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キウイの狩りのやり方

掲載日:2026/06/25

 怒りの沸点。なんていうけれど。

 怒りは融点。だと私は思う。

 電気炉の中で沸々と沸く、溶岩のような金属。

 私はそれを、あの子の鍵の鋳型に、憎しみと一緒に、流し込む。

 



 キウイ。

 キウイは飛べない鳥だ。

 キウイは走れない鳥だ。

 キウイは泳げない鳥だ。

 キウイは私のあだ名だ。

 名付けられてから、二度。クラス替えをしたから。

 私とあの子のことを知らないクラスメイトは。

 ずんぐりむっくりで、小さくて、足が太くて。

 だから私のあだ名だと、思っている。

 本当は。

 ちょっと、顔に、産毛が生えていたからだ。

 言われるまでは、全然。気にもしていなかった。

 鏡をよくよく見ると、確かに顔が、ふうわりしている。

 鼻の、下も。少し浅黒い。

 たった。

 それだけのこと。

 それだけのことで。

 今まで、小さな島だったけれど。

 楽しく過ごしていた私の。

 周りは、天敵だらけに。なってしまった。

 晴天の霹靂。

 人口降雨のキャッツアンドドックス。

 マタタビ科のキウイにはしゃいだ猫に。

 瞬く間に急に扱いが犬に。

 お手。

 お座り。

 待て。

 伏せ。

 ちんちん。

 給食のキウイの皮を、口に詰め込まれたり。

 毛虫を飲み込むような、吐き出したくなる芸から。

 逃げ出す翼を、私は持たなかった。




 心の中を。

 冷たくして。

 固く凍らせて。

 耐えて耐えて。

 でも。

 ちょっとずつ。

 溶けていって。

 お腹の中に、水銀のようなものが溜まって。

 ぐづぐづぐづぐづ。ぐつらぐづら。

 もう、噴火する。といったとき。

 あの子の家の、鍵を拾った。




 鍵の鋳型をとって、そこに心を流し込んでから。

 私の体は軽くなって、空も飛べるかも。

 と思った。

 拾った鍵は、学校の落とし物入れに入れて。

 私は、ただ。時を待った。

 待った。

 待った。

 待った。

「今日さ、うち、親いないからさ、泊まりに来ない?」

 キウイの名付け親が、その子分たちに。

 そう言ったのを、私は聞き逃さなかった。

 きた。

 きた。

 きた。

 きた。 


 深夜零時。

 私はあの子の家の前に来た。

 まだ、窓から灯りが漏れていたから。

 また、待った。

 窓。から灯りが消える。

 また、待った。

 待った。

 待ては、私の得意の芸なのだ。


 クサキモ眠る。丑三つ時。

 私は、護身用の懐中電灯を点す。

 タクティカルライトと呼ばれる、重くものものしいそれは。

 あまりに眩しすぎた為、私の薄い上着を透して使う。

 文字通り。懐中電灯は、懐の中。

 私の心も。もう。少し。明るくなっている。

 あの子の家の扉の前。

 私の心を固めた鍵が。

 心の扉を開く感じがした。

 がちゃ。と、なるべく小さな音で。

 家の中には、誰の声もしない。

 真っ赤な生地の隙間から、溢れる光を頼りに、獲物を探す。

 見つけた。

 皆。

 眠っている。

 私は、そっと、明かりを消す。

 キウイ。

 飛べない鳥。

 走れない鳥。

 泳げない鳥。

 キウイ。

 産毛の生えた果物。

 キウイ。

 私は、懐中電灯を振り下ろす。




 キウイは夜行性の鳥だ。


 


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