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クラウン  作者: 東亭和子
4/5

「話は出来た?」

 王宮のあてがわれた部屋に戻って来た二人を見て戒は言った。

「話はした。が、王になれと言われた」

 なぜだ?と蒼は言った。

 眉をひそめる。

「あなたはどうなの?

 王になりたいの?」

「王になる気はない。

 今までなりたいと思ったこともなかった。

 それなのに…」

 そうね、と戒は蒼の頭をなでた。


「理由が知りたい?」

 戒の言葉に蒼が顔を上げる。

 真剣な戒の顔。

「知りたい。

 なぜ、王は他では駄目だと言ったんだ?」

「それはね、私が傍にいるからよ」

「?」

「私はこの国の王冠の精霊なのよ」

 そう言って戒はニヤリと笑った。

 戒が精霊?

 蒼は驚いて、開いた口がふさがらなかった。


「やっぱり…」

 今まで何も話さなかった静がつぶやいた。

 蒼は首をかしげて静を見た。

「ふふ、バレてた?

 あなたの精霊が言ったのかしら?」

 戒は静の背後を見ている。

「…いや、話していない。

 なんとなく、気配で分かったのだろう」

 静の背後に突然男が現れた。

 青い目と髪をして、額に雷の印がある。

 ライ、と静は男を呼んだ。

 蒼は驚いている。

「雷は私の精霊です。

 ずっと傍にいてくれているの。

 戒のように」

 ねぇ?と静は雷を見て微笑んだ。


「蒼、あなたが望むなら、私はあなたを王にしてあげる。

 そうしてずっと傍にいるわ」

「…ずっと、傍に?」

 ええ、と戒は頷いた。

 蒼は何かを考えているようだった。

 自分は何を望むか。

 それを考えたことはなかった。


 小さな頃に自分は王族の子供だと戒から聞いた。

 でも会ったことのない父親のことなど何とも思わなかった。

 だから王になりたいと望んだことはなかった。

 戒は王冠の精霊だという。

 だから戒に選ばれたものが王になれるのだ。

 あの王は戒に捨てられた。

 長い間見捨てられた王はもう死にそうになっていた。

 何と哀れな姿だろう。

 その姿を見ても何の感情も溢れてこなかった。

 王となる事を選ぶか。

 それとも元の生活に戻ることを選ぶか。


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