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第一話 プロローグ

俺にとって勇者ってなんだった?


わが領土を奪う粋な賊?確かに魔王軍の領地4分の3を奴らに奪われ、今その場所は違う名前で呼ばれている。

そこの民は喜んでいるのだろうか?自分たちの魔王軍に収められた、安全を絶対と安心された土地が勇者が勝ったことで彼の生まれ故郷の名前で呼ばれることに。


ちっぽけな国へだったらしい。村とも呼べるほどに。そんな馬鹿にされるような国の名前が自分たちの土地につく。

果たしてこれはストレスにならないのか?英雄の生まれ故郷の名前がつくのだったら誇りになるのか?


俺なりにできることはしてきたつもりだったのだが、悪い領主じゃなかったはずだ。

悪役ではなかったはずなのにな。


魔王だなんて名乗っていた先祖たちのせいなのだろうか?魔王といってもただの魔力が強いだけの人間に過ぎない。それだけで悪と決めつけられて正義に成敗されるのはお門違いだ。


魔王っぽいことなんて生まれてこの方したことない。雰囲気だけは魔王らしく、が代々魔王家のヘルシャフト家のきまりだったし。


そんなきまりがなかったら、黒だの紫だのがベースになった男のくせにへんにひらひらした服なんて着ないし。

角とかカチューシャだし。


魔王になるための決まりとかないし。あえて言うなら前の魔王の承諾さえあれば誰でもなれるし。


最近やけに赤いマントを強調した奴らがよく城に押しかけてくるけど、魔王である俺が自ら出向いて茶と菓子を出して帰ってもらってるし。


まあ、要するに特に何もしていない魔王軍が勇者に退治される理由がわからないわけよ。

なんで領地の大半奪われなきゃいけないわけ。


魔王軍全員勇者側に乗り換えるとかわけわからないし。


勇者たちとか俺一人なのに4人で襲い掛かってきたんだけど。ここで会ったが百年目とか知るかっ。

お前にあったことねぇよっ。

○○の仇とかしらねぇし。


ああ、先祖たちに顔向けできない。先祖代々受け継いできた土地を奪われるし、内部反乱は起きるし。

俺なんか悪いことしたかな?

人を殺したことなんてない。普通の教養を得て20年間育ってきたわけよ。

でもなんでこんな見てくれだけの魔王に、本物じゃない魔王に。何を求めて、何を勘違いして刃を向けてくるのだろう。


なんで魔王なんかになったんだろう。正義に滅ぼされるのは魔王の生き方ではない。

先祖代々、由緒正しき魔王の生き方は、何物にも屈せず力に囚われず、自分の大切なものを守っていく。

でもこれは、他の人たち、魔王じゃない奴らににとっては勇者の生き方なんだって。


魔王ってなんなんだろう。勇者ってなんなんだろう。双方がそれを考えることは決してあり得ない。

こう、考えるのは魔王だけだ。

だって勇者は自分の存在意義を否定しないのだから、魔王というものを考えるよりも先に刃向かってくる、殺そうとすらしてくる。


魔王は一人しかいないけど勇者は何人もいる。

魔王は闇にたとえられるけど、勇者は光にたとえられる。

魔王は悪人にはなれるけど、善人にはなれない。勇者は常に善人として考えられる。

魔王は、魔王って言う生き物は・・・・。

なんでこんなにも窮屈で自分の思い通りに生きられないのだろう。

なんてこの世界は魔王に理不尽なのだろう。


もういっそ、魔王なんて制度なくしてしまおうか、もう理由のない悲しみを背負うなら。

もう、知りもしない罵倒を受け続けるだけなら。


消えてしまっても・・・・・・・・・。


何度も殺されかけるし、何度もののしられ続けるし。身に覚えのない罪悪感に囚われる。



そんな魔王だったんだ俺は。とてつもなく弱いから、勇者にも負けたのか。

魔王としての覚悟がなかったからこんなにもつらいんだ。



そんなもんだよ、魔王なんて。


こんな風に聞いても君は魔王になりたいかい?勇者を滅ぼしたいかい?

身に覚えのない罪悪感におぼれたいかい?


今持っている幸せを手放せるかい?今の居場所も友人も、恋人もそんな関係も、魔王という役割につけば手放さなくてはいけない。

まぁ、恋なんてろくにしたことがない俺にそんなこと聞く資格はないが。




ねえ、君にとって勇者ってなんだ?














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