第三話「探偵部登場!」
新キャラ登場で、わいわい明るくなってるはずです!
よろしくお願いします!
「まさか我々がマリスの存在を民衆の前に見せるのと、『セロシア』が起動するタイミングが一緒とは・・・。計画が狂いましたね。」
「まぁいいさ・・・。一番の目的は変わらないだろう?」
「・・・そうですね。というより逆に負担が減るぐらいです。しかし、我々の教団の仲間が増えないかもしれません。見境なく排除するでしょうから。」
「ふむ・・・。セロシアに対しては、無視していい。まぁちょっかいを出してもいい。ただプランドマリスに覚醒したものは意地でも排除させないようにしなさい。」
「我らの正義のため、仰せのままに・・・」
「っらぁ!」
右拳が飛ぶ。避けられる。
「よっ!」
その勢いのまま跳び後ろ左回し蹴りを食らわせる。顔面にヒット。相手は煙のように消えた。が、別の敵が来る。慌てて間合いを計る。
「った!」
敵の腕を取り、そのまま背負い投げ。あまりの素早さに、敵は受身も取れず地面に叩きつけられる。またしても煙のように消える。次。向かってきた敵は二人だ。
「うが!」
一人の攻撃を避けたところにもう一人の拳が腹部に入る。エレメンタリーモードで強化スーツを装備しているが、もう少しで溝に入るところであった。後ろに下がり距離をとる。
「こなくそ!」
一人を跳び前蹴りで吹き飛ばしたあと、その勢いのまま上から下へ殴りつけるような蹴りをもう一方に叩き落す。敵は両方とも消えた。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮とともに、今度は今までの敵とは一回り大きい怪人が現れた。間合いを取る。
「だっらぁっ!!!」
腹部を狙った渾身の右回し蹴り。が、予想外なことに受け止められてしまった。エレメンタリーモードでは力が足りないのか。
「おらぁ!」
受け止められたまま、今度は左足で跳びながら顔面にキック。不意打ちだったようでヒットする。敵は受け止めていた右足を離した。間合いを取り直す。
「がぁぁぁぁぁぁ!」
敵の右拳が飛んでくる。それを上手く掴み、背負い投げ。
「っらぁぁぁぁ!!!!」
が途中で手を離し、空中で頭を下にして地面に向かっている怪人に、今度こそ渾身の右回し蹴りを入れる。怪人は消えた。
『はい!しゅーーーりょぉーーーーーー!!!おつかれちゃぁーん!』
レアチのハイテンションな声が機械音で鳴り響いた。その声で、進介は変身を解除する。彼のいる部屋は、国立華咲科学研究所の地下3階・特別ホール。一面真っ白な部屋だ。一瞬出口が分からなくなる。が、部屋の一角が開いた。どうやらレアチが開けてくれたようだ。
外に出ると、タオルをもって明日美が待っていた。タオルを受け取って進介は汗をぬぐう。
「おっつーです!」
「言葉遣いでレアチさんに若干の影響受けてるね天崎さん・・・。」
「いやそんなことは・・・。それよりも精が出ますね!流石です!」
「ありがと・・・。いやぁでもダメだね。昔の感覚が鈍ってるよ。技を使わないって衰えるだけなのな。すっげぇ悔しい・・・。」
進介の顔に苦い表情が出る。
「取り戻せばいいじゃないですか!裁田さんなら出来ますよ!」
明日美は励ますように言う。テンションは確実にレアチの影響を受けているようだ。
「でもすごいですね。この前のゴリラ型マリスから回収したエネルギーだけで、町の破壊されたところもセロシアの装備も再構成して、さらには擬似怪人まで生み出して戦闘訓練まで出来るなんて。」
明日美が改めて感心したように言う。
「それが感情のエネルギーなのさ!」
二人の会話にレアチがやって来て割り込んだ。
「マリスになるほどの感情のエネルギーならこんなこと余裕さ。だからこそ、ノーベル賞ものだったんだ。おそらく地球全体のエネルギー問題が一気に解決しちゃうよ!だけど・・・。なんで悪事なんかに・・・。」
「まぁ考えても仕方ないじゃないですか・・・。聖野博士の居場所はおそらくワシ野郎が知ってます。プランドマリスですから。この怪人事件を追っていけばきっと捕まりますよ。まだ一人しか倒してませんけどね。」
進介が明るく励ます。「そ~だね!」と調子を取り戻すレアチ。
「そういえば、マリスになってしまった不良さんは結局どうなっちゃったんですか?」
ふと疑問を覚えた明日美。レアチは「えーとっね・・・」と思い出しながら話す。
「これから少年院行き・・・だったかな?殺してこそいないけどけが人は出したし、器物も損害しまくってたからねぇ・・・。マリスになるには強い悪意が必要なんだ。その悪意のレベルはいつかは確実に犯罪を起こす。マリスにならなくともね。だから、犯罪者なんだよ。残念だけれど・・・。」
レアチの説明を聞いて少し切なそうにする明日美。進介も同じ気持ちだ。怪物になってしまったから犯罪を起こしてしまったのではない。犯罪を起こすレベルの悪意を持っていたからこそ怪物になった。その事実に悲しい気持ちになる。重い空気がしばらく続いた。
「まぁまぁ。君たちもこの研究所のバイト扱いで怪物事件が終わるまでは給料出すって形できちんと僕らは仲間になったわけだし、警察からも公式に認定されて、胸を張って『特殊犯罪制圧員・セロシア』として戦うことになったんだから、暗い気持ちにならないでよ!未来を見ようぜい!!!」
レアチが明るく励ます。
「そうですね!」
「はい!」
各々が返事をする。すると、
「・・・。あっ!もうそろそろ待ち合わせの時間じゃないですか!?」
と明日美が言い出した。
「ああ、アレか・・・。サボっちゃダメかな。」
「だめですよぉ!せっかくのサツキさんたちが誘ってくれたんですから!」
「誘ったっていうより強制的な命令って気が・・・。」
「いいから準備してください!私楽しみにしてるんですから!」
「へぇーい・・・」
そう言って、進介は更衣室に向かった。先ほどの会話はこれから友人たちと出かける待ち合わせのことである。(どこかは聞いてないが。)進介はどうしてそうなったのかを思い出し、深く、そして長~いため息をついた。
それは明日美が転校してきた第一日目の昼休みのことであった。知り合いということもあってか、進介が明日美の校舎案内をしていた。二人肩を並べて歩く。すると、
ダダダダダダッ!
異常な速度で走る足音が廊下に響いた。「?」が顔に浮かぶ明日美。しかし、進介はその足音の主に即座に気づいた。
「天崎さん!しゃがんで!」
「え?あ!?はい!」
明日美は進介の指示で慌ててしゃがむ。すると明日美の頭上に、何らかの物体が飛来した。
「ちぃ!避けられたか!」
その物体は、明日美の目の前に着陸するとそうこぼす。
「何やってんだ龍ヶ野!初対面の人にドロップキックとかアホだろ!」
「何やってんのはこっちよダーリン!ほかの女連れまわすなんてあたしのことなんだと思ってるのよ!」
「ダーリン言うな!ってかなんだと思ってるってただの友人だろうが!」
「そんな・・・。私に向かって『ただの友人』だなんて!私の気持ちを踏みにじって・・・。」
「いやちょっと待てよ!」
「・・・状況が見えないんですが・・・。どちら様なのですか?」
申し訳ないと思いつつ、会話に割り込む明日美。飛来してきた物体は栄蘭高校の制服を着た一人の少女だった。その少女は、明日美のほうに向き直るとドヤ顔で言う。
「進介の未来のお嫁さん、龍ヶ野流美よ!!!」
「え・・・」
明日美は高校二年生にして「お嫁さん」を宣言する目の前の少女に開いた口がふさがらなかった。
「・・・か、彼女さんってことですか・・・ね?」
明日美は進介に確認を取る。
「いやだから違うんだって!そいつは去年同じクラスだった友人だよ!」
「え?そうなんですか?でも『お嫁さん』って・・・」
「そいつが勝手にいってるだけだ!」
龍ヶ野流美。昨年進介とクラスが同じだった少女。日本人離れした金髪に、少しばかり背が小さく、童顔である。全体的にカワイイの部類に入るタイプだ。明日美にドロップキックを決めようとしたあたりで、活発系女子だということも分かる。
「酷い!私は進介に助けられてからというもの、あなたが運命の人だって信じているのに!」
切実な顔で進介に言う。明日美は「助けられた」というワードから大体の状況を把握した。
「つまり、進介さんが昔私と同じように彼女を助けて惚れられてしまったと?」
「・・・まー多分そういうことかな・・・」
「たらしですね。」
「そ、そんなことないよ!」
少しにらむように言う明日美に視線をそらしつつ答える進介。するとその場にもう一人登場人物が現れた。
「やーやー諸君。騒がしいね。また進介がたらしてるのかい?」
「ちげぇよ!」
「どちら様ですか?」
明日美はその登場人物にたずねる。
「僕の名前は戸鳴翔介!進介の親友さ!」
戸鳴翔介。こちらも昨年同じクラスだった少年。背は平均。髪は短髪の部類に入るぐらいだろうか。いたずらっ子のような印象を与える雰囲気を持っている。
「親友さんですか!」
「ところであなたは誰なのよ?」
流美が明日美にたずねる。
「あ、申し遅れました!裁田さんのクラスに今日転入してきた、天崎明日美です!以後よろしくお願いします!おとといにたまたま裁田さんと知り合いになって、校舎案内してもらってたんです!」
「ふ~ん。ダーリンに手を出さなければそれでいいわ。よろしくね!」
「ダーリン言うな!」
「こちらこそよろしく、天崎さん!」
「はい皆さんよろしくです!」
「あら、校舎案内ならあたしがやってもよかったのに・・・」
またまた新たな声が乱入する。振り返るとポニーテールの少女が立っていた。
「同じクラスの・・・。すみませんまだ名前覚えてなくて・・・」
明日美が思い出そうとするが出てこない。その少女は「いいのよ」と言い、咳払いを一つすると、
「進介の・・・まぁ半幼馴染って所かしら。杜 鵑花って言います。サツキって呼んでね!」
と名乗った。黒い髪を綺麗なポニーテールにまとめ、顔は美人系。スタイルはすらっとしていてモデルのようだ。
「なんでサツキなんですか?」
明日身が尋ねる。
「私の名前特殊で、そのまま読むとサツキって花の漢字名なのよ。だからあだ名が『サツキ』なの。」
「へぇ~」
素直に感心する。
「コイツとは幼稚園のときから小学校四年生までずっと一緒だったんだ。だから半幼馴染。小4でこいつは転校していった。高校でまた一緒になるとは思わなかったよ。」
サツキに関して進介が補足説明する。
「よろしくです。サツキさん!」
「よろしくね、明日美!」
一通りの自己紹介が済んだ。すると、サツキと翔介、流美が話しはじめた。
「というか進介、あんたまたたらしてんのね」
「うちのダーリンはほんとに人気者なのよ。ほかの女に取られないか心配だわ。」
「ラノベの主人公か!っていいたくなるね。」
「まぁでも流美。とられることはないんじゃないかしら。性格はともかく顔は平凡だから大丈夫でしょ。」
「・・・たしかにそうね。うちのダーリンは顔が平凡なのがとっても残念なところだわ」
「まぁ天は二物を与えずってね。性格がラノベの主人公気質で顔も良かったらちょっと僕が許さないかな。」
「翔介、ちょっと恨んでない?」
「だってねぇ・・・」
「あ、翔介くん怖い顔してるわ・・・。笑顔笑顔!」
「そうだね。」
「うわ、進介へのラノベ主人公気質に対する悪意でいっぱいの笑顔だわ!」
「進介、親友の翔介君を怒らせるなんて・・・。将来、いや今から妻としてきちんと教育しなくちゃ。」
「厳しくしてよ、流美。コイツ昔っから人のいうこと聞かないのよ!どれだけ私が苦労したか・・・」
「僕も日々苦労してる・・・。」
「おまえらうるさぁぁぁい!!!」
「「「お前がうるさい!」」」
コントのような流れるマシンガン会話。明日美は正直ついていけない。少し苦笑する。三人同時ツッコミで一段落すると、またサツキが、今度は思い出したように口を開く。
「あ、そーだ。進介と翔介。それと流美。土曜日中心地区駅に午後二時に集合だから。」
「「「は?なんで?」」なの?」
三人の声がかぶる。
「部活よ。部活。あんたたちも一員でしょう?」
「え!?いや急すぎるだろ!」
進介が反論する。
「うるさいわね!今までちゃんと活動できていないんだから今年こそちゃんとやるの!後輩だって二人入ったんだから!まぁ土曜は二人来ないけど・・・。」
「「「おい!」」」
三人でツッコむ。
「なんの部活ですか?」
明日美はマイペースで尋ねる。
「その名も・・・探偵部よ!」
サツキが答えた。探偵部。創部五年とまだ新しい部活だ。活動目的は・・・よく分からない。ミステリー研究部と何が違うのかと尋ねられても答えられない。そんなあいまいな部活。三年生はおらず、今はサツキが部長だ。ちなみに副部長は翔介。
「あ、例の!・・・ここの皆さんが部員ですか?」
「うん。僕はもともと興味あったからね」
と翔介。
「俺は強制だよ。あの時話したよね?」
と進介。
「私はダーリンがいるから」
と流美。「ダーリン言うな!」というツッコミが入ったが誰も聞いていない。
「とりあえず何するかはそのとき言うから、ちゃんと来なさいよ。来なかったら・・・分かるわね?」
サツキは怖い顔で言う。サツキは幼馴染だけあって進介と同じように古武術を習っていたのだ。引っ越したあとは「カリ」を習っていたため、進介と張れるほど強い。
「は~い。分かったわ、サツキ。」
「了解です隊長殿!」
「へーへー。」
各々が返事をする。
「あの・・・!私も行ってもいいですか?私もどこかの部活に入りたいなとは思っていたので!」
明日美がサツキに言う。
「もちろん大歓迎!!是非来て!」
「ありがとうございます!」
こうして、裁田進介、天崎明日美、戸鳴翔介、龍ヶ野流美、杜鵑花の五人は、土曜日の午後に『探偵部』の活動として中心地区駅集合の運びとなったのだ。
研究所を後にして二人は駅につく。
「え!流美さんってあの龍ヶ野財閥の一人娘なんですか!?」
「えぇ。まぁそうよ。一応ね。」
「龍ヶ野財閥は、華咲町に莫大な金額の寄付をしてるって聞きました!」
「まぁパパがやってることだから私には関係ないんだけどね。家が家だから私、ほんとはお嫁にいけないの。だから進介には婿入りしてもらうことになるわ。」
「するか!」
一同は駅前で、こんな会話をしつつ駅の近くの喫茶店に入った。各々が注文し一息つくと、サツキが話しはじめた。
「じゃあ今日は何するかを話すわ。」
「どうぞ隊長!」
翔介が言う。彼は手に長い棒、そして方には丸い筒のようなものをしょっていた。
「あ!いいですか?翔介さんのその持ち物はなんなんですか?」
相変わらずマイペースな明日美。一同は、知り合って一週間経つのでもう慣れている。
「ああ。これは弓と矢筒。この筒の中に矢が入ってるんだ。この長い棒は弓ね。常に弦を張ってるわけじゃないから、普段はこうして弦をはずして布(弓巻)巻いて持ち歩いてるんだよ。ってかあれ?言わなかったっけ?僕は弓道部でもあるんだよ!今日はその稽古の帰り。」
「そうだったんですか!」
明日美は「おお!」という顔で納得する。
「じゃあいいかしら?じゃあ今日の活動を発表するわ。その名も・・・」
一同、生唾をごくりと飲む。
「聞き込み、よ!」
「溜める必要あったか今の」
進介が素早くツッコミを入れる。
「黙りなさい」
サツキの一言。
「はい」
素直に従う進介。力関係が非常にはっきりしている。
「最近『怪人事件』があったじゃない?正直『怪人が出ました!』とかなったらメッチャパニックになると思うの。だけどあれ、あまりに唐突だったくせに警察が全然慌ててないのよ。対応も完璧。いくら警備が売りの華咲町でもあれはちょっと怪しいって私の第六感が言ってるわ。」
「第六感ともかく、それは確かにそうだねぇ」
翔介はそう言いながら相槌を打つ。流美も頷いている。まさか『怪人事件』のことが話題に出るとは思わなかったので、明日美と進介は若干慌てている。
「極めつけは『特殊犯罪制圧員・セロシア』とかいうやつよ!あんなのあらかじめ用意されてたみたいじゃない。記者会見で『住民の皆様の安全は警察、そしてこの『特殊犯罪制圧員・セロシア』がお守りしますのでご安心ください!』とか言って『セロシア』の画像見せて色々言ってたけど、なんか事が上手く行き過ぎてるわ。絶対に怪しい!」
的確な指摘過ぎる。案外頭の切れるやつだ。進介は心の中でそう思う。進介と明日美は、聖野博士や神野博士の失踪事件、そして研究所でのレアチの話によってある程度理解していることだから何も疑問に思わないし、むしろやるべきことがあるから事件事態あまり気にしていないけれど、一般住民からしてみたら確かに不思議いっぱいの事件である。
「安全はきっと大丈夫だわ。警察があれだけ言っているし。問題は事件の顛末よ。私たち住民にはそのことについて絶対に知る権利がある!そこで私は気づいたの!」
ドヤ顔でみんなの顔を見るサツキ。翔介、流美は話に聞き入っている。
「いまこそ我々栄蘭高校探偵部が!このことについて真実を掴み、皆に伝えるべきだと!依頼者はこの私。これから一年掛けてこの謎を調理していくのよ!」
「「おぉ!さすが姐さん!」だわ!」
翔介も流美もノリノリだ。明日美と進介は顔を見合わせて苦笑する。サツキが続ける。
「で記者会見のときの映像見てると、あのゴリラっぽい怪人もこのセロシアとか言うのも、桜川に急に現れたみたいなの。どこからかやってきたわけではなく、ね。ここから考えられるのは、怪人もセロシアもその場の人間が変化したかもしれないという可能性。わざわざ桜川にテレポーテーションみたいなことをこの二人がしてもなんも意味がないし、むしろ警察側のセロシアにとっては被害が拡大する可能性もあってそれはあまり考えられない。」
「つまり、聞き込みで目撃者を探して実態を掴むのが今回の活動・・・?」
「その通りよ流美!流石ね!聞き込みの情報で、その場の人間が変化したのか否か。変化したのならそれはどんな人間だったのか。を、中心に調べる!あとでその情報を統合してどうなのかを検証するわ!さてみんな、異論はないかしら?」
(あのとき私素顔で思いっきり町の損害物の再構成してたんですが・・・。やばくないですか?)
と明日美は心の中で思う。実は三日ほど前、明日美も進介も珍しく真剣にレアチにこんなことを言われていた。
『いいかい?君たちはこの事件に関わっているということを誰にも言ってはいけないよ。君たちはワシ型マリスに顔が割れている。なぜだかわかんないけどもうベルトは狙ってこない様子ではあるけれど、いつ殺しにくるか分からないんだ。下手に周りに明かせば巻き込む危険性もある。本当に仕方ないときだけ話しなさいね。』
つまり、知り合いには秘密だ、ということだ。しかし、案外頭の切れるサツキが本気になって調べようとしている。若干ピンチだろうか・・・?
「「なーい!」」
「おっけ!じゃあこれから桜川の方にいってそこらへんに住んでいる人にざざっと話を聞きにいくわ!いいわね?レッツゴー!」
そういって会計を済ませて喫茶店を出る。明日美と進介は同時にため息をついた。
「うう・・・。ここはどこなのでしょう・・・。明らかに住宅街じゃない・・・。工事地区ですかね・・・。なんでこう私はドジなのでしょうか・・・。」
桜川は中心地区の東のはずれに流れている。五人はそこにつくと、各自で分かれて聞き込みを開始した。が、明日美と進介は顔が割れている可能性があるので、注意しつつ集合時間まで各自で聞き込みをせずに暇を潰すことにした。その中で明日美はまたもやどこか良くわからない場所に出たのだ。
「これってまた似たような展開とかあったりしませんよね・・・」
前にあったことを思い出し、不安になりながら来た道を戻ろうとするが、イマイチ覚えているところに出ない。どんどん分からなくなる。そんなときだった。たまたま人を見つけた。声をかける。
「あ!すみません!桜川まで戻りたいんですけどどうすればいいですか?」
返事がない。もうすこし近づいて再度聞く。
「すみません!桜川まで戻りたいんですけど・・・」
やっと振り向いた。その男は明日美を見る。すると、様子が変わってきた。
「おんなぁ・・・。あんな酷い振り方しやがってぇ・・・。こぉろぉす・・・・!ころすぅぅぅぅぅう!!!!!!」
その男の周りに黒いオーラのようなものが広がる。
「これってまさか・・・・マリス!?」
黒いオーラはその男を包み、形を形成していく。
「ぐぁぁぁぁぁっぁあぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その咆哮とともに怪人が出現した。姿はコウモリの二足歩行のようだ。コウモリ型マリスだ。
「なんでこうなるんですかぁーーー!」
明日美はダッシュで逃げながらポケット、そしてカバンの中からケータイを探す。進介に連絡するためだ。先ほど道に迷ったときに使おうと思ってなかったのだが、見落としかもしれないと思いもう一度探してみてみる。コウモリ型マリスは追いかけてきていた。まだ足取りは悪い。
「やっぱりないですぅーーー!!」
明日美の声が響いた。
一方そのころ研究所では。
「あれ?このケータイ・・・。明日美君のだろうか?」
レアチがケータイを拾い、そうつぶやいていた。そのとき警報音が鳴る。マリスの発する独特の電波をキャッチしたようだ。
「進介氏に連絡しないと!」
河原で寝ていた進介のケータイに連絡が入る。
『レアチだよ!マリスが出たみたいだ!すぐに向かってくれ!住所はメールで送る!』
「分かりました!」
通話終了。その後、進介はケータイで何かしら操作する。すると、バイクが転送されてきた。進介がレアチに頼んで、ある番号に電話を掛けるとバイクを転送するシステムを追加してもらったのだ。その番号は『463』。手をかざしてエンジン起動。ヘルメットも転送されてくる。
「さぁてと、本番だ!」
意気揚々と進介はバイクを走らせた。
「あう!」
逃げていた明日美は転んでしまった。またドジだ。その隙に怪人が距離をつめてくる。
「や、やばいかも・・・です・・・」
後ずさりしながら命の終わりを感じたそのとき、明日美は自分の体が宙に浮くのを感じた。そのまま怪人との距離が広まる。
「!?」
見えたのは、長い棒。明日美は、片手に長い棒を持ちながらお姫様抱っこをされて逃げていることに気づく。つまり、助けてくれたのは・・・。
「翔介さん!」
「危ないところだったね・・・。ってかあれが怪人か・・・。怖かった・・・。」
翔介は冷や汗をかきながら明日美を抱えて逃げる。空き工場と思われるところに逃げ込んだ。そこで明日美を降ろす。息を整える二人。
「はぁはぁ・・・。なんか、工場の人が何か知らないかなと思ってこの辺で聞き込みしてたら・・・、聞き覚えのある声でなんか言ってるのが聞こえたから・・・来たら君が襲われていた・・・。」
「・・・ほんとに・・・助かりました・・・。ありがとうございます・・・」
お礼を言う。翔介は笑いながら返す。
「女性は守らないとね。あ、サツキたちに連絡しなきゃ!ビッグニュースだもの!」
「そうですね・・・」
(きっとレアチさんが進介に連絡しているはずです。前に感知できる装置があるって言ってましたから。特に強い感情なら見逃さないって。彼はまだ見たところインパルスマリス。感情が強いはずですから、絶対に大丈夫・・・なはずです)
明日美は心の中でそう思う。翔介は電話で話しているようだ。
そのとき。
バッコン!!!という音とともに先ほどのコウモリ型マリスが入ってきた。工場内なので逃げ場がない。
「うがぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!」
咆哮する怪人。万事休すか!?二人がそう思ったときだった。
パリン!!!!!というガラスが割れる音とともに、バイクが工場に侵入してきた。そのバイクはそのままコウモリ型マリスに突っ込み跳ね飛ばす。
「大丈夫か!?」
それはもちろん進介だった。安否を問う。ヘルメットで声がこもっているので翔介には中身はばれていない様子。
「セロシアさんですか!?どーにか大丈夫です!」
「ここは任せて!逃げるんだ!」
翔介の問いかけに素早く答え、逃げるように促す。明日美にも気づいたようだが、今は何も話せない。
「頼みます!」
翔介はそう言うと、明日美を連れて工場から逃げていく。
進介はヘルメットをはずすと、スマホを取り出す。アプリをタップした。網膜認証をクリア。
「お前のラスとは・・・俺が飾る!」
音声認証もクリア。
「STARTING ELEMENTARY MODE」
機械音が響く。光の破片が転送され進介の体に装着。セロシアエレメンタリーモードの完成だ。
「いくぜ!」
そういって、バイクからセロシアガンを取り出しスマホでスキャンさせる。そして、ルックアップモードを選択して、相手の弱点検索をするのだ。が、スキャンし終わったそのときだった。
「キィィィィィイィィィィイィィィィィィイィィィイィンンンンンン!!!!」
という甲高い音が鳴り響く。その音は進介の頭に直接響く。
「な、なんだこれ・・・あたまがぁぁぁ割れるように・・・・いた・・・あぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりの衝撃にセロシアガンを落としてしまう進介。そのまま頭を抱え地面に悶える。どうやらコウモリ型マリスが何かをしているようだ。このまま弱点検索が出来ない・・・。でなくば戦いの方針が立てられない。というかその前に、エレメンタリーモードで戦うことすら出来ない・・・・。いきなりの絶体絶命のピンチか!?




