第二幕:優しさと現実
やあ、君。母親ってのは不思議な生き物だ。全ての母がそうだとは言わないがーー、子どもの事をずっと考えている。ーーきっと父親よりもね。
第一幕では、ホームズの所に、メアリーという謎の依頼人が現れた。
彼女は息子アーサーの交霊会をやめさせたがっていた。
ホームズは、
しばらく彼女の目を見た。
自分でバカ息子にビンタをかませばいいじゃないかと言いたそうにしていた。
ーー彼なりの皮肉を込めたセリフでね。もしも、そんな事を言ったら依頼者は立ち上がって、部屋から出ていったかもしれない。
そして二度と戻ってこないんだーー。
でもホームズの隣のワトソンは、そんな事を絶対にさせない。
ホームズはその事を、
一秒もかけずに判断した。
代わりに、ホームズはーーこう言った。
「なるほど、それは重症な息子さんをお持ちだ。幸いここには、医師の免許をもつ友がいます。少し話させて、ぶちこむ病院でもきめましょう」
メアリーの頬がぴくついた。
白い肌に浮かぶ桃色の健康的な色に赤みが強まった。
「まあ、ホームズさんたらーーご冗談がーー少し過激なことーーほほほ」
ワトソンがホームズに耳打ちする。
「ーー君は、口を開くな。ボクがしゃべる」とワトソンが満面の笑みを浮かべた。
「メアリーさん、お気を悪くさせて、申し訳ない!あの、彼は別にーーそんな本気で思ったわけじゃないのでーー」とワトソンが弁解しようとした。
「僕はマジだぜ」とホームズがちゃちゃをいれた。
「なんですって?」とメアリーはホームズを睨みつけた。
ホームズも睨みつけた。彼は彼女を依頼者として見てない。
子守りを押し付けようとするクソババア。それが、メアリーへの評価だった。
「ーーホームズ。ここはボクに任せてくれ。寝室に引っ込んでてくれ」
「ーーヴァイオリンでも弾いていいか?
不愉快で、たまらない。」
「寝室に行け!後で話すから」とワトソンはイラつく。
「ーーあなたたち、一緒の寝室を共有してるの?」とメアリーは目を見開く。
『まさか!』とホームズとワトソンの声が重なった。
ホームズが彼の寝室に引っ込んだ後、
ワトソンはメアリーと話をした。
「息子さんは、もともと交霊会に興味があったんですか?」とワトソンが言う。
「どうでしょうかーー論理的な子ですから、そういうのは信じてなかったかもしれませんーーでも、戦争で愛する者を失った時ーー悪魔が囁いたのかもしれませんねーー」
「お気持ちわかりますーー」とワトソンが口を開いた時、部屋の外からホームズの笑い声が聞こえた。
「医者以外に、お祓い師も必要だなんて、大した息子だーー放っておきたまえ。甘やかさず、速やかにお引き取り願おう。最後には息子の臨終の祈りまでも任せられるぞーー」
「ホームズ!彼女は、ボクに任せろ!君の手助けはいらない!一切!
だから、黙ってろ!」とワトソンは怒鳴った。
メアリーは後悔していた。
なぜ自分が、ここに来たかを考えてた。
でも心配そうに、見つめてくるワトソンを見て微笑んだ。
「あなたは、彼と違っていい人ねーー」
するとワトソンは頬を赤らめた。
そして、がっしりとした身体をモジモジさせて、メアリーに頼んだ。
「で、メアリーさん。費用の方なんですが、少し前払いでーーお願いしますーーその持ち合わせがーー」
メアリーの頬が、ピクッと引きつった。
(こうして、第二幕は優しさで幕を閉じる。)




