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なんで

作者: 通りすがり
掲載日:2025/08/09

最近、4歳になった娘がいろんなことに興味を持つようになった。「あれ、なに?」「なんで?」が口癖のように出てくる。そんな子供の成長を母親は微笑ましく思っていた。


ある日、娘と二人で電車に乗った時、後続の急行の通過を待つため駅に止まる電車内で、窓から外を眺めていた娘が母親に訊いた。

「なんであの人はあそこにいるの」

そう言って指をさした先は反対側ホームの下あたりの線路上だった。

母親は困惑の表情を浮かべて言った。

「えっと...誰もいないけど...」

先ほどと同じ所を指さして再び娘は言った。

「えー、いるよ、おんなのひと。でもへんなの、そのおんなのひと、あしがないの」

それを聞いて思わず母親は絶句して何も言葉が出てこなかった。背筋に氷を当てられたような悪寒が走る。

すると隣に立っていたサラリーマン風の中年の男性が、能面のような無表情で、母親だけに聞こえるくらいの小さい声で話しかけてきた。

「先月、この駅で飛び込み自殺した女性がいました。たぶんお子様にはその女性の姿が見えているのだと思います」

目を見開き男性を見返した母親に向けて、男性は薄く笑みを浮かべた。

「大丈夫です。子供は感受性が強いですから、見えてしまうこともありますが、成長とともに見えなくなることがほとんどです。ただ、偶に大人になっても見えてしまう人もいますが。私たちのように」

母親はなんと答えていいのかわからず戸惑っていると、男性は軽く会釈をして静かに電車を降りていった。

その間も母親のズボンを手で掴み、何度も引っ張っりながら娘は、濁りのない純粋な瞳で母親を見つめながら繰り返し言っていた。

「なんで、ねぇ、なんで、あのおんなのひと、なんであしがないの、ねぇ、なんで、ねぇ、なんで...」

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