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ファウスト〜子育て交霊会の幻視〜ホームズ  作者: ヨハン•G•ファウスト


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1/8

第一幕:謎の依頼者

やあ、君。


今回の物語は、ファウストが天に召された後の話だ。

彼の壊れた魂は、

次の誰かに受け継がれた。

もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。


ボクが誰かって?

語り部ファウストさ。

ヨハン・ゲオルク・ファウスト。

君と共に物語を見つめる者であり、

君の友だ。


今度のファウストの魂を引き継ぐ者がわかった。19世紀後半のロンドンのベーカー街の下宿の一つ、221Bにいる彼を、ファウストを見に行かなきゃいけない。

物語は進むんだ。


いつも通りさ。


夕方の221Bのリビングルーム。

そこに二人の紳士がいた。

中年の男がソファに腰かけていた。

体つきは頑健として、首周りは筋肉によって膨張していた。口髭は整えられており、目は知性にあふれていたが、今は悩み事があるのか光が暗くかげっていた。


彼の名はジョン・F・ワトソン。

Fとはファウストだ。

この秘密の名はボクらだけが、

知っている。

本当は「ヘイミッシュ」だって?

そんなのーーまあいいさ。


もう一人の男は窓際に立っていた。

黒髪短髪に灰色の瞳、顔つきはワシ鼻に角ばった顎が目立った。かなり痩せて身長は高い。彼は少し前のめりになってた。彼はシャーロック・ホームズ。ワトソンの相棒で、ものすごくイヤな男だ。

「金のことは気にするな」

ワトソンは、ホームズを睨む。

そして下唇を噛んだ。

「そうはいかない。ボクらは対等なんだ。君が支払いを肩代わりしていたら、ボクは君の側にはいられない。」

彼らは家賃の件で話し合ってた。

ワトソンはーー数カ月分、ホームズに肩代わりをさせていた。

なぜかって?

無職だからさーー医師としての仕事はまだできない。戦争で負った心の傷は目には見えない。

「ーーそういうものかな」とホームズは、せせら笑う。

「こう言う時には、ワトソン君、得したと喜ぶべきなんだ。君に好意を持つ男が、君に支払う」そう言いながら、彼は目を細めた。口の端が片方だけ吊り上がった。

「ーー悪くないだろ」

その時、ワトソンの目がギラっと輝く。

「いいか、ボクを、娼婦みたいに、言うな!」

ホームズは肩をすくめて、窓の方へと注意を向けた。毎月、このやりとりだ。彼もウンザリしてたーー。


「おい、来いよ、ワトソン」とホームズは突然に声をあげてた。ワトソンは、のそりのそりと窓に近づく。

彼も外を覗き込んだ。

「あちらの年配の女性が見えるかい。ダークブラウンの髪の白いベルベットドレスの女だ。瞳は灰色。周囲を見まわしてる。もの珍しいのかーーずいぶんと小柄だ。こども?いや、年配の女性だ。間違いない。

歩き方が活発ーーしかも優雅だぜ。こんな街中に来るような格好じゃないーーなんだ?よく分からない。彼女はくたびれてるーーまるで遠くから来た旅人のようにーーそれにしては服がキレイだ。」

やがて彼女は彼らの視界から外れた。ーーしばらくすると、彼らの前に彼女が依頼者として現れた。


ホームズとワトソンはソファに腰かけて、彼女を見つめた。白いベルベットドレスを着た女性の言葉を待っていた。

「あの子は悪いとは思っちゃいないんです。ただーー昔からガンコなところがーーお恥ずかしながらーー」と、女性は口を開いた。

「わたしはメアリー・ジョセフィン・エリザベス・フォイラー。ある歴史作家の母親です。避けられない出来事があり、わたしとあの子は会えない状況になりました。詳しくは話せない決まりとなっています。

どうか、あなた方もーー詳しく知ろうとはなさらないでくださいーー」


ホームズはーーそれを聞くと、より彼女に興味を持ったのか、ジロジロと無遠慮に観察しようとした。

「よすんだ、ホームズ。彼女はさぐられたがってないーー」とワトソンはホームズに耳打ちした。

「失礼、メアリーさん。

職業柄、人の秘密を知るのが僕の仕事でしてーーで、依頼内容を詳しくお聞きしたいーー」

すると彼女は困った顔をした。

「ホームズさんに、相談したくてーーその息子がーーあの子が大変なのでーー」

「ーー大変ね。

ふむーー、相談内容はーーある程度は、なんでも。

僕の鋭い知性が役立つならね。

ーーただし占いや降霊術、妖精に関する相談は受け付けない。

あれは知性のない遊びだ。

ーー夢中になるヤツの気が知れないーー頭が飾りでなきゃ、くだらないお遊びだと、わかりますよーー」


すると女性は、困ったように俯いた。


「ホームズさん。

頼みたいのは、まさしく降霊術や妖精の類いなんですーー」

ホームズの目が険しくなった。

「息子の、アーサーに交霊会をやめさせてほしいんです。

それもーーなるべく早くーー」


窓にかすかに差し込んでた太陽の光が完全に途絶えた。

部屋の暖炉の火はゆらめき、

影は静かに踊っていた。


(こうして、第一幕は交霊会によって幕を閉じる。)


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