善か悪か
映画「善か悪か」
道子。17歳。女性。
蔵田。38歳。男性。
蔵田との援助交際がバレた道子は山で毒のある実を食べて自殺をする。
隠蔽された遺書にはこう書かれていた。
蔵田さんとは体の関係はありません。
家に居場所がなく、学校でいじめられていた私にとって
蔵田さんは私の唯一の心の支えでした。
蔵田はまだ幼かった娘をアレルギーで死なせてしまった過去があり、妻と娘、親族に絶縁されてアパートに一人で暮らしていた。
それは半年前、蔵田がご飯を作った日。
事件は起きた。
娘は今までアレルギーを起こしたことなどなかったが
ある日突然、玉ねぎアレルギーになったのだ。
生まれつきのものではなかったから誰も分からなかった。
だが、自分が作った料理で娘を死なせてしまった自責の念から蔵田は妻に別れを言い渡した。
妻はそれを引き止めようとはしなかった。
親戚の人達からの罵声が相次いでいたからだ。
"お前の旦那は人殺し"だと。
そのことがあり、妻も精神的に追い詰められていて旦那を庇う余裕などなかった。
そんな中、海で死のうとしていた時に道子と出会った。
道子もまた海に飛び込もうとしていた。
彼岸花が咲く、雨が降る午後7時頃の話だ。
蔵田は道子の自殺を阻止しようとした。
蔵田「君はまだ若いじゃないか」
道子「命に年齢なんて関係ない、今死にたいから死ぬ、それだけよ」
蔵田「君が何を背負ってるかは分からないが、俺は君に死んで欲しくない」
道子「どうして?」
蔵田「娘の紗南に似てるんだ」
道子「でも、それって娘に似てるってだけでしょう?」
蔵田「娘は、俺が殺したも同然だ」
道子「あなたが?・・・とてもそうは見えないけど」
蔵田さんは自分の過去について話し始めた。
話しているうちに私も自分の境遇をポツリポツリと話初めたの。
家に居場所がないこと、学校でいじめを受けていること。
蔵田さんはうんうん、って頷きながら話を聞いてくれた。
それから蔵田さんとは時々会って話をするようになった。
なるべく人がいない場所でって言ってカラオケとか個室の居酒屋とか。
会う度にお小遣いをくれるの。
これで欲しいもの買っておいでって。
会ってお金もらうって援助交際みたいって思ったけど
お金なかったから普通に助かるしありがたかった。
大雨の時はラブホテルにも入った。
いつもお小遣いくれるから
私はてっきりそういうつもりなのかと思っていたけど
蔵田さんは何もしてこなかった。
蔵田「さぁ、もう寝なさい」
私を子どもをあやすみたいにベッドに寝かせると、蔵田さんはソファで眠り始めた。
私はちょっとムッとなってソファに向かった。
蔵田さんの横に座って体にかかってたジャケットの中に潜り込んでみた。
誰からも温もりを与えてもらったことなんて無かったからその温かさが妙に心地良かった。
そして朝になって蔵田さんが驚いてソファからずり落ちるまでは
ずっと隣で眠っていたのね。
誰かの正しさなんていらない。
二人にとっての正解がそこにあったから。
それでいいの。
それから何度か会っているうちについにクラスメイトにバレてしまった。
学校行事でキャンプに来ている時だった。
たまたま、近くに毒性のある実が成っているのを見つけた。
私はすぐに蔵田さんにメールをした。約束通り。
"今から死にします、後から来て"って。
私たち、約束してたの。
死ぬ時は連絡をすること。
どちらかが死ぬ時は同じ日に死のうって。
道子は植物が好きで調べていたからどれが食べれるか毒性があるかよく知ってた。
道子は誰にも気付かれないようにこっそりと隠れて実を取りに行く。
食べたことがなくて味が分からなかった為、舌が拒絶反応を起こして反射的に吐き出してしまうかもしれないと思った道子は実を取って喉の奥に突っ込んだ。
そしてクラスメイトたちと合流するが
すぐに道子は目眩と胃痙攣を起こし、痛みでうずくまった。
呼吸が浅くなっていき、
病院に運ばれた時にはすでに心臓は止まっていた。
蔵田はそのメールを読んだ後、すぐにアパートで首を吊って自殺した。
道子の後を追うように。
キース「なんつーか、罪を償わずに死ぬなんて狡いよな」
ヘレン「正義感の強いキースらしい意見だな」
ガーネット「私はそこまでは思わないけど、生きて幸せになって欲しかったなぁ」
マーシー「俺もそう思う!楽しいこと探してこーよ!って思っちまった」
ヘレン「しかし、彼女の真実が隠蔽されたようにこの世にはそんなことが沢山あるんだろうな」
マーガレット「そうね、見えているものだけが正義とは言えないのよねきっと」
ヘレン「褒められた関係ではないにしろ、お互いに確立された関係だったのだろう、周りからは悪だと罵倒されていたがな」
マーガレット「ええ、何が正しいかなんて本人たちにしか分からないわ」
マーシー「むっずかしいよなぁ」
ガーネット「でも、珍しいわね、マーシーがこういう暗い感じの映画を見たいって言うなんて」
マーシー「彼女が私は見るのいやー、ラブロマンスがいいーって言うからさ、
俺も最初は見る予定じゃなかったんだけど告知見てたら気になっちゃって、何がって言われると俺もよく分かんないんだけどさ」
キース「理由は特にない感じか」
ガーネット「いいんじゃない?理由なんてなくたって」
キース「まぁ、そうだな」
マーシー「いつもおんなじような映画ばっかり見てるからさ、たまにはいいかなーって」
マーガレット「そうね、私もそういう時あるわ、
いつも似たようなストーリーばっかりじゃ新しいアイデアは生まれないものね」
マーシー「そう!そうなんだよ!マーガレットは話が分かるなぁ、ゲーム作るのも新しいアイデア必要でさ」
マーガレット「私もよ、イラストを描くのに新しいアイデアが欲しいなって思う時はいつもと違うことをしてみるの」
マーシー「分かる分かる!」
キース「クリエイターならではな話だなぁ」
マーガレット「キースは新しいものが欲しくはならないのね?」
キース「んー、俺はバーでの仕事が結構刺激あるからなぁ」
ヘレン「どんな刺激なんだ?」
キース「そりゃー色々と・・・」(チラッ)
ガーネット「へぇー、そう、色々ね」
マーシー「何だキース浮気かー?」
キース「いや、今のは変な意味じゃないからな?」
ヘレン「じゃあ、どういう意味なんだ?」
キース「マーシー、ヘレン、俺がせっかく丸く収めようとしてるって言うのに・・・」
ガーネット「丸く収めなきゃならない何かがあるのかしらー?」
マーガレット「キース、モテるものね」
キース「確かに言い寄られることはあるよ」
ガーネット「あるんじゃん!」
キース「それは俺にはどうしようもできないだろ、
ちゃんと断ってるんだからいいだろ?」
ガーネット「どうかしらねー」
ヘレン「それで、他にも何かあるんだろう?」
キース「あるある、酔っ払いの相手とか喧嘩の仲裁とかさ」
ヘレン「大変だな・・・同じ飲食店とは言え俺のレストランにはそういったことはほとんどないからな」
キース「ヘレンは今のレストランにいた方がいいよ」
ヘレン「ああ、そうするよ」
マーガレット「ヘレンがバーテンダー・・・」
ガーネット「どうしたの?」
マーガレット「ヘレン、シックなバーとか似合いそうと思って」
ガーネット「あー、確かにね!でも、そうなったらヘレンがモテまくりでマーガレット苦労するわよ?」
マーガレット「むむ・・・それは嫌ね」
キース「マーガレットでもやっぱ嫌なもん?」
マーガレット「もちろん嫌よ」
ヘレン「ああ、マーガレットはヒステリーだものな、
この間だって・・・」
マーガレット「ちょっと、皆んなに言わないでよヘレン!」
マーガレットがヘレンの肩を軽くポカポカと叩く。
ガーネット「えーなになに、聞きたい!」
ヘレン「俺とマーガレットが街で待ち合わせをしてた時の話だ、
早めに着いた俺は女性二人に声を掛けられてな、
その二人の女性の胸元が大きく開いたドレスを着ていたんだ、
それでマーガレットが胸ばっかり見てた!って怒り出してな、
俺はマーガレット以外に興味はないが、
話しかけられた時に一度も視界に入れないのは無理だろう?
まぁ、視界に入ったのは最初の一度だけだったんだが」
マーシー「偉いなー、俺だったらガン見しちゃうよ、な、キース」
キース「俺は職業柄見慣れてるから別に何とも」
マーシー「俺だけかよ」
ヘレン「それで、その日の夜は枕を投げてぶつけてきた」
キース「おー、それは意外だ」
ガーネット「枕ってところが優しいわね」
ヘレン「それで、次の日の朝ご飯、
マーガレットが時々料理を作ってくれるんだがオムライスの絵が・・・」
マーガレット「もう!恥ずかしいじゃないのヘレン!」
マーガレットが顔を真っ赤にしてヘレンを睨んでいる。
迫力のかけらもない睨み方だ。
マーシー「珍しいな、マーガレットがこんなに取り乱すなんて」
ガーネット「うん、初めて見たわね!」
キース「それで?どんな絵だったんだ?」
マーガレット「ちょっとキース!」
ぐりんっとマーガレットがキースを見るとキースは焦ったマーガレットをにやにやしながら見た。
キース「(にやにや)」
ヘレン「うさぎの絵だったんだが、その表情が怒っててな、眉毛が吊り上がってたんだ」
ガーネット「え、何それ可愛い過ぎじゃない!?」
キース「ガーネットとは大違いだな」
マーガレット「あら?ガーネットはどうだったの?」
キース「ああ、ガーネットの場合は・・・」
ガーネット「わー!辞めて〜!」
マーガレット「だめよガーネット、私の恥ずかしい過去を知った罰よ」
キース「ガーネットが弁当を作ってくれてるんだが、
その日のは弁当箱一面に白米、その上に海苔が乗っててさ、チーズで大きく"怒"って書いてあった」
マーシー「うわぁ、それはキツイなぁ〜!!味なしはつらい〜!」
キース「いや、のり弁だったから味はちゃんとあったよ、おかかと醤油」
マーシー「何だ、のり弁か!あれ上手いよな」
マーガレット「ふふ、ガーネットったら優しさが隠しきれてないわね」
ガーネット「だって、味がないのはさすがに可哀想だなと思って・・・」
ヘレン「しかも、チーズを切り取るって結構手間がかかるしな」
ガーネット「そうなの!それでやり始めたら楽しくなっちゃって」
キース「ああ、それで最近切り絵にハマってるのか」
ガーネット「そうそう!」
マーガレット「あら、そうだったの?」
ガーネット「マーガレットもやってみない?」
マーガレット「そうね、やってみようかしら」
マーシー「切り絵かぁ、俺はちまちました作業は向いてないや」
キース「俺も細かい作業は苦手だなー、バーでフルーツの飾り付けとかよくやるけど難しくてさ」
マーシー「その点、ヘレンは器用だよなぁ」
ヘレン「細かい作業は嫌いじゃない」
キース「今度手伝いに来てくれよ」
ヘレン「タダ働きはしない」
キース「ちぇ、バレたか」