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第一話「二つの出会い」

こんにちは

早速第一話です


説明がウザイとは思いますが、なにとぞお許しください


それではどうぞ!

(あ・・・うぅ・・・私の新しい生活が今日、この町で始まると言うのに・・・、なんなんでしょうかこの状況・・・。)

「お嬢さん何歳?高校生だよね?」

「俺らと一緒に遊ばない?なんかこの町初めてっぽいじゃん?案内してあげるよ?」

夕暮れ。人通りの少ない裏道にて、少女は絡まれていた。学ランを着崩して、いかにも「ワルです」と主張しているような格好をしている二人の不良に。少女の顔には「危険だ。逃げ出さないと」という、困惑と危機感が渦巻いた表情が浮かんでいる。不良はそんなの気にもしない。というか気づいてない。

(どうしてこうなったんでしたっけ・・・。)

少女は内心泣きながら、ここまでの経緯を思い出していた。



「華咲町郊外地区東~、華咲町郊外地区東~。郊外地区モノレールをご利用のかたはお乗換えです~」

そのアナウンスとともにモノレールから人がどんどん降りる。時間は夕方。そのため学生が多い。駅は、屋外で、なおかつモノレールの駅とあって地上より高いところにある。そのため風が少し強い。舞い込んだ桜の花びらが、駅構内に散っている。

「やっと着きました・・・。ここが今日から私の町ですか・・・。」

 少女は、モノレールから降りるとそうこぼした。少女の姿は制服。手にはかばん。黒髪を肩まで伸ばす清楚形美人だ。きょろきょろ辺りを見回している。どうやら新しくこの町に引っ越してきたらしい。少女は、ほかの乗客と一緒に、エスカレーターで下に向かった。改札をぬけた先に広がるのは、マンションや団地などの住宅街。あとは、ほんのすこしだけコンビニがあるのみであった。

「ふぇ~。ほんとに家しかないです・・・。さすが華咲町。『ネオシティ計画』を実行してるだけありますね・・・。」

少女が引っ越してきたこの町・華咲町は今、「ネオシティ計画」の絶賛進行中である。「ネオシティ計画」とは、今実現できる全ての技術を結集させて、次世代のモデルとなる町を作り上げる計画のことだ。それが進行中のためにこの町は今、上から見て三層に分かれている。既に工事が完了して、最新設備を投入した近代化の町が広がる中心地区、その周りに以前の住宅街を取り壊し最新設備に作り変えている工事地区、そしてさらにその周りにまだ取り壊しの進んでいない以前の住宅街が広がる郊外地区である。少女が今いるのは「郊外地区東。」という駅。つまりまだ開発されておらず、住宅街が残る一番外側の地域の東側だ。

「お店もほとんどない・・・・。買い物は中心地区でしとかないとですね。」

 駅周辺を歩きながら少女はこうつぶやいた。現在華咲町では、「ネオシティ計画」の一環で、学校や図書館、ショッピングモールやその他諸々の施設は、現在全て最新設備に作り直され、中心地区に移設されている。そのため郊外地区には公共施設や娯楽施設などの建物がなく、住宅街のみが広がっているのだ。そして中心地区から郊外地区にかけては、モノレールが通っている。中心地区の中央にある中心地区駅から、方位に沿って八方向に郊外地区に向けて路線が延び、さらに中心地区と郊外地区にはそれぞれ、地区を一周するモノレールも通っている。たいていの人は郊外地区にすみ、学校や仕事場のある中心地区や工事地区にこのモノレールを使って出勤通学している。少女もそのたいていの人の中の一人になる予定だ。

「ブォーーーーン」

「え!?む、虫ですか!?」

不意に、耳につく機械音が聞こえてきたために、少女は少しびっくりした。慌てて振り向くと、そこにはラジコンで飛ぶヘリコプターのようなものが飛んでいた。

「あ、これが噂の防犯システムのFSSですね・・・。ハエかと思った。音どうにかなりませんかね・・・」

と言うと、ホッと息をなでおろした。FSSとは[Flying Security System(飛行型警備装置)]の略である。華咲町に導入された最新設備の一つで、小型の飛行型のラジコンにカメラが取り付けてあり、機械の監視によって犯罪を抑止する装置だ。町中のいたるところを飛んでおり、防犯に務めている。かなり効果があり、華咲町は犯罪発生率がぐんと下がった。

 少女は新居に向かわなければならない。ルート検索のため、スマホを取り出す。が、残量残り一パーセント。旅路の暇つぶしで使いすぎたらしい。仕方ない、と電源を切る。

「テキトーに歩けばどうにかなるでしょう!結構大きいマンションのはずですから。地図もありますしね。」

そう言って、意気揚々と歩き出した。



・・・そして現在に至る。どうやら少女は、工事地区の方に近づいてしまったようだ。郊外地区からの工事地区の方面には、取り壊し予定の建物が多い。そのため人も少なくなる。その場所を不良が根城としていて、そこに足を踏み入れてしまったのだ。

(FSSは気づいてくれないんでしょうか・・・。困りました・・・)

「いいでしょ?ねぇ?名前なんていうの?」

「遊ぼうよ。イロイロ教えてあげちゃうよ?」

不良の下賎な言葉が少女に降りかかる。少女は異性の男二人に絡まれていると言う事実にだんだんと恐怖してきていた。これから何をされるか分からない。

「黙ってる顔もかわいいねぇ」

不良の下賎な声が続く。今、誰も助けてくれない。私が自分でどうにかするしかない。怖い・・・・。けど動くしかない。お願い!動いて足!

足が動き出す。恐怖との葛藤に少女は勝利した。ローファーの固い部分が不良の脛を思いっきり蹴飛ばす。

「うぐわぁ!」

汚い悲鳴を上げる不良。さらに少女は持っていたかばんを振り回した。今度はかばんの底の硬い部分がもう一人の不良の顔に直撃した。

「いだっ!」

別の不良も悲鳴を上げる。少女はその隙に逃げ出した。

「くっそぉ!調子に乗りやがって!!」

「ぶっ殺してやる!」

慌てて追いかけようとする不良。少女は必死で走る。適当に道を曲がる。だんだんあたりが暗くなってきた。行けども行けども裏の道。逆に危ない方へ走っているんじゃないか。そう少女が思ったとき、何かにぶつかった。

「キャッ!」

その拍子でこける。

「大丈夫?」

ぶつかった対象から声が聞こえてきた。見てみると、第一ボタンは開けながらも学ランをちゃんと着て、リュックサックを背負っている少年だった。

「てめーこら!その女渡せぇ!」

いつの間にか不良二人が追いついていた。おびえる少女。少年は少女ににっこりと笑顔を向けて言った。

「よく戦ったね。後は任せろ。」

その笑顔は、見たものを安心させる優しいものだった。そして少年は自分の後ろに隠れるよう少女に促す。先ほどの笑顔が信頼感を与えてくれた。少女は黙って少年に従い、隠れた。

「なんだてめぇは!正義の味方ぶるつもりか?あぁん?」

不良の一人が、進介と向き合い怒鳴った。進介は背負っていたリュックサックを地面に置き、はき捨てるように答える。

「正義の味方なんかじゃねーよ。彼女はテメーの恐怖に戦い、そして勝って反撃をした。つまり、彼女は何かにすがらずに戦える人間だ。なら彼女には、助けられる権利がある。俺はその権利を使って彼女を助ける。」

「は?権利だぁ?なに言ってるかわかんねぇんだよ!!」

不良は大振りで進介の顔面めがけて拳を放った。当たれば致命的なダメージがきそうな攻撃だ。

「!?」

しかし、倒れたのは不良のほうであった。声もない。気絶したようだ。なぜ攻撃した不良が倒れたのか。それは、少年がそのパンチを見切り、腰を落としてかわしながら逆にパンチを不良のみぞおちに決めたため、だ。まさに一撃必殺。

「そんな大振りのパンチなんぞ、赤ん坊でも避けられるぜ。」

少年は倒れている不良にそう返す。

「喧嘩負けなしの北斗がやられるなんて・・・。」

もう一人の不良は、目の前のことに恐怖している。どうやら倒れた不良は、相当強いやつだったようだ。

「お前は戦うのか?」

怖気づいているもう一人の不良に、そう声をかける少年。が、

「くっそぉ!覚えてろよ!」

というと倒れている不良を抱えて逃げてしまった。

「なんだよ根性のねーヤツ・・・」

少年はそう言うと、リュックサックを背負い

「これで片付いた。大丈夫?」

と少女に声をかけた。少女はしどろもどろしながら礼を言った。

「あの・・・ありがとうございました!助けていただいて・・・」

「いや、君が恐怖に勝って逃げるために戦ったからだよ。俺は当然のことをしたまで。」

「・・・どういうことです?」

「実は君が絡まれてたとこ見たんだよ。俺、戦って何かしようとしないヤツ嫌いでさ。君もそうかなって思ってスルーしようと思ったんだけど抵抗したじゃん?」

「ええ。まぁ・・・」

どうやら脛を蹴ったことを言ってるらしい

「だから『この人は弱くないんだな』って分かって、助けにきたんだ」

「そ、そうですか・・・」

よく分からない人です、という顔で苦笑いする。その後不安げな顔で

「華咲町はスッゴイ都会なのでそういうのも少ないと思ってたんですけど、郊外地区はそうでもないんですね・・・」

と本音を漏らした。少年はまぁしゃーないという顔をしながら喋る。

「まぁあんなヤツラなんてほんの一握りだよ。基本的には少ないから安心して。でも最近物騒な事件多いからな、この町。」

「みたいですね・・・。」

 最近華咲町では、殺人、放火、強盗などの騒ぎがなぜか最近になって多発している。それまでは最新式の設備による監視(先ほどのFSSなど)と捜査で安全な町で、特に中心地区はその技術の結集の賜物だった。しかし実のところ、そういった事件が一番起きているのは多いのは中心地区であった。安心がこの町の最大のウリだったのだが、最近はそうとはいえなくなってきており、華咲警察署、とくに中心地区を見回る警察隊通称CEPは町の威信にかけて監視などを強化している。

「大変なときに越してきちゃったね・・・」

「まぁ仕方ないですよね・・・。あ、それよりお強かったですね!何かしてらしたのですか?」

先ほどの動きがあまりにも達人級だったため、少女が思わず聞く。

「んーまぁ。一応、親父が古武術の師範代でさ。小さいときから稽古してたんだよね。」

「そうなんですか!すごいですね・・・。」

納得と言う表情で満足げに笑う少女。その姿に、少しドキリとする少年。花が咲く笑顔とはまさにこのことを言うのではないか、というほどの笑顔だったからだ。しかし、すぐに少女の笑顔は申し訳ないという顔に戻る。

「あ、ごめんなさいお時間とらせちゃって・・・。本当にありがとうございました!じゃあ私はこれで・・・。」

そういって去ろうとする少女。その背中は少し不安げだ。先ほどの花のような笑顔が、まるで枯れてしまったかのような表情も見せる。先ほど絡まれたのだから無理はない。反撃こそしたが、まだ少し怖いのだろう。見ていていたたまれなくなる。

「送るよ。まだ怖いだろ?」

少年は思わずそう声をかけた。

「いや、これ以上迷惑かけるわけには・・・」

少女は断る。が、少年は引かなかった。

「別に親は忙しくて基本家にいないし、俺はいくら遅くなってもいいから大丈夫だよ。俺は裁田進介。きみは?」

「えっと・・・天崎明日美です。じゃあよろしくお願いします・・・。」

少女・天崎明日美はそう答えた。

「おっけ。天崎さんね。よろしく。」

少年・裁田進介はそう言って手を差し出す。明日美はその手をおずおずと握り握手をする。友達契約成立だ。

「じゃあ行こうか。」

「ごめんなさい。ありがとうございます。」

二人は歩き出した。



「まぁ俺、一応なんか『探偵部』とかいう活動不明の部活に入ってるんだけど、三年生いなくて俺ら二年生で今新入部員集めてるんだ。でさ、同級生の部長が新入生部活紹介で『我々探偵部は!』みたいな感じで軍隊っぽく言っちゃったもんだから、新入生苦笑しかしなくてさ・・・。」

「それは苦笑しますね・・・。一緒に舞台にいたら恥ずかしそうです・・・。でも、その部長さんは恥ずかしがらずにビシッ!と言ったんですよね!ある意味かっこいいです!ちょっと会ってみたいかもです!」

「いや、これが女王様で横暴で大変なんだ。統率力はあるんだけど・・・。」

「そういう人って案外カリスマ系ですよ・・・!ってあ!ここです!やっと着きました・・・。」

雑談をしながら二人は歩いていた。そして、とあるマンションの前につく。日はもう沈みかけている。

「本当にありがとうございます!」

明日美は心からお礼を言った。

「まぁなんかあったらまた頼ってくれていいよ。さっき渡したメアドにメールでもくれればいいからさ。」

少しテレ気味で進介はそう答える。

「はい!頼りにしますね!」

すっかり打ち解けた明日美は気軽にそう言う。

「じゃあ・・・」

「さ、裁田進介君・・・だね?」

明日美が別れの言葉を言おうとしたそのときだった。ボロボロの姿になった黒スーツの男がよろけながら声をかけてきた。

「誰ですか・・・?ってか大丈夫ですか・・・?」

心配そうに声をかける進介。

「お知り合いですか?ち、治療しましょう!救急箱多分部屋に届いているはずですから・・・。」

荷物は引越し業者に既に頼んで入れておいて貰ったらしい。心配そうに黒スーツの男を覗き込む明日美。

「いやいいです・・・。」

男はそう言うと、手に持っていたトランクを進介に預けた。

「さ、裁田進介君・・・。こ、このトランクに入ってるものは君のものだ・・・。絶対に手放さないでくれ・・・!これがなんなのか、そしてどう使うのかは、このトランクの説明書に書いてある・・・。力を持つものには責任が伴う。これで人類の希望となってくれ・・・」

「は?えっと・・・どういうことですか・・・?」

進介の脳内は?マークでいっぱいだ。

「とにかくお願いしますよ・・・。では・・・」

そう言って黒スーツは来た方向へよろけながらも走っていった。

「ちょっとまってくれよ、おい!」

進介は、慌てて追いかけ走っていった。進介は、目の前のことに夢中で、明日美を忘れてしまっているようだ。

「え?裁田さん!?」

進介は走っていってしまった。完全に置いていかれてしまった明日美は、

「もーなんなんですか!」

と言いながら、進介を追いかけ始めた。彼女だって、気になるのだ!



「ちょマジで待てよ!」

追いかける進介。ボロボロの癖に黒スーツは存外早い。しかしそのときだった。

上から何か黒い影が見えたかと思うと、黒スーツの男の動きが不自然に止まった。よく見ると、背中から鋭利な爪のようなものが突き出ている。その瞬間、血しぶきが舞った。進介の顔にかかる。誰がどう見ても、その血の量は即死であった。進介はその様子に立ち尽くす。殺された・・・のか?目の前でいきなり人が死んだ、一瞬のうちに。声もなかった。進介には目の前の出来事が信じられない。いみがわからない。ひざが笑っている。吐き気が襲う。必死で耐えながら前を見る。ピクリとも動かない黒スーツの男。そのとき進介の目にその影の姿が映る。そこに視線を移した。月がその影を照らす。それは人間とはまったくかけ離れている姿であった。二足歩行のようだが、大きな爪を持ち、顔はワシのような形をしている。翼も生えているようだ。見たことも、聞いたことも、存在さえも知らない。それはもう、「怪物」という二文字でしか、表現できなかった。

「任務完了。あとはトランクを回収するだけだが・・・、コイツ持ってないのか?情報では確かにこいつが持ち出したはずなんだが・・・」

日本語を喋りだした。喋れるのかコイツ・・・。進介の脳は、キャパオーバーでパンクしそうだ。すると怪人は、視線を進介に移した。今、進介の存在に気づいたようだ。

「あ、お前見たな?ん?ってかそのトランク・・・。それは『セロシアシステム』のだな。なぜお前が・・・?まぁいい。事情は分からないが、それを持って帰るのが指令だ。少年、申し訳ないが死んでもらう。見られたしな。そしてそれもいただく。」

怪人は何か言っている。が、あまりの出来事に足がすくみ動けない進介。目の前のにいるのは人間じゃなくて、しかも人間を殺して、今度は俺を殺そうとしている・・・?進介は古武術を習ってはいた。が、心が恐怖に負けてはそんなもの何も意味を成さない。ここで死ぬんだな・・・。そう思ったときだった。不意に、後ろから石が飛んでくる。それは、進介の顔の横を通り抜けて、怪人の目に直撃する。

「うぐっ!」

不意打ちで思わず目を瞑る怪人。

「裁田さん!早く!」

明日美の声が響く。石を投げたのは明日美のようだ。その声で目を覚ます進介。丸腰で敵の恐怖に負けた俺には助けられる権利などないのに、明日美に助けられた。それは自分の決める、弱いやつと同じ行為。自分が助けたくない、戦わないやつと同じ行為。いやだ。そんなの嫌だ。ここで反撃すれば、俺は弱くない!進介はひどく自分を恥じた。そして意を決し、トランクで怪人の顔面を力いっぱい殴りつけた。

「がはぁ!」

目を瞑っていた怪人は避けられずもろに衝撃を受ける。その瞬間に逃げる。

「ありがとう天崎さん!とりあえず行こう!」

進介は明日美の手をひいて走りだした。



「はぁはぁ・・・大丈夫?天崎さん・・・」

「え・・・。えぇ・・・。一応・・・」

どうやら、怪物は巻いたようだ。無我夢中で走っていた二人は、工事地区の中にある廃工場に逃げ込んでいた。どうやらこの辺は工事地区の中でも未開発なところらしく、人影はまったく見られない。

「はぁ・・・。さっきのはなんだったんでしょう・・・・」

「・・・はぁ。わ、わかんない・・・。」

困惑した表情で進介は答える。そして、息を整え疑問を提唱した。

「ていうか何であのときいたの?家に帰ったんじゃ・・・?」

「心配だったからですよ!」

明日美は即答する。が、進介は『わからない』と言う顔で

「え、でもあんなわけの分からない展開に首を突っ込まなくても・・・。」

と言った。わけのわからない展開とは、不意にトランクを渡した男を追いかけたことだろう。だが明日美は、

「だって気になったんですもん!それに友達が何かに巻き込まれそうになってるんです!力になって助けたいと思うのが普通でしょう!?現に追いかけたことで、この町の最初の友達を無事に助けられました!」

とすこしお怒りモードで言った。進介は、

「・・・君は『人助け』っていう正義の正当性を信じてるんだな。」

進介はなぜか、翳りのある声と表情でつぶやいた。明日美は「?」という顔をする。進介の言葉の意味がうまく理解できなかったようだ。

「気にしなくていいよ、うん・・・」

進介はまたもや翳りのある声で言う。明日美はそれ以上聞かないことにした。そして疑問を投げかける。

「そういえば、黒スーツの男の方は結局どこへ行かれたのですか・・・?」

明日美のその言葉で、目の前で人が死んだこと、そしてその恐怖を思い出した。

「・・・死んだよ。あの怪物に殺された。俺の・・・目の前で・・・!」

進介は床を殴りつけた。目には涙が浮かんでいる。明日美も、進介の足元にあった影がさっき黒スーツの男だったことを進介の言葉で察し、顔に黒い影が見える。沈黙が続いた。そんな雰囲気を破ろうと、明日美が口を開いた。

「で、でもどうにか一矢報いたじゃないですか・・・。と、とにかく警察を呼びましょう・・・。」

明日美はケータイを取り出す。開くと、もちろん充電切れであった。

「充電切れでした・・・。どうしましょう・・・。裁田さんのケータイは使えませんか?」

明日美は困ったと言う顔をしながら聞く。進介は深呼吸をした。気持ちを入れ替える。

「・・・隠れている以上下手に動かないほうがいい。そうだな・・・。なにかできることは・・・。俺のかばんには教科書ぐらいしか入ってないし・・・。あ、そういやなんか・・・このトランクがどうこう言ってたような・・・。システムだのなんだのって・・・。調べてみようか。」

そういって進介はトランクを開く。気のまぎれさせるためにも何かしていた方がいい。二人はそういう思いもあってトランクの中身を出した。そこにはスマートフォンと、男の言っていた取扱説明書が入っていた。取り扱い説明書には「セロシアシステム」と書かれている。

「スマホ・・・ですか?」

「多分・・・。」

「説明書になんか書いてあるのでは?」

「えっと、『セロシアシステム・・・マリスを撃退するための装置』・・・なんじゃこりゃ?マリス??セロシア?」

「マリスって『悪意』って意味ですけど・・・。セロシアはわかんないですね・・・。ほかにはなんかないんですか?」

「えっと『起動方法・・・1、専用スマートフォンを起動。登録してあるセロシアアプリをタッチする。2、内臓マイクによる音声認証及び網膜認証を行う。3、認証がクリアされたら起動完了。』だって。」

「やってみたらどうですか?」

興味津々と言う顔で明日美は促す。だいぶ気はまぎれているようだ。進介は「ああ」と言ってスマホを手に取る。電源ボタンらしきところを押し、起動させる。無事に使えるようだ。基本的なアプリはそろっている。が、一つだけ見たことのないアプリが。『セロシア』と書かれている。進介はこれだとばかりにタップする。するとマイク画面に切り替わった。

「喋れってことかな?」

「そうだと思います。起動方法に音声認証もあるみたいですから。」

その言葉に頷き、進介は「あー」と声を出す。すると、「WAIT」と言う表示が出たかと思うと今度はカメラ画面に変わり、目のスキャンを求められた。瞬きをしないように注意してスキャン。そしてまた「WAIT」の表示。今度は長い。そして、「RADY?シンスケ」という表示が出現した。下には「OK」と「NO」の選択肢がそれぞれ用意されている。

「俺を認識してる!?」

「説明書には、『最初に使う際には、通常使用時と同様の操作で初期設定を行い、本人確認をする』と書いてあります。」

「つまり、さっきのは初期設定か。ここでOKすればこいつは俺のものになって、他の人には使えないと・・・。」

「みたいです。でも不思議ですね。裁田さんと認識するなんて。この小さなスマホの中に、この世界の人々全ての音声認識と網膜認証の情報が入っているのでしょうか?」

「確かに・・・。なんか怪しいな・・・。これはほんとにOKしてもいいのか?」

悩んでいたときだった。

「どこだぁぁぁ!!!」

先ほどの怪人の声が聞こえた。どうやらすぐ近くにいるようだ。二人に気分の悪さと恐怖が戻る。先ほどの不意打ちで怪人も怒っているようだ。

「天崎さん、これ『撃退する装置』って書いてあったよな・・・?」

進介が軽く震えながら聞く。

「ええ・・・。でもアイツがその『マリス』かどうか分かりませんよ?」

明日美も震えながら答える。

「でももしかしたら使えるかもしれない・・・。これ使ってどうなるか分かんないけど、あいつが狙ってるものだから多分、あいつの気ぐらいは引ける・・・はず。」

進介は作り笑顔で言う。

「た、戦うんですか!そんなこと・・・!」

出来なるわけがないという顔をする明日美。しかし進介は弱弱しい声ながらもはっきりとで言う。

「・・・逃げないで戦うのが俺の主義なんだ。仮に死んでも、戦えば少なくとも弱いやつじゃない。」

「でも・・・。」

「あの不良から逃げ出そうと一歩を踏み出した君には分かるはずだ。出来るかできないかじゃない。やるかやらないかなんだ。」

相手に恐怖していた。でも誰も助けてはくれない。だから自分で動いた。出来るできないじゃなかった。やるやらないだった。そのときの自分の感情がよみがえる。裁田進介は今あのときの自分と同じように動こうとしている。明日美は頷くしかなかった。進介は明日美の様子を見て覚悟を決める。少し不安はあるけれど、使えるものがあるなら使って、怪物に一矢報いた明日美にある『助けられる権利』を俺が行使する。そして、守り救う。進介は、使えることを祈り「OK」をタップした。もとのホーム画面に戻るスマホ。それと同時に廃工場に怪人がやって来た。

「見つけたぞ・・・。コケにしやがって!殺す!」

ここには出入り口は一つ。搬入口のようでかなり大きめで、シャッターは開いているがそこには怪人が仁王立ち。倒す、もしくはここから怪人を出さない限りは逃げられない。進介は相手の恐怖に飲まれないように深呼吸をした。そして、

「簡単にやられてたまるかよ!」

そう自分に言い聞かせる勢いで叫び、『セロシア』のアプリをタップした。すると、スマホは音声ではなく、先に網膜認証を求めてきた。スキャンする。「ピッ」と言う音の後、今度は「喋ってください」と表示した。進介は何を喋るか一瞬悩む。が、決めた。記憶の片隅に残る、何かの漫画で言ってたセリフを叫ぶ。

「お前のラストは・・・俺が飾る!!」

スマホはそれを聞き、

「OK.STARTING ELEMENTARY MODE」

という機械音声を出す。すると同時に、進介の周りにいくつもの光の破片が現れた。それが進介の体に付着する。そして光った。思わず明日美と化け物は目を瞑る。そして次の瞬間、そこに現れたのは・・・。ヘルメットのようなもので頭と顔が保護され、銀と黒で構成されたスーツを身につけた人間。そしてさらにその横に、先ほどまでなかったごつい装甲をつけたバイク。

「これがセロシアシステム・・・?それでこのバイクはテレポーテーションしてきた・・・?」

明日美は驚きを隠せない。進介は右手を握り締めてみる。普段より何倍もの握力になっていた。

「強化スーツの転送と装備、そしてこの装甲バイクの転送がこのアプリの機能か・・・!」

機能を理解した進介。彼の目には先ほどの恐怖の色はない。覚悟の色が宿っている。スーツの強化能力が、進介の心を奮い立たせているようだ。怪物がその様子を見て言う。

「お前が・・・それを使う資格者なのか・・・。だが、命令は『システムを奪うこと』だ。敵がそれを使うなら、倒して奪い取ってやる!」

「こちとらコイツのおかげで百人力だ!命を狙われてる以上、受けて立ってやる!」

進介は既に、いつもの調子を取り戻していた。そして、怪物に対して構えを取った。         



いかがだったでしょうか?

まだ起動させたばかりですね(笑)


ここからどう展開していくのか

是非楽しみにしてください!

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