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異世界平和主義者魔王ー現魔王はサド回復職ですー  作者: 斉城
第一章 お前は魔王にはなれないって・・。
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第四話 体力は大事です

「私虫とか一切だめで・・・、死んでいるなら大丈夫なんですけどね。」


いい性格してやがる。ムカデ程度で魔力の封印を解いてもらえた。なんてあっけないんだろう。回復職は生き物をすべて平等に考え優しい、とかそういうイメージが多かった。

そういえば、いつまでも回復職だなんて呼べない。お前なんて名前なんだ?


「はぁっ?人に名前を聞くときは自分から名乗りるものでしょうっ。それに今貴方は私に服従する身なんですよ、私に物を聞くだなんて失礼じゃないですか。」


「デア・ベーゼブリック・ヘルシャフト」


俺は当たり前のように自分の名前を呟く。当たり前なのだ、当たり前だ。俺にだって名前はあるのだから。名前で呼ばれることはほとんどないが自分の中では魔王ではなくいつもデア・ベーゼブリック・ヘルシャフトだ。名前が長すぎることは突っ込ませない。


それによく変わるくか、今回復職・・・、時期に名前で呼ぶようになると思うが回復職の俺を見る目が変わった。初めてというには出会って間もないが初めてコイツは俺の言葉を魔王としてではなく一個人として受け入れた。言葉として、発言として受け入れたのだ。


「長すぎやしませんか?私3つ名前がある人ってどれが苗字とかわからないんですよね。」


だから突っ込むなってっ。容量わるっ。


「うん、ではシャフト。シャフトと呼びましょう。私の名前はフィル・ネシャス。フィル様と呼びなさい。」


「フィルでいいだろ、フィルで。うわァッイツッイテェェェェェェ。」


足を思いっきり踏まれた。思いっきりだ。魔王を傷つけないように守る膜のようなもの簡単に言って魔王バリアみたいなものがあるのだが一気に破られた。俺にしか聞こえないバリっと敗れる音がする。


「ふんっ、私の身を助けたからっといって調子に乗ってんじゃねぇですよ。様付けしなさい。」


コイツガチで頭いかれてんじゃねぇの。

でもこの最悪の瞬間(最も悪いわけではないから最悪ではない)から俺のコイツへの認識は回復職からフィル、となった。俺もコイツの言葉を敵の回復職ではなく一個人として見るようになった。


「まあ、呼び捨てでも構いません。」


あっさり承諾してんじゃねぇか。


「そ、フィル。君は一体どうして魔王になりたい?」


もちろん聞く。聞かなくてはならないのだ、そういう規則なのだ。


「まあ、そういう流れに行きつきますよね。はい、とりあえずそういう話は貴方の城で話して差し上げることにしましょう。

無駄にでかい城持ってましたよね、貴方。茶の一杯くらい出しなさいよ。」


一々態度がでかい。ぬかるんだ地面に靴が汚れないようにかフィルがスキップのような奇妙な歩き方をする。ぬかるんだ地面でジャンプのようなことをしているわけだから当然泥が跳ねる。その泥は近くにいた俺の足元にどんどん飛ばされてくる。

何回かその泥は動物、魔物といったほうがいいかもしれないがそいつらの血なんかを吸い込んでいる。汚い。ものすごく汚い。すごく嫌な気分。不快になる。


だから自分の城に帰るというのは賛成だ。もちろん怖い。自分の部下たちが全くいないかもしれないし、壊されているかもしれない。不安の気持ちがどんどん募っていく。怖いとも思う。恐ろしい。


でもそれ以上に大切なことがあるじゃないか。ものすごく大切。

俺は一か月近く封印されていた。すごく汚い。そう、すなわち俺はとてつもなく。


「風呂に入りたいっ。」


食事関連は持ち前の魔王ステータスで空腹をなくすこともできた。だが全身クリーニング機能なんかはついていないのだ。

急に大声を上げた俺にフィルは目をパチクリとさせている。そして変なものを見るかのような眼をしてはいなかった。


「確かにお風呂は大事ですよね。」


と、賛同までしてくれた。なんだ話の分かるやつだな。


「でも、男がそこまで気にするとキモイですけどね。他に気にすることあると思いますよ。」


と、言われても特に気にすることなんてないしな。服は所々破れがあるがまあ服を着替えるにしてもまずは風呂だろ。っていうかキモイってなんだっ、キモイって。


「移動手段ってどうなってます?」


うん、そこ大事だよな。俺もそれさっき考えた。結構ここから俺の城まで距離あるみたいだし。いや、勇者に倒されたとき2人がかりで担ぎ上げられて徒歩でここまで封印されに来たしな。徒歩ってとこが重要だ。きっと徒歩で歩ける距離なんだ。しかも人を担ぎながら歩けるくらいの。


「馬鹿ですね。あいつ等はうちのパーティの格闘馬鹿たちですよ。体力がどれだけおかしいか見ててわかるでしょう。さっきの戦いぶりから貴方魔力に頼るタイプだということがわかりました。体力面はきっと疎かにしているんでしょうね。」


うん。そうだよ、体術とか痛いだけじゃん。基礎体力とか意味わからない。


「そうだっ、わが城に代々仕えてきた酷闇の翼をもったグリフォンがいるじゃないかっ。」


「いやアンタの部下、今もうあなたの部下じゃないんじゃないですか?っていうかどうやって呼ぶんです?」


自滅したっ。地雷踏んだっ。やばいダメージポイントがすでに赤くなってるううっ。

いつもは着てほしいときに俺の魔力を察知してきてくれたんだけどなぁ。

徒歩は無理。グリフォンも無理。距離は不明。あれこれ積んだんじゃね・・・。


「いやいや、じゃあお前どうやって来たんだよ。」


うん。まだ積んでない。コイツがここまで来た経路が残っている。文句ばかりのこいつが納得する方法が。


「ふっ。徒歩です。」


かっこつけてんじゃねぇよ。結局初めの案でいいんじゃないか。

コイツヒーラーなんだから俺が歩き疲れても回復してもらったら俺体力無敵じゃん。

元から体力とかどうとか、魔法と魔力でどうにかなるんだな。


「あっ、言っておくことがあります。私の回復は私に半径50メートル以内で近づいている人にしか使えません。まあ、私に回復をしようと思う意思が最も大事ですが。」


「何が言いたいんだ?」


「そんな汚い恰好の人と知り合いだと思われたくないんで、私から半径1万キロほど離れていただけます?」


どっかの国まで行かなきゃいけなくなるよな・・・。それ確実に。なるほどさっき言いたかったことは、どちらにせよ俺は回復しないってことね。


「汚いとかいうんだったら、魔法かなんかで服の修復とかしてくれよ。元からお前が顔とか頭とか踏まなければよかった話だろうがっ。」


うまい具合に平然と足蹴にしやがって。俺も回復能力とか持ってたら良かった。回復能力をもつものが貴重なご時世だ。そしてそのご時世にこんな奴が回復能力持ってるし。


「私にもう服従する身でしょう、黙りなさい。その程度の魔力で私に勝てると思わないほうがいいですよ。」


スチャッと音がする。ナイフを構えた音だ。さっきのムカデを相手にしようとした時とは違い片手で平然と構えている。こんなもの振り慣れているといった感じだ。暗殺術とかはじめ言っていたな・・・。チートとか言ってたな・・。


暗殺者で回復職って最強じゃね?傷ついたら回復すればいいわけだし・・。


「もう、普通に徒歩で歩こう。」


「初めからそうやって大人しく歩こうとすればよかったんですよ。」


諦めました。お前が俺の体力じゃ無理とか言ったんだろっとか言わないことにしました。

無駄に体力使って汗かいたりでもしたらさらに風呂に入りたくなるし。


そうしてながーくながーく歩いた。歩数計とかあったら歩数計も仕事のし甲斐があるくらいに。本当にフィルは回復してくれなかった。まあ自分にも回復を使っていなかったが。

体力が減るからとフィルは一切喋らなかった。

俺を運びながらこれを歩いた勇者軍団は絶対体力がおかしい。筋肉馬鹿だとフィルは言っていたが。



そうしてたどり着いた俺の城は何度見ても何度見たって、何も変わっていない。俺が倒された約一か月前とどう比べても何も変わっていなかった。


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