きっといまなら
ところどころカットしております。
多分コレでR指定は必要なくなる・・・はず。
このまま寝てしまえたら格好もついたんだろうが、現実はそう上手くいかなかった。
「えっと・・・あっくん」
腕の中のユカちゃんが僅かに頬を赤らめる。
「・・・ゴメンナサイ」
謝るしかなかった。哀しいかな、オレの下半身がすっかり元気になってしまったのだ。
愛しい彼女を腕に抱いていて、髪の毛からはお風呂上りのいい香りなんかもしていて、そんな状態で素直に寝られる男がいるだろうか。いやいないだろう。
「その、今更ながら申し訳ないんだけど・・・」
「・・・いいよ。もともとそのつもりで来たんだし」
ユカちゃんは苦笑してオレに身を任せた。その言葉に甘えてオレはユカちゃんの肩を押し、再び彼女を見下ろす姿勢になる。何かもう、聖母か何かに見えてくるくらいユカちゃんは綺麗だった。
「ユカちゃん・・・」
精一杯優しくしよう。せめて、彼女が怖くないように。
二度、三度と口付けていくうちに、指は勝手に頬からうなじの方へと滑り降りていく。
「・・・あ」
その指が鎖骨をなぞったとき、ユカちゃんが僅かに声を上げた。
「あの、服・・・」
「ん、どうする?」
まだお互い服は着たままだった。このままオレが脱がせてもいいけど、嫌なら別に自分で脱いでも構わない。
「・・・あっくんの好きな方で」
ここで殺し文句ときた。いいのかな、誕生日なのにオレばっかりいい思いしてる気がする。
「じゃあ、脱がすね」
正直に言ってしまえば着たままの方が好きだったりもするんだけど、最初からそれじゃ引かれてしまう気もしたから言わないでおいた。
声を堪えている唇を指でなぞると、ユカちゃんは責めるような目つきでオレを見上げてきた。
「声、我慢しないでよ。オレはもっと聞きたい」
そう囁けば素直に開かれる唇が愛しくて仕方ない。そこに一つキスを落としてから、オレは小さな耳に唇を寄せる。
「くすぐったいよ、あっくん」
ふ、と息を吹きかけるとそう言って身を捩るが、そうやっていられるのは今のうちだ。
「ちょっとそれ、何か・・・んっ」
舌を溝に沿って這わせるうち、笑い声がだんだん色を帯びてきた。わざとぴちゃぴちゃ音を立てて耳穴を攻め、時折べろりと舐めあげる。
反応が返ってくるのが嬉しくて、オレは耳から唇を離した。
「あっくん・・・?」
ユカちゃんの頬はすっかり紅潮していて、白い身体もうっすらと赤みを帯びてきていた。それがオレの手によるものなんだって思うと、何ともいえない征服感が心を満たす。
「ユカちゃん」
「なに?」
「気持ちよかった?」
尋ねるとユカちゃんは拗ねたようにそっぽを向く。
「・・・分かってるくせに」
「分かんないよ。オレ馬鹿だから、ちゃんと言ってくれなきゃ分かんない」
尚も答えてくれないので不安になってくる。
「・・・嫌だった?」
するとユカちゃんは勢いよくかぶりをふった。
「そんなことない!」
「よかった。なんか無理やりしてるみたいになったら嫌だからさ」
こっちは加減が分からないのだ。知らないうちに傷つけていたりすることもあるかもしれない。
「嫌だったらすぐ言ってね。すぐやめるからさ」
「・・・うん」
返事を確認して、オレは行為を再開した。
「可愛い」
自然とそんな言葉が漏れる。おかしいな、チャラ男はもう卒業したはずなのに。
「あ、あっくん・・・」
ユカちゃんは恥ずかしそうに眉根を寄せた。その仕草がまた可愛くて、自分を抑えるのに必死になる。
そうして気付く。
「あっくん・・・?」
「えっと・・・ユカちゃん、ごめん」
「どうしたの?」
「オレ、何も用意してない・・・」
「用意って?」
オレが下半身を見下ろすと、ユカちゃんは合点がいったようでおもむろに自分の鞄を指差した。
「一応、持っては来たけど・・・」
「え?でも何で」
言いかけて気付く。そうか、ユカちゃんは最初からこのつもりで旅行に来ていたんだっけ。
「ねえ、あっくん」
ユカちゃんは潤んだ瞳でオレを見据える。
「付けなくても、いいよ?」
それは途切れかけの理性を断ち切るには十分な台詞だったけれど、オレは堪えて首を振った。
「・・・そういうわけにはいかないよ。そんな無責任なことは出来ない」
するとユカちゃんはそっと身体を起こした。
「そうじゃ、なくって」
そのままオレの手を握る。
「――私は、赤ちゃんが出来てもいいよ。あっくんがいいって言ってくれるなら」
「ユカちゃん・・・!」
気が付くと、その小さな身体を抱き締めていた。
「どうしよう・・・どうしよう、ユカちゃん」
子供が欲しいって言ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。また込み上げてくる熱いものを拭うこともできず、オレはぼろぼろと涙を零す。
ユカちゃんは馬鹿みたいに泣きじゃくるオレをあやすように背中を擦ってくれる。それがまた嬉しくて、涙が止まらなくなった。
「ユカちゃん・・・結婚、しよう?」
一生この子の傍に居たい。今度こそ本気でそう思った。
きっといまなら、ずっと躊躇していた言葉を伝えられると思った。
「オレ別に給料高くないし、多分いっぱい苦労かけるけど・・・でも絶対、幸せにするから。だから結婚しよう、ユカちゃん」
こんなところで裸で抱き合って言う台詞ではない気もしたけど、でも言いたかった。今すぐにこの想いを伝えたかった。
肩に温かい雫が降り注いで、彼女が泣いているんだと気付いた。
「ユカちゃん?」
「あ・・・えっとね、そんな風に言ってもらえるなんて思ってなかったから、びっくりして・・・」
ユカちゃんはオレから身体を離すと、涙の浮かんだ顔で微笑んでみせる。
「・・・ありがとう。すごく、嬉しかった――こちらこそ、よろしくお願いします」
ちょこん、とユカちゃんが頭を下げて。
オレは涙を拭って、もう一度彼女を抱き締めた。
「本当、もう・・・大好きだ、ユカちゃん」
――俺たちがめでたく結婚したのは、それから2年後のことだった。
END
この二人を書いてるとすごく和みます。京一とモリだとずっとハラハラしっぱなしだし・・・。
末永くお幸せに~