
ずっと傍にいてくれているの。
戒のように」
ねぇ?と静は雷を見て微笑んだ。
「蒼、あなたが望むなら、私はあなたを王にしてあげる。
そうしてずっと傍にいるわ」
「…ずっと、傍に?」
ええ、と戒は頷いた。
蒼は何かを考えているようだった。
自分は何を望むか。
それを考えたことはなかった。
小さな頃に自分は王族の子供だと戒から聞いた。
でも会ったことのない父親のことなど何とも思わなかった。
だから王になりたいと望んだことはなかった。
戒は王冠の精霊だという。
だから戒に選ばれたものが王になれるのだ。
あの王は戒に捨てられた。
長い間見捨てられた王はもう死にそうになっていた。
何と哀れな姿だろう。
その姿を見ても何の感情も溢れてこなかった。
王となる事を選ぶか。
それとも元の生活に戻ることを選ぶか。