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クラウン  作者: 東亭和子
2/5

 屋敷の部屋は質素だった。

 広い屋敷にもかかわらず、住んでいるのは二人しかいないようだ。

「ごめんなさいね。

 蒼は王家と関係があるから、たまに刺客に狙われるのよ」

 彼女、カイは静のために紅茶を入れてくれた。

 いきなりのヘビーな話に驚く。

「刺客対策のためにここには私たちしか住んでいないの」

「かつては沢山の使用人が住んでいたんだけど。

 今は必要ないからね。

 今度改築でもしようか?

 二人だけが住む、質素な家がいいな」

 蒼は戒に向かって言った。

 二人は恋人同士なのかだろうか?

 仲の良い姿に自然と笑みがこぼれた。


「誤解なさらないでね。

 蒼は私の子供なのよ」

 戒は微笑んでいる。

 子供?

 だって戒は若く見える。

 どう見たって二十歳後半だ。

 驚いている静を面白そうに戒は見ている。

「そう。戒は母親なのです。

 育ての母。

 本当の母もいるんですけどね。

 戒は何年たっても若いままに見えるんですよ」

 でも結構歳なのは本当です、と蒼は静に耳打ちした。

 その様子を楽しそうに見て戒は言った。


「今日はどこに泊まるつもり?

 この村には宿はないわよ」

「町まで行こうと思っているので平気です」

「…今から町まで行くと夜になってしまうわ。

 ここに泊まればいいわよ」

 いい考えだわ!と戒は喜んでいる。

「それがいいと思います。

 夜は危険です。

 それに戒は一度決めたことは決して曲げない。

 観念したほうがいいですよ」

 蒼は苦笑しながら静に言った。

 では、と静はここに泊まることを決めたのだった。


「とうとう王が危篤になったそうよ」

 静がこの屋敷で過ごして一週間が過ぎた頃だった。

 戒は眉をひそめて蒼に告げた。

「王都まで行かないと駄目か…」

 蒼がため息をもらす。

「ええ、それが一番いいわね」

 込み入った話になっている。

 静はそろそろ屋敷を出て行こうと考えていた。

 そんな静を察したのか、戒が静を見て微笑んだ。

「ごめんなさいね。

 ちょっと身内のことでゴタゴタが発生してしまって」

「いいんです!

 私こそ図々しくお世話になってしまって、申し訳ないです。

 今日にでもこの屋敷を出て行きます」

 静はそう言って頭を下げた。


「せっかく仲良くなれたのに残念だわ」

 そう言って戒は静に抱きつき、頬を寄せる。

 戒は静を気に入っていた。

「離れがたいわ~。

 蒼のお嫁さんにでもなってもらおうと思ってたのに~」

 戒はぶつぶつと呟いている。

 おい、と蒼の突っ込む声が聞こえる。

「…そうだわ!

 お嫁さんになってもらえばいいんだわ!

 ねぇ、静さん?」

 ニコニコと笑った戒が静を見ている。

「…え?」

「早速準備しなくちゃ。

 王都までの道のりは長いものね」

 ワクワクしながら戒は部屋を出て行った。


 えっと、話についていけないのですが…?

 呆然としている静に、蒼は苦笑しながら近づく。

「随分と気に入られたようですね。

 もう、ああなった戒を止めることは出来ません。

 申し訳ないのですが、しばらく戒につきあってはくれませんか?」

 つきあうって…?

 静は困った顔をした。

「大丈夫ですよ。

 妻のフリをしてくれればいいだけですから」

 そう言って蒼は笑った。


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