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第8話 それぞれの戦い3

 サジェンヌが王学の魔術師二人を撃破した。


「次は俺がやる」


 ヴェキシムが剣を握り締めた。


 ◇民学魔法剣士ヴェキシム対王学結界師フェルダ◇


 大会会場の中央あたり。

 剣に魔力を流したヴェキシムは、今まで目立って動いていなかったフェルダに切りつける。


 しかしフェルダの結界は堅い。

 魔術も物理攻撃も弾いてしまう。



 ――――大会前の王学


 王学の訓練塔、最上階には、魔術を指導する教員向けの研究室がある。

 フェルダも大会に出場するが、教員からは別途頼まれごとをしていた。

 大会全体の結界魔術の構築である。

 観客席や競技場内の、安全管理のためだ。


 フェルダは魔術研究室で、過去の魔術式を睨んでいた。

 複雑で、巨大な魔術である。


「おかしい」


 フェルダは小さく呟いた。


 安全結界の魔術式の一部が、妙に整いすぎている。

 全く無駄がない。

 まるで、誰かが後から、綺麗に組み替えたような形だった。


「こんな書き方をする魔術師が、学院にいたか?」


 フェルダは記録を調べた。

 結界構築の作業者一覧に懐かしい名を見つけた。


 そこに一つ、懐かしい名前を見つけた。


 ペルナ・アビエス


「……そうか」


 ――――今年の民学は、侮れない……。



 会場では、フェルダの結界に弾かれたヴェキシムが倒れていた。


「ぐ……」


 立てない。

 剣が転がる。


 フェルダが言う。


「終わりだ、魔法剣士君」


 結界が閉じる。


 ヴェキシムは剣を掴む。指先が震える。


「まだだ」


 剣に魔力を流す。

 だが。


 剣が光らない。


「頼む」


 ヴェキシムは唸り声をあげた。



 ――――ヴェキシムの家は、代々騎士の家系だった。


 祖父も騎士。

 父も騎士。

 王国の北方で魔獣討伐を行う部隊に所属している。


 だからヴェキシムも、物心ついた頃から剣を握っていた。


 朝は素振り。

 昼は走り込み。

 夜は父との稽古。

 それが当たり前の日々だった。


 ある日、父が言った。

「今日は森へ行くぞ」


 ヴェキシムは嬉しかった。

 初めての実戦だ。

 まだ子供だったが、父の後ろをついて森に入った。


 北の森は深い。

 空気は冷たく、静かだった。


 やがて父が足を止める。


「……いる」


 低い声。

 その瞬間、茂みが揺れた。


 飛び出してきたのは――牙狼だった。


 灰色の毛並み。

 熊や竜ほどではないが、十分に危険な魔獣。


 父が剣を抜く。

 ヴェキシムも真似して剣を構えた。


 だが。


 次の瞬間、牙狼が吠えた。牙が剥き出しになる。

 大きく開いた牙狼の口は、真っ赤に見える。

 その口から火球が飛んできた。


 ヴェキシムは凍りついた。


(魔法……!?)


 剣では届かない距離だ。どうしようもない。


 その時。

 父が一歩前に出た。


「下がれ」


 父は剣を振った。

 剣が光る。

 飛んできた火球が、真っ二つに裂けた。


 ヴェキシムは目を見開いた。

 父の剣は、普通の剣ではなかった。


 魔力が流れている。

 炎を纏ったように輝いている。

 父はそのまま踏み込み、牙狼を一撃で倒した。


 森が静けさを取り戻す。


 ヴェキシムは興奮て叫んだ。


「今の、何!?」


 父は剣を鞘に戻しながら言った。


「魔力付与だ」

「まほう?」

「剣に魔力を流す技術だ」


 ヴェキシムは父の剣を見た。

 普通の鉄の剣だ。

 だがさっきは、確かに魔法を切った。


「かっこいい……」


 思わず呟いた。

 父は少し笑った。


「騎士でも、使える者は少ない」

「難しいの?」

「魔術師の才能も必要だからな」


 その夜。

 ヴェキシムは眠れなかった。

 頭の中で、さっきの光景が何度も再生される。


 炎を裂く剣。

 魔獣を倒す一撃。


(あれだ)


 あれになりたい。


 剣だけでもない。

 魔法だけでもない。

 両方を使う戦士。


 ヴェキシムは翌朝、父に言った。


「俺、魔法剣士になる」


 父はしばらく黙っていた。

 やがて静かに頷いた。


「いいだろう。だが、覚悟しろ。剣士としても一流。魔術師としても一流。その両方が必要だ」


 ヴェキシムは即答した。


「やる」


 それからの地獄の特訓ともいうべき、日々が始まった。


 朝は剣術。

 昼は魔術。

 夜はまた剣術。


 何度も倒れた。

 ヴェキシムの魔術の才能は、特別高いわけではない。


 それでもやめなかった。

 理由は単純。

「かっこいい」からだ。


 そして数年後。

 王都の民営魔術学院、通称、民学に入学した。


 そこには剣士を目指す者も、魔術師を目指す者もいる。


 もっとも、魔法剣士を目指す者はほとんどいない。

 難しすぎるからだ。


 ヴェキシムはそれでも剣を抜く。


 魔力を流す。

 剣がわずかに光る。

 まだ弱い。


 でも確かに、魔力が宿っている。


 ヴェキシムはニヤリと笑った。


「ふふふ……」


 周囲の生徒が距離を取る。

 ヴェキシムは気づかない。


「今宵の我が魔剣、血に飢えている……」


 まだ昼間だったが、ヴェキシムは満足そうだった。


「ふうん。面白いね、君って」


 欠伸をしながら、転入生の女子が言った。


 ヴェキシムは、嬉しくなったのだ。



 ――――だから、ヴェキシムは剣を握る。なけなしの魔力を注ぎ込む。



「頼む!」


 その時、剣が震えた。

 炎の魔力が応じてくれたのか。。


 いや、違う。

 風が囂々と集まってくる。


 炎と風が混ざり、刃が変形する。


 実況が叫ぶ。


「魔剣が進化!?」


 ヴェキシムが立つ。


 剣が燃える嵐のように、大きく輝く。


「いくぞ」


 一歩踏み出す。

 牙狼の火球を切った、あの日の父の如く。


 斬! 

 結界を斬る。


 バキンと、音が響いた。


 フェルダが目を見開く。

「まさか、結界が!?」


 ヴェキシムがフェルダに突進する。


 一撃。


 フェルダが倒れる。

 結界に開いた穴の向こうに、剣を空にかざす民学の男が見えた。

いつもお読みくださいまして、ありがとうございます!!

次話で、第一部完結します(多分

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