第四幕:探偵のお仕事
やあ、君。探偵の仕事について考えたことはある?よく探偵は正義の立場に立つイメージがあるけど、実際にはどうなんだろうねーー。
第三幕では、ホームズも一緒になって、ワトソンとイギリスのイースト・サセックス州にあるクロウバラのウィンドルシャム邸に行く事になった。
彼らが汽車からでたら、なぜか霧が出てきて彼らの視界を覆い隠そうとする。
まるで、決められた道しか歩けないような、おかしな天気が彼らを襲った。
「気味が悪いーー何か恐ろしいことでも起きそうだーー」とワトソンが歩いている。
「あれがウィンドルシャム邸かーー」とホームズが指さした。
その屋敷は丘の上にたてられており、霧の隙間から差し込む光で浮かび上がっていた。
「メアリーの言った通りだね。あそこに、彼女の息子がいるーー」とワトソンは言った。
ホームズは屋敷をジッと眺めて、周囲の霧を見通そうとした。
このまま霧が晴れるかも分からない。
「この街はーーいつも、こうなんだろうかーー」とホームズが何か言おうとしたが、ワトソンが止めた。
「知りすぎたらダメだ。そう約束した。ーー彼女の息子を止めることが優先だ。
成功しても、失敗しても、
ボクらはーーその後はーーここから立ち去らなきゃならないーーすぐに」
「ーーきっと誰かが仕込んでるーーワトソン。少しだけでも、道を逸れよう。調べてみないか?」
「この霧だーー危険だよ」
ワトソンから言われて、ホームズは肩をすくめた。
彼らは屋敷まで歩いた。
ワトソンは不安が募ってきた。
全てが何かおかしかった。
自分が気軽に了解したのは、間違いだったのかと。
でもメアリーの、悲しそうな瞳が彼を突き動かした。
彼女は悪魔ではない。
そう言い聞かせながら、屋敷の正面門にたどりついた。門はお城を守る塀のように屋敷を囲んでた。
高さは子ども約二人分の高さだ。
ワトソンは門の隙間越しから屋敷を見た。伝統的なイギリス・マナーハウス風。L字型の2階建て邸宅。広い庭園。名士が住む家に相応しかった。
「誰かを呼ばなきゃーー」と門番小屋があったから、ワトソンは行こうとした。
「待て、ワトソン。この霧は僕らの役にたつぜ。ーー忍び込もう」
忍び込む?
ワトソンはホームズの方を向いた。
「なんだって?」とワトソンは聞き返した。
「これから門をこえて、屋敷の周りを探索するんだ。チャンスがあれば、屋敷の中にも潜り込むつもりだーー」
ワトソンは信じられなかった。
よりにもよって、犯罪みたいなことを目の前でやろうと提案したからだ。
「ホームズ。ーーボクらは、交霊会を止めに来ただけだーーそんな泥棒みたいなマネ、認められないーー」と彼は首を振った。
「別に君に認められなくていい。」とホームズは言った。
「危険だ。撃たれるかもしれないーー」
ワトソンは、ホームズの肩を掴んだ。
「わざわざ客を呼んでるんだ。撃ち殺すわけにはいかない。ーー安全だ」とホームズは笑った。
「だとしてもーー」とワトソンは不満げにいった。
「ーーわかった。屋敷の中には入らない。外から調べよう」とホームズは折れた。
「ーーそれじゃあ、行こう。君、四つん這いになってくれ。すぐに済む」といいながら、ホームズは意地悪な笑みを浮かべた。
ワトソンの頬が激しく引きついた。
なんて可哀想なワトソンだろう!
そしてホームズたちは門をこえ、屋敷へと近づいて行った。
(こうして、第四幕は霧の門で幕を閉じる。)




