第肆話 覗きの常習犯
まだ序盤
時は進み仕事を終えたイヅナは入浴していた。
山田組の暗殺者達には専用の露天風呂があり、彼女もまたその風呂に入っていた。
「(何故だろう……
どこからか視線を感じる)」
彼女は覗きにあっていた。
一方で露天風呂から見ると死角になってる岩影に二人の男が居た。
二人の男は、イヅナの裸を眺めて小声で会話をする
「おおー、これが新入りの裸かぁ~
胸は小さいけど俺のストライクゾーンに入ってるぜ♪」
「石神……やはりそこに目を付けるか……俺は何よりもその小さい胸が好みだな……」
陽気な感じの少年とカズマが覗きを行っていた、彼等は常習犯でありよくバレる。
暗殺者としても一人の人間としても情けない二人だ。
「しかし……お前が帰ってきてたのは予想外だった……」
「予想外かぁ?
俺はいつも通り覗きをやってるだけだってのに?」
「任務の方だ……
お前は暫く帰れなさそうだと思っていたからな……
まさか帰りに覗きとは……
新入りにはばれないようにな……」
「その新入りの名前って何だよ?」
「本人に聞け……」
二人がひそひそと会話をしていると別の女性が、彼等の後ろに現れた、彼女の名前は相樂イスズ(サガラ_)、彼女もまた暗殺者だ、イスズが二人に
「やっぱり覗いてやがったな!?
この野郎!」
こう言うと二人を殴った
「へぶっ!?」
石神という陽気な少年の叫びが響いた、カズマは冷静にイスズの拳を避けた。
この物音に驚いたのか、イヅナは風呂から逃げるように上がり逃走した。
「全く懲りないねぇ……
石神ハルト(イシガミ_)も鬼流院カズマも。
覗きをやって何度お前らを半殺しにしてきたのか分かってるのかい!!」
イスズの怒声が響く、しかし、カズマは
「相樂……男とはこういう生き物だ……
諦めろ、人は欲望に勝てない……
欲を失った人間なら分からんがな……」
こう返す、これがこの組織のお決まりだそうだ。
因みにハルトがイスズに殴られて気絶するのもお決まりとなっているらしい、二人は覗きを毎日行っていた為に一度全身の骨の半分をへし折られるという状態に陥った経験があるにも関わらず、懲りない為呆れられている。
「暗殺者としては一流のお前たちも覗きはバレる、情けない限りだよ!」
イスズは二人を引っ張り強引にアジトに連れ帰った
「あだっ!あだだだ!!」
ハルトの悲鳴と
「……」
カズマの心の声が空に響いた。
アジトにて二人は正座させられていた。
「すみませんね」
全く反省の籠っていないハルトの謝る声、しかし
「ハルト、反省してない」
紅い髪の幼い子供が反省してない事を見抜いていた、周りの連中もそうだが。
「ユズ……思っていてもすぐには言うな……
こういう場ではな……」
ユズという少女にも厳しくあたるカズマ、彼はその少女の教育係を押し付けられている。
少女の名は天宮ユズ(アメミヤ_)、結論から言うと小五だ。
もうすぐ十一歳の誕生日を迎える。
彼女はゆっくりと腰にしまってある短刀を取り出そうとする、が
「ちょいちょいちょいちょい!
古代兵器は洒落になんねーって!
それだけは止めてくれよ!
なぁ?」
「そうなの?
悪い事をした人は斬って良いって、カズマ御兄ちゃんが言ってたのに……」
ハルトは必死だ、これまでに何度もユズに斬られている。原因は覗きの処罰だ、子供は時に残酷で、彼女は素直に悪い事をした人を斬ってしまう傾向がある。
「斬るなよ?絶対斬るなよ?」
「ユズ……今のは振りだ、奴を斬っていいぞ……」
「分かった……♪」
彼女はハルトに向けて、取り出した黒い短刀を振りかざした。
「うぐっ!?」
彼はその斬撃に当たっていないにも関わらず、かすり傷が出来た。
ユズの古代兵器の名は「虎金刀鯱式」という名前である、空間だろうと斬りつければその形に衝撃波を放って攻撃する武器だ。
「カズマ御兄ちゃんも……覗きやってた、だから」
カズマにも容赦なしのユズ、彼女は彼にも虎金刀鯱式振り下ろす、彼は腹にかすり傷を負わされた。
「くっ……」
この制裁が済んだ後、イヅナが入ってきた。
「何で、覗きをしたんですか?」
イヅナは怒るように言うと
「そりゃあ、俺は欲望に忠実に生きている男だぜ?
どんな目に逢おうと覗きをするのが俺ってもんよ!」
ハルトは真剣に語る、彼の眼差しや態度は、覗く事に関して真剣だ。
「それに、ある意味暗殺の修行にもなる」
ハルトの言葉にイヅナは
「え?何でですか!?」
こう返した。
「覗きってのはな、絶好の位置と気配に気付かれない事が重要だと俺は思うんだ、暗殺だって人目のない絶好の位置を探して標的を殺さなくちゃいけないだろ?
似てるんだよ、そういう意味では」
彼は以外と真剣だがイヅナは
「そうなんですか……
で、本音は?」
「そりゃあ、女の子の風呂だぜ?
俺の欲望を発散させる為に決まってんだろ?
ハッ!?」
「やっぱりですか……」
イヅナは呆れた笑いを浮かべた
「確かに人は欲望に勝てませんね……
わかりました、今日だけですからね?」
慈悲を見せた彼女だった。
「イヅナちゃん!!」
ハルトは一度でも覗きをしたこと許してくれた彼女に、感動した。