第四話「男の友情に・・・」
遅くなりました
第四話です!
よろしくお願いします!
「お、アイツ自分に備わってる能力を自覚し使い始めた!ゴリラとは違って優秀だねぇ。」
「あいつの悪意って『振られたことに対する異性への恨み』か?」
「そうだよ。なんで振られたかは知らないけどね。」
「ほう・・・。」
「あと言葉を使い始めたらプランドマリスへの条件はほぼ揃う。そしたら頼むよルシア。」
「保護だろう?任せろ。セロシアのヤツには借りがあるからな。」
「おいおい殺すなよ?使えるんだから」
「分かっているよ。なぁに遊ぶだけさ。」
「お前もいい加減『タイプブラック』を卒業できりゃいいのにな。『タイプホワイト』のが使いやすいし力も強いんだから」
「結局、クスリの名前は向こうがつけた名前で呼ぶんだな。というかしょうがないだろう?まだ完全にプランドを操れるわけじゃないのだから。たまにインパルスになりかけるし・・・。」
「っていうかさ・・・」
「?」
「自分、まだ二話三話の冒頭しか出てきてなくて本編に一回も出てないんだけどなんなのこの扱いは!しかも神父のような人って説明のみだよ!?」
「諦めろ。」
神父のような人と黒髪で剛毛な男が、そんな会話をしながら上から何かを眺めていた・・・。
「ぐわぁぁぁぁ!!!!」
進介の叫びが工場内に響く。
「あ・・・こ、これが漫画とかにある超音波って・・・やつ・・・。きっつ・・・なにもできねぇ・・ぐわぁあぁ!」
セロシアこと裁田進介は、コウモリ型マリスとの戦闘中であった。セロシアガンによる敵の弱点検索及びモードセットを行おうとした際、敵のマリスが『超音波』を使いその行動を出来なくさせ現在、何も出来ない状況である。
「ぐは!」
マリスの蹴りが腹部に入る。思わず声を漏らす。が、その瞬間に超音波はやんだ。
「こなくそ!おっら!」
今だとばかりに顔面にパンチを撃つ。が、
『キィィィィィィィイィィィィィィン!!!』
またも超音波。その攻撃は当たらずに途中でやめてしまう。
「ぐあぁぁぁぁ!!ま、んがとかよりも・・・ぜってぇきつ・・・い・・・」
頭が割れる。いくら叫んでも愚痴をこぼしてもどうにもならない。
「かは!」
進介の顔面にコウモリ型マリスの右拳が炸裂する。また反撃しようとしたが『超音波』で防がれる。超音波、攻撃、超音波、攻撃。一定のパターンだが上手く対応できない。一旦引くしかないか、と思い始めたときだった。
《ビュン!!》
なにか空気を裂くような音が聞こえたかと思うと、『超音波』が不意にやんだ。そしてその次に、
「ぐぎゃああああああああ!」
という悲鳴が鳴り響いた。進介の脳内に「?」が浮かぶ。慌ててコウモリ型マリスを見てみると、コウモリ型マリスの耳の部分に一本の棒が刺さっていた。片方に羽がついている。それはつまり、矢であった。
「うがぁぁぁあぁぁぁ!」
悲鳴が続いている。進介は矢が来たと思われる方向を見る。そこには、凛とした姿で弓を引いたあとの余韻を体現している翔介の姿があった。
「セロシアとかいうの!今よ!早く倒しなさい!」
いつからいたのか翔介の隣で身をかがめていたサツキが叫ぶ。明日美と流美の姿も見受けられた。進介はその声に頷くとセロシアガンを拾う。がしかし、コウモリ型マリスの方はすでに矢を抜き捨てていた。かなりお怒りのようだ。
「行くぜ!」
そう言って進介は、セロシアガンの銃口をコウモリ型マリスに向けるが、
『キィィィィィィィイィィィィィィン!!!』
と、また『超音波』を使われる。怒りによって最大出力のようだ。
「くっそ・・・これどうにかしねぇ・・と・・。あぁぁぁ!」
セロシアガンを落としはしなかったが、動けない。頼むように翔介のほうを見る。するとすでに引く体制に入っていた。力んでいる様子はないが力強い印象を与え、全身で引いていると言うのがひしひし伝わってくるような姿勢。まだまだかというほど伸びる。そして・・・
《ビュン!》
張り詰めた糸が切れるが如く、静寂を破って矢が発射された。その矢は一直線にコウモリ型マリスの元へ。そしてまた今度は別の耳に綺麗に突き刺さる。
「ぐぎゃああ!」
翔介はコウモリ型マリスの悲鳴に動じることなく、その引いた様子の品格を表すかのように引いた後の形を現している。一瞬見とれる。が、気を取り直す。セロシアガンをベルトに戻した。そして、
「『超音波』なんて使えないぐらい攻めてやる!」
といって右足を思いっきり踏み込んで右拳を敵の腹部に。敵は吹き飛ぶ。
「かは!」
「まだまだ!」
吹き飛んだ敵に追いつき今度は渾身の右回し蹴り。またもクリーンヒット。
「おっら!」
今度は左拳でアッパー。あごに綺麗に入る。敵はまたも吹き飛ばされる。
「ぐはぁ・・・」
抵抗の姿勢も見せない。そして改めてセロシアガンを手にとる。敵に向けた。そのとき。
「ジャ・・・ジャマヲ・・・ス・・・ルナ・・・」
「喋った!?」
「オ、オれノジャまヲ・・ス、するなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
驚く進介。その一瞬だった。上から何かが崩れる音が響く。すると目の前に影が。進介がほぼ本能で後ろに飛ぶのと、その影が右拳を繰り出すのはほぼ同じタイミングだった。
「お、お前はワシ野郎!!!」
「また会ったな!セロシア!というかワシ野郎と呼ぶな!俺の名はルシアだ!」
そう。目の前に現れたのは進介の初めての敵・ワシ型マリスであった。そして、黒野を殺した相手でもある。
「邪魔すんなこのワシ野郎!俺はソイツを倒さなきゃなんねーんだ!お前もだけどな!」
進介は恨みを噛み潰しながら言う。自分の命を助け、殺された黒野の『恨み』が進介の中にはあった。しかし、今は困っている人のために戦っている。私情で戦うわけにはいかない。それでは目的が変わってしまう。進介はそう思い、ワシ型マリスを相手にしながら、コウモリ型マリスを倒すことを第一優先にする。
「悪いがそれは無理だ!我々にも目的と言うものがある。そいつは当たりだ。手出しはさせない!それに貴様には借りがあるからな!」
ワシ型マリスはそう言うと構えを取る。進介もセロシアガンを構える。ここは戦わないわけにはいかなさそうだ。
「ルシア、行くぞ!そいつは放っておけ!あとで手は打つ!」
聞いたことのない声が響いた。
「チッ!」
ワシ型マリスもといルシアは、舌打ちをすると翼を広げ風を巻き起こした。
「うわ!」
周りの物体が飛ぶ。必死に避け見た先には、神父のような格好をした男性がコウモリ型マリスを抱えて立ち去る様子だった。
「勝負は先延ばしだ!セロシア!」
ワシ型マリスの声が響くと、あとには何も残っていなかった。
「なんなんだよ・・・」
進介の声が工場内に静かに響いた。
「そうだ!」
ワシ型マリスが去っていってから何分経ったころだろうか。虚無感から解放された進介は、思い出したように翔介たちのいた方を見る。するとすでに誰もいなかった。代わりにパトカーとFSS、さらに警官たちがいる。その一人の刑事らしき人が進介の下に駆け寄ってきた。
「怪人事件担当の刑事、戸鳴 頼寡だ。セロシア君だね?報告は受けている。ここでは人目が多すぎるから、まだ変身は解くな。君の正体は最高の次ぐらいの機密レベルだから。とりあえず状況の説明だけしてもらえるか?」
それはショートの髪に黒いスーツがビシッと決まった女性刑事であった。かなりクールな印象を受ける。
「えっと・・・」
苦戦したことや相手の能力、さらにワシ型マリスの乱入を語る。そしてかすかに見えた神父のような男のことも。
「なるほど。では逃亡中というわけだな。FSSを駆使して見つけ出そう。じゃあそのときは・・・」
「姉貴!追い出すことないだろ!僕らだって被害者なんだぞ!!」
「そうよそうよ!」
「うわぁ・・・やっぱり美人ね・・・」
「ちょーかっこよいです・・・」
頼寡の声を遮って、いきなり翔介、サツキ、流美、明日美が「KEEP OUT」のテープを無理矢理くぐってこちら側にやって来た。
(この人が噂に聞く翔介のお姉さんなのか・・・)
進介は会話内容を聞き、目の前の女刑事を改めて認識した。
翔介のお姉さん、つまり頼寡は彼らの通う栄蘭高校の卒業生で、「かなり美人だった」と前々から噂になっていたのだ。少しまじまじと見てしまう。
「翔介!あんたから話はさっき聞いた。もういいからさっさと帰りなさい。ここは子供のくるとこではない。」
「なんだよ姉貴!若干アイツに矢当てて足突っ込んだんだ!僕にだって話聞かせろよ!」
「だから危険だと言っている。あの怪人に牙を向いたんだ!危ないだろ!早く家に帰って待ってなさい。そのときに話す!」
「今でもいいじゃんか!」
一人っ子の進介にとっては、兄弟喧嘩を見ると「仲がいいなぁ」とにこやかに微笑みを送りたくなる。当人たちにとっては迷惑以外の何者でもないが。
「とりあえず出て行きなさい!おいおまえ。こいつら連れて行け。」
「はっ!かしこまりました!」
「放せよ!あーも!今話せよ馬鹿姉貴!この・・・」
頼寡に罵声浴びさせながら追い出されていく翔介とサツキ。その他の女子たちは「かっこいい人見れた~」と満足げな表情で素直に出て行った。
「うちの弟でな・・・。普段はオチャラけた感じなんだが、癇癪を起こすと小さい子供のようになる。まったく・・・」
「はは。知ってますよ。親友ですから。」
「そうなのか!じゃあまぁ・・・これからもよろしく頼む。」
「もちろんです!」
「あっちの方で変身解除してくれ。あ、もう帰ってもいい。後は任せてくれ。だけど、呼んだらいつでも戦えるように準備だけはしといて。」
「了解しました。」
進介はそういって指定された場所に行く。変身を解除した。
「・・・。くっそぉ・・・何も出来なった・・・」
拳を握り締める。そして、今さらながら涙があふれてくる。誰もいないからだろう。次は絶対に・・・という想いがこみ上げてきた。
「とりあえず『超音波』をどうにか・・・ってあ、メール十件も来てる・・・」
進介はケータイを開いた。自分の所有しているものでセロシア変身用のではない。みると全てサツキからで、
「工場地区東に来なさい!」
「怪人が出てる!」
「何してんのよ!早く!」
「来ないと殺すわよ?」
「死にたいのね?」
「あなたの覚悟はよぉく分かったわ」
「翔介はほんとにかっこいいのに、進介あんたほんとにダメね」
「そろそろ堪忍袋の緒が切れるわ」
「死ね!!!」
「中心地区の西部にある、喫茶店『ブルーメ』にきなさい。あたしの家よ。今度こそ来なかったら・・・分かってんでしょうね?」
というまぁなかなかのメールが届いていた。
「これはいかないと俺の高校生活が終わる・・・。」
最悪な未来を予想してしまった進介は慌ててバイクに乗り、喫茶店『ブルーメ』に向かった。
「こぅぉらぁしんすけぇ!!あんた馬鹿なの!?死ぬのなんなのこのチキン!骨なし!私の命令を無視するなんて!いい度胸してんじゃない!土下座よ土下座!!!」
「サツキ・・・。それくらいにしておきましょ?お客さん困ってるわ?ダーリンのことはあとで殴ればいいし!」
「それじゃダメだろ!ってかダーリンいうな!!!」
「まぁ裁田さんにも事情があったんでしょうし・・・」
「とりあえず、事の顛末を説明してあげようよ。ね?サツキさん」
「けんかは元気ねぇ・・・」
ここは喫茶店・『ブルーメ』。サツキの母親が経営する個人の店だ。現時刻午後六時。夕食のため一息つきに来た客も多い。先ほど到着した進介は、バイクを近くに隠すと恐る恐る店に入った。そしてこの有様だ。怒るサツキを周りはなだめ落ち着かせる。サツキのママは面白そうに眺めながらコーヒーを入れている。
「・・・分かったわ。じゃあ耳をかっぽじってよぉくききなさい?」
サツキは深呼吸するとそう言い、進介に先ほどのことを話し始めた。
「翔介から怪人を見つけたっていう連絡を受けて・・・」
「翔介!怪人がでたってホント!?」
セロシアが翔介と明日美を逃がした三十秒後ぐらいに、サツキと流美が慌ててやってきた。翔介と明日美は、逃げずにセロシアの様子を伺っていた。
「うん。あれ!」
遠くてよく見えなかったサツキは、持っているスマホで拡大写真を撮り言う。
「これが怪人・・・」
「あんなのがほんとにこの町にいるなんて・・・」
流美も驚きを隠せない。
「あの戦ってるのがセロシアね!」
「そう。やっぱりその場で変身したみたい。最初は普通に人だったからね。あ、ヘルメットで顔は見えなかった。」
「そこは確認しときなさいよ」
サツキが進介の頭をペチっと叩く。その後はしばらく戦いぶりを観戦しようとしていた矢先、何かがおかしいことに明日美が気づく。
「あれ・・・なんか苦しそうです?」
「ほんとね・・・。耳押さえてるみたい。」
流美も気づいた。
「耳を押さえている?もしかしてなんか超能力みたいな攻撃を受けてるのかしら?」
サツキが仮説を提唱する。
「さっきから流れてる変な不快音と何か関係があるのかな?」
翔介はサツキの考えに少し付け加える。
「・・・」
サツキが何かブツブツ言う。そして目を輝かせていった。
「きっと『超音波』よ!」
「「「超音波?」」」
「そう!相手のあの怪人よく見るとコウモリみたいじゃない?コウモリの超能力で、苦しくて耳を押さえる、そして不快音といったら『超音波』しかないでしょう!?」
これが真実だ!と言うばかりにサツキはドヤ顔をする。流美が反論する。
「でも私たちは苦しくないじゃない。おかしくない?」
「きっとあのセロシアとか言うのが私たちよりもより音を拾えるのよ。」
実際は、超音波による高速振動を対象物にのみ当てているからなのだが、サツキの一言で皆は納得してしまう。
「ど、どうします?このままじゃ負けちゃうかもですよ・・・」
明日美が不安げに言う。
「コウモリの超音波は確か口からのはず。その発射口をどうにか出来ればいいかもしれないわね。」
流美が知識を披露し、対策を言う。彼女は動物が大好きなのだ。
「何か言い手はないかしら。アイツに今の状況を話しても仕方ないし・・・。」
「じゃあ僕がどうにかしよう。」
サツキが腕組みをして考え始めたのと同時に翔介が立ち上がる。そして彼は、弓に巻き付いている保護のための布を取り外す。
「どうするの?翔介君。」
流美が聞く。
「僕が弓であの怪人の口ないしは耳を矢で打ち抜いて『超音波』を止める。」
「できるんですか!?」
明日美が聞く。
「やるしかないしね。」
満面の笑顔で答えると、翔介は弓に弦を付け、右手に引く際の保護となる手袋のような道具『かけ』をつける。そして、矢を取り出した。そして、軽く弓を伸ばしてから矢を引く構えを取る。女性陣は見とれていた。そして・・・
《ビュン!》
矢が発射される。それは怪人の耳に当たった。
「すっごいです・・・」
「翔介くんかっこいい・・・」
「でかした翔介!セロシアとかいうの!今よ!早く倒しなさい!」
サツキが叫ぶ。セロシアは応戦しようと銃らしきものを拾い構えを取るが、敵はすでに矢を抜いていた。また『超音波』を使っているらしい。
「なにやってんのよあいつ・・・。翔介!もう一本!」
サツキが叫ぶ。が、すでに翔介が引く体勢に入っていた。セロシアがこっちをみた。
《ビュン!》
その瞬間に飛んでいく矢。それはまたも耳に当たる。
「さいこー!」
「すごい・・・」
「やばいです・・・」
女性陣の感想に若干ほほが緩む翔介。攻めるセロシア。四人は応援する。そのときだった。不意に工場の天井がいきなり落ちる。
「「「キャーー!」」」
「なんだ?!」
工場の外にいたが、恐怖に女性陣は悲鳴、翔介は焦りの声を出す。皆はいったんその場を離れる。ガラガラと言う音が聞こえる。不安になりながら走る。そして、警官に出くわした。その後ろには頼寡もいる。
「話を聞かせろ。翔介!」
「え?あ、姉貴?!」
「「「お姉さん!?」」」
「FSSでお前らの事を先ほど見つけたんだ!何してたんだ!こっちへこい!」
「え、ちょま・・・えー!」
その後、頼寡に連れられパトカー近くで、状況に関して翔介とサツキが話した。明日美と流美は頼寡のクールさにやられていた。話終了後、翔介たちは追い出されそれに怒り、弓を片付けた後現場に殴りこみするも追い出され、一旦引こうということになってサツキの家兼喫茶店である『ブルーメ』にやってきたのだ。
「以上よ!あなたも探偵部の一員である以上、この現場には居合わせなければならなかったわ!弁解があるなら言いなさい!」
「えっと・・・おなか壊してて・・・」
「言い訳は無用!」
サツキの蹴りが進介の顔面に炸裂。
「り、理不尽・・・」
「そうよ!妻が危険地帯にいるのに駆けつけない夫なんて・・・!許せないわ!」
流美の拳骨が落ちる。進介はもうどうにでもなれ・・・と言う感じであった。明日美は心の中で「ご愁傷様です」と手を合わせた。翔介はげらげらと笑っていた。
「とりあえず聞き込みは途中で中断しちゃったから詳しいことは結局分からなかったけど、実際にあいつらを見れたのは大きいわ!これからも頑張りましょう!じゃあ解散!!」
サツキはそう宣言すると、部活を終了させた。あとは、ただひたすら進介をいじる会になってしまう。その途中で翔介は抜けた。
「姉貴め・・・。このまま言いなりになるもんか!あいつらのこと調べてびっくりさせてやるんだ!」
翔介は家に弓矢などの道具を置いてくると、黒い服装に着替えて怪人の出現した現場に戻っていた。懐中電灯を手にあたりを探る。すると、不意に肩に何かが置かれた。
「?!」
あわててライトを向ける。それは
「し、進介!?」
進介だった。
「お前、お姉さんに前々から対抗意識持ってるの知ってたからな。さっきの話聞いて現場に来るだろうと思ってきてみたんだ。」
進介は翔介に笑いかける。翔介はホッとした表情を見せる。
「びっくりさせんなよ・・・。ってかお見通しかぁ・・・。そんなに分かりやすいやつかな僕。」
「親友だろ。なめんなよ?」
「ハハハ。そっか。」
「ああ!二ヒヒ。」
二人は笑い合う。そんなときだった。かすかに声が聞こえてきた。
「・・・どうすればいいかわかんねぇしとりあえずあんたらに付くよ。」
「我々は同志を求めている。君の決定に私は感謝したい。」
「だけどよ。いっこだけ。あのセロシアとかいうやつは、俺に任せてくんねーか?あとは、あの矢を当てたクソガキ。」
「ほう・・・。いいだろう。では初仕事だ。やつを倒せ。今ここにいるからな。その小僧も」
(・・・え!ばれてる・・・?!)
(セロシアもここにいる・・・?)
それぞれはそれぞれの感想を思うと、慌てて逃げ出す。ここにいることがまさかばれているなんて。走る二人。が、
「みっけたぞ、弓矢のボウズぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
敵さんは二人を発見。薬を飲む込みコウモリ型マリスとなる。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!!殺す!」
完全なプランドマリスなようだ。
「逃げるぞ翔介!!!」
「うん!」
工場地区を駆け抜ける。コウモリ型マリスは追いかけてくる。走りながら進介は考える。
(このままじゃ変身できない・・・)
そう。隣に翔介がいる。レアチとの会話により、正体をばらすような行為は禁じられているのだ。
(くっそ・・・どうすれば・・・)
「あそこに隠れよう!!!」
翔介が空き工場内に盾になりそうな大型の機械を見つける。二人はそこに隠れた。
「はぁはぁ・・・。どうにかやり過ごせたら・・・。姉貴に連絡・・・したくない・・・。FSS気づくかなぁ・・・」
「なぁ、俺がアイツをひきつけるからお前は逃げてくれ。」
進介は真剣な面持ちで翔介に言う。
「はぁ?出来るわけないだろ!!!」
翔介は思いっきり反対する。
「俺は古武術やってんだ。なめるなよ。友人一人ぐらい守る。お前は逃げて助けを呼べ。話によればセロシアも近くにいるらしいじゃないか。それまでに持ちこたえれば・・・。」
「僕に君を見捨てろと?」
「違う!俺を助けるために俺をおいていけって言ってるんだ。」
翔介は思考にふける。進介は翔介が逃げた瞬間に変身しようと考えているのだ。
「どこだ!!!!!」
結論が出る前にコウモリ型マリスが来る。すると翔介は近くにあった。鉄の棒を手に取ると、隠れ場所から出てコウモリ型マリスと向き合い、構えを取った。
「おい!」
進介が思わず叫ぶ。
「これで俺はみてない。」
「え?」
進介が「?」と言う声で答える。
「君がセロシアだろ?んで、どーせ人前で変身できないみたいなお約束があるんだろ?」
翔介が進介の顔も見ずに言う。
「なんで・・・」
「なんでって。セロシアの戦いみればわかるよ。技の踏み足が強い。君の古武術の流派の特徴さ。それをあの体格で達人級に使えるのはおそらく君しかいない。サツキさんもあそこまでは出来ないしね。僕は武術オタク。だから弓道やってるし。それに目いいし。」
「・・・」
「さらに言えば親友だから、ね」
翔介はにっこり笑顔を進介に見せた。
「何をほざいてる!!!!」
コウモリ型マリスが襲い掛かってくる。それに対して間合いを計ろうとする翔介。が、コウモリ型マリスが動こうとしたその瞬間、鉄の棒が飛んできてヒット。
「ぐは!」
コウモリ型マリスは短い叫び声をあげる。もちろん、進介が投げたのだ。
「ハハハッ」
「なんで笑うんだよ。」
「そうだよな。親友だもんな。」
そして、笑いながら進介も出てくる。
「男の友情に嘘なんてつけないぜ。」
翔介がかっこよく言う。
「だけど一個間違えてるよ。」
笑いながら進介は言う。
「?」
「『人前で変身しちゃダメ』というより、『正体がばれちゃダメ』が正解だ。だから、ばれてる時点でもうお前の前で、変身できるよ。」
「そこまで分かるかよ(笑)」
笑いながら二人は並んで立ち顔を見合わせて、翔介は左拳を、進介は右拳を出して、ゴツンと合わせる。そして笑い合った。
「てめぇぇらぁぁぁぁ!!!」
コウモリ型マリスが吼える。
「んじゃ変身して倒すか。さっきの借りもきちんと返してやる。」
「なら僕は出来る限りのサポートかな。」
進介はスマホを取り出し網膜認証。そして
「変身!」
音声認証。
「STARTING ELEMENTARY MODE」
機械音と共に、セロシアエレメンタリーモード+バイクが姿を現す。
「お前のラストは・・・俺が飾る!」
走り出す進介。が、
『キィィィィィィィイィィィィィィン!!!』
超音波による攻撃。また動けなくなる。
「くっそ・・・こ・・れ・・どうに・・・かし・・ねぇ・・・と」
セロシアガンを取り出すが、どうしようもない。
「進介!その銃みたいなヤツをその怪人に当てる必要性がなんかあるのか!?」
前回の戦いでも必死にセロシアガンを使おうとしていることに違和感を覚えたのだろう。翔介が聞いてきた。進介は必死に首を縦に振る。
「じゃあそれ貸して!」
翔介は叫ぶ。その声で進介は彼の意図を理解する。
「た・・・のむ・・・」
進介はそれを翔介に投げる。翔介は無事にそれをキャッチした。
「うおぉぉぉぉぉ!」
進介は頭が割れそうなの必死にこらえるために叫びながら、コウモリ型マリスに飛びついた。行動を制限する。しかしまだ、『超音波』は鳴っている。この隙に、と翔介がセロシアガンを構える。そう。二人は、『撃つ役』と『抑える役』をとっさに分けたのだ。翔介が狙いを定め引き金を引く。それはしっかりと、コウモリ型マリスにヒットした。
「OK」
機械音が鳴る。そしてスマホ画面には『受信中・・・』との表示。翔介は慌てて進介に返す。進介はコウモリ型マリスとあわてて距離をとって受け取り、戻す。表示はいつのまにか、『検索中・・・』に変わっていた。
「大丈夫か!?」
翔介が聞く。
「あ・・・あぁ!」
進介は無理矢理答える。
「なにをしたぁ!!」
「僕も知らないよ!!!」
コウモリ型マリスの問いに生意気に答えると、翔介は落ちていた石を投げつけた。
「きさまぁ!!」
コウモリ型マリスが襲おうと狙いを定めたとき、
「complete」
という音が鳴った。スマホ画面に『ソードモード』と表示される。進介は、それをタップする。
「ソードモード オン」
すると、例によって止めてあったバイクの装甲がはがれ、マーシャルモードとは違う鎧となりながら進介、つまりセロシアの体に装着される。そしてヘルメットにも、マーシャルモードとは違う装飾がつき色が入った。そして両手に剣が転送されてくる。セロシアソードモードの完成だ。
「二刀流だ!はっ!」
『超音波』を使おうとした敵に左の剣を投げつける。慌てて避けるコウモリ型マリス。が、一気に距離をつめられる。
「お返しだ!!!」
進介はそういいながら、切りつけた。
「ぐわぁ!」
「もういっちょ!!!」
進介は先ほど投げた剣を拾うと、二つの剣で平行に切りつける。
「うぐ・・・」
「だっらぁ!」
今度は十字に切りつける。もはや敵に反撃の余裕はない。
「おらおらおらおらおら!!!」
右と左で交互に切りつける。そして極みの前蹴りを腹部に入れた。敵は吹き飛び、うずくまる。
《ピピピピピ!》
スマホから音が鳴り響く。見ると『デッドリースキル・ソード』という部分が点滅していた。
「翔介!バイクにチップがあるはずだ!それを準備しといてくれ!」
「了解!」
進介は指示を出すと、点滅部分をタップした。すると装甲が取れて欠片に分解し、進介の体の周りをぐるぐる回り始める。スマホには『両の剣を一つに』と出ている。
「こうだな!」
進介はうまく剣をあわせ一つの大きな剣を作り上げた。するとスマホに、今度は『セロシアガンを剣に装着せよ』と出る。指示の通り装着する。そして、セロシアガンの引き金を引いた。チャージだ。そしてもう一度引く。すると、体の周りをぐるぐる回っていた欠片が剣の刃にくっつき、鞘となった。
「いくぜ!」
重くなった剣を無理矢理持ち走りながら、起き上がろうとしてる怪人と距離をつめる。
「くっそなんで・・・」
コウモリ型マリスは最後につぶやく。
進介は、勢いそのままに鞘から剣を抜いた。
「いっけぇ!!しんすけぇぇぇぇ!!」
翔介が叫ぶ。
「だっらぁぁぁぁぁ!!!!!」
進介は怪人に横に一線、力いっぱい切り裂く。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!!!」
コウモリ型マリスの叫びと同時に爆発が起きる。
「翔介、そのチップこいつに投げてくれ!」
「あいよ!」
そして、その爆発のエネルギーやその他諸々のエネルギーはチップに吸収された。
「一件落着・・・か。ってかこの剣、重・・・。特に鞘・・・」
進介は変身を解いた。翔介が駆け寄る。二人はハイタッチして、握手をした。
「お疲れ、進介!」
「サポートさんきゅ!」
進介は、エネルギーを回収したチップを拾った。
「じゃあ詳しいこと話すよ」
進介は翔介に言う。
「ちょっと待って。その前に・・・」
翔介は我が物顔でニヤニヤしながら頼寡に電話した。
「怪人捕まえたよ、姉貴」
「またばらしちゃったんだねぇ、進介氏・・・。」
「すんません・・・」
「私に何も言わないで・・・。私だってサポート役なんですよ!!」
「ごめん・・・」
翌日の学校の放課後。レアチはやれやれと言う顔で、明日美はぷんぷん顔で進介を見ていた。
「まぁまぁ気づいちゃったの僕なんで・・・。許してやってください。」
翔介も謝る。
「とりあえず。これ以上秘密を知る者を増やさないでくれたまえよ。進介氏。」
「了解ですレアチさん。」
「じゃあ私も許します。仕方ないので」
「ごめん・・・」
翔介にばれたことにより、進介は実は考えた。探偵部全員にこの際明かしてはどうか、と。がしかし、サツキと流美にばれると面倒なことになりかねない。それは容易に想像できる。ので、それはやめた。
「じゃあ出会いを喜ぼう!!!よろしく翔介氏!!!」
「こちらこそ!!!!レアチさん!!!」
レアチ、翔介の二人は抱き合う。テンションはぴったり合うようだ。
「案外ナイスコンビかもしれませんね・・・」
「そうかもな・・・」
多少飽きれながら進介と、明日美は笑い合った。
「あ、そーだ。」
翔介は思い出したように言う。
「なんだよ。」
進介が答える。
「進介、剣術へたくそだな」
「なっ!」
「力いっぱい振ればいいってもんじゃないの!馬鹿なの?」
「う・・・」
「銃撃つのもだめだし・・・。僕がきっちり稽古付けてあげる」
黒い顔で翔介は言った。進介は、これから先のスパルタ稽古を想像し、黒い顔をした翔介を直視することが出来なかった・・・。
「彼はプランドマリスになったが・・・。」
「はい。初仕事にて失敗。警察に拘束されました。」
「なかなか難しいものだな・・・」
「真にその通りで・・・・。」
「次の候補は?」
「すでに目星はつけてあります。ご安心を。」
「頼むよ。」
これでほんとの下準備は整いました!
これから、一話挟んだ後にシリーズものです!
お楽しみください!




