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下らない話

内容がとても、非常に、薄いです。ご注意ください。

無駄に長いですが、お付き合いいただけたら幸せです。

ジャンルはよく分からなかったのでその他にしました。

どうして、こんな事になっちゃったんだろう……。


少女が、眼前の扉を見つめながら考える。

もう七日だ。一週間もその姿を目にしていない。

ここで扉を見つめる時間も、日に日に伸びてきていた。

今も、そのまなざしには、願いが込められている。


一日、二日なら、これまでにも何度かあった。

だから、始めは気にしていなかった。

放っておけばいい、その内――そう思っていた。

でも、三日、四日と過ぎると心配になってきた。


普段は気にする素振りも見せないくせに。


そうは思うのだ。

何せ、関心を寄せず、見止めても一瞬、そういう関係だ。

だからといって、これ程に長く目にしないなんて、これまでには無かった。

心配は当然。

大事なのだから。

姿を見せて欲しい――その思いは、痛みを伴って彼女の中で強くなって行く。


私が、悪いんだ……。

他に、原因はないから。


しかし、彼女にわかるのはそこまでだった。

何が原因なのか。

心が不透明で推測するしか無い様に、彼女は原因を明言することが出来ない。


この事を友人に相談するのは、事が事だけに憚られた。

今回の事、彼女は自身で解決するのだと決めていた。

その為に、思い付く限りの事はしたのだ。

彼女自身としては結構強引と判断できる方法も取った。

しかしその結果は、扉の前で思い悩む彼女の姿が物語っている。


あと、出来る事――でも、もう、声をかけるくらいしか……。


何度もその考えには囚われた。

行き詰った時にいつも考える。

だが、それが実行されたことは、未だ無かった。

彼女は思う。


言葉に、一体どれだけの意味があるんだろう。

それで解決するなら、最初からこんな事にはならなかったはずなのに……。


その思いの他にも、言葉にしない事には理由がある。

彼女には何と声をかけたら良いのか、それがわからなかったのだ。

仮に、かけるべき言葉が見つかったとして、どうだろうか。

彼女は、答えてくれる事も、応えてくれる事も無いと知っていた。

言葉に意味は、無いのだから。

その事実は、彼女自身にとっても望ましいことだったのかもしれない。


もし、答えが返して貰えても――きっと私が困る。

どうしたらいいのか、わからなくなっちゃう……。


そこまで考えて、溜息を一つ。


――それにしても、今日も駄目だった、のかな?


もう、ここを離れなければいけない時間が近付いている。

だがその時、突如として予感めいたものを彼女は感じた。


あれ? 今日は、いつもと……違う?

出て来て、くれるのかな?


その直感と思いは、彼女をその場に留めるには十分なものだった。

さらに、予感が強い確信へと近付いて行く。

些細な変化だった。

だが、彼女はそれを敏感に感じ取り、それが希望となる。

今までとは違う。

そこに希望が膨らむ。


ああ、やっぱり出て来てくれる。

私にはわかる。

なら、今日は、他の日がどうであっても、今日だけは、声をかけよう。

その事を、咎める人もいないよね?


先まで、声をかける事に価値を見いだせていなかった彼女だ。

だが、今は考える。

何と声をかけるのか。


『ありがとう!』

……違うかな?


一つ目の言葉を、自身で違うと否定する。

彼女は確かに色々としたが、効果は無かったと信じている。

やれた事と言えば、限られた時間の中で扉の前に居続けた事くらいだ。

彼女が何をしたからという訳では無く、出るべくして出るのだ。

それなのに、お礼をいうのは、おかしいのではないかと考えた。


じゃ、じゃあ、えっと……。

『もう! こんなに、待たせて!』

……これは違う。

怒ってどうするの……。


二つ目も、否定する。

出て来てくれるのは、本当に嬉しい事だ。

そうであるのに怒るのは、違う。

誰が見ている訳でもないが、その姿は傍目に滑稽に映るのではないか?

そう結論付けて、再び言葉を探す。


そうなると、もっと別の……。

『良かった』

うん、これはいいかも。

一番、違和感が無い言葉だと思う。


三つ目にして、彼女は己が欲する言葉を遂に手に入れる。

言葉にするべきは、彼女の感謝ではなく、彼女の安堵である。

そして遂に彼女は、待ち焦がれたその時を迎える。


「良かった……」


彼女は、トイレの個室の中で小さく呟いた。

下らない話にお付き合いいただきありがとうございました。

楽しんで貰えたかは謎ですが、クワガタニシがアホである事は理解していただけたのかもしれません。

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