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滅びの銀河の少女と宇宙の旅人〜崩壊した世界で〜  作者: RUNRUN
轟く雷鳴、広がる蒼穹、再び巡る奇しき縁
3/4

戦いは、油断禁物、絶対に

懸賞金110億7500万銀河ポイント、ヴァネッサ。彼女は、懸賞金の額に相応しい実力の持ち主である。つまり、実力=懸賞金という事になる。


「ふふっ……さあ、神鍵が目覚めるまでの暇つぶしをさせてもらうわ。『我が名を讃えよ』【雷雨の弾幕】!」


ヴァネッサの銃から放たれた雷の力を宿した銃弾は、高速で私達に放たれた。


「ウェルトロム、銃弾に攻撃を当てられる?」


「頑張れば……いける!『我と共に散れ』【槍影刃返(そうえいやいばがえ)し】!」


私は負けじと、槍を高速で回転させ銃弾を全て弾き返した。


「良いわね、それでこそ銀河の開拓者……それでも、当たらなきゃ意味ないわ」


ヴァネッサは軽やかに宙を舞って跳ね返ってきた銃弾を避け、武器を一瞬で入れ替えた。


「これはどうかしら?『我が名を叫べ』【雷刃突き】!」


息つく間もなく、ヴァネッサはダガーに持ち替え突進してきた。


「次は私よ!『地と共に去れ』【剛地一閃(ごうちいっせん)】!」


エルミアは大剣を勢い良く振り上げ、地面ごとヴァネッサを吹き飛ばした。


「がはっ!」


「これで決める!『凍てつきと共に消えろ』【氷華一擲(ひょうかいってき)】!」


ウェルトロムは槍に氷の力を宿し、ヴァネッサに向かって投擲し命中した……いや、命中したはずだった。


「これで終わったと思ってる……?」


ヴァネッサは目を見開き、怪しく嗤った。と同時に二人は背後から、空中にいるはずのヴァネッサと同じ気配を感じ取った。


「え?」


時間にして、わずか3秒……その3秒の間に、ウェルトロムは背後から体を貫かれた……





一方で、二人が戦い始めた時の水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)の闘技場で戦っている星彩とルミナリスは……


「なぜか知らないが、あっちもそこそこ騒がしくなってきたな……それより、いい加減エルミアと張り合うのはやめろ」


「私は別に張り合ってるわけじゃないわ、アイツが私の先を行ってるのが気に食わないってだけ」


「それを世間では張り合うっていうんだが……」


「うるっさいわね、もうさっさと決着つけるわよ!『蝕みに苦しめ』【毒刃乱舞(どくじんらんぶ)】!」


星彩は医者だが、毒のスペシャリストでもある。その特性を活かし、毒の力を宿した無数のナイフをルミナリスに向かって投げつけた。


「これは返し切れるか分からんな……『血潮よ止まれ』【紅眼の(レッドアイズ・)時間停止(タイムアウト)】!」


紅眼の(レッドアイズ・)時間停止(タイムアウト)】は本来紅眼を持たない者が使うと失明する恐れがあるが、ルミナリスのような紅眼を持つ者は失明せずに5秒間時を止める事が出来る。


「剣が壊れるのは嫌だからな、時を止めさせてもらった」


と言いながら、ルミナリスは走りながらナイフの間をくぐり抜けた。


「お前は勝ちたそうだったが、お前では到底俺には勝てない。だから、こっちが決めさせてもらう。『夢幻の痛みを思い知れ』【血斬影刃(けつざんえいじん)】!」


【血斬影刃】はルミナリスが持つ剣に、自身の毒血の力を宿す事で相手の武器を粉砕し、相手は攻撃が掠っただけで激痛を伴う恐ろしい技である。


「がはっ……!!」


星彩はルミナリスの攻撃をもろに受け、ガードに使っていたナイフが叩き折られてしまった。


「はあ……っ!!」


体中に広がった鋭い痛みと同時に、星彩の体には禍々しい鮮やかな血飛沫の模様が浮かび上がった。


「な……なによ……これ……!」


星彩は今、体を動かすたびに常人なら耐え難いほどの痛みを感じる状態となっているが、体に数千種類の抗体を持っている星彩は様々な思考を巡らせた。


(これは……毒とは少し違うけど……なんとか解析しきって、解毒する……!)


「解毒しようとしているようだが、無駄だな」


「どういうことよ……」


「数多の挑戦者が解毒を試みたが、その状態から完全に回復したやつはいない。諦めてくれないか……」


「……そう」


「分かってくれたか……?」


「いいえ……それなら、動かないで反撃するまで……!『泉よ、我が敵を貫け』」


星彩がそう言い放つと、星彩の周りを紅色の血溜まりが出来上がった。そして……


「【蝕泉鋭突(しょくせんえいとつ)】!」


血溜まり……もとい泉から、数百本の太く鋭い棘がルミナリスに襲いかかった。しかし……


「だからいい加減諦めてくれ。『血潮よ止まれ』【紅眼の(レッドアイズ・)時間停止(タイムアウト)】!」


ルミナリスは先程と同じように、時間を止めたが……


「目の前の棘が止まっても……はあ……後ろならどうかしら……?『泉よ、我が敵を貫け』【蝕泉鋭突】!」


星彩は、ルミナリスの背後に泉を創り、目の前の棘に集中していたルミナリスの不意をついた。


「っ!」


不意をつかれたルミナリスはそこから動くことが出来ず、もろに攻撃を受けてしまった。


「はあ……はあ……これなら……!?」


星彩は言葉を失った…先程までルミナリスが立っていた場所には傷一つ付いておらず、ルミナリスもその場で何も無かったかのように立っていた。


「なんとかギリギリ間に合ったな……しかし正直焦ったぞ、まさか後ろから攻撃が来るとは。だが、君のお陰で助かった」


「ふん、勘違いしないでよね。宿主が死んじゃったら、ワタシだって生きられないんだから」


「助けてくれた事には感謝する……ありがとう【守護(セリーナ)】」


守護(セリーナ)】はルミナリスを宿主としている「守りを司る」精霊である。その姿は薄い光を発し、背中に小さな翼、短めの金髪とアースアイの瞳を持っている。宿主に危険が迫ったら現世に顕現する。ちなみに危険があった場合でなくとも、自由に頭現できる。


「【守護(セリーナ)】……?」


「ああ、色々あってこうなったんだ」


「あの時は良かったけど、今のワタシにとっては大迷惑よ」


「はっ……なによ……それ……」


星彩は力尽き、その場に伏せてしまった。


「ん?その女、死んじゃった?」


「いや、毒の効力は中くらいに抑えておいた。解毒すればまだ間に合う」


ルミナリスは星彩に注射を打った。


「さて、あっちはどうなって……る……!」


ルミナリスは驚きながらも、一瞬にしてそこで起こった事態を整理した。


「ウェルトロム……それにあれはヴァネッサ……!」


ルミナリスが目撃したのは、ヴァネッサに背中を貫かれたウェルトロムの姿だった。


「っ!!」


ルミナリスは、今の自分が出せる最高速度でヴァネッサに接近し斬りかかった。


「『無幻の痛みを思い知れ』【血斬影刃】!」


「ん……?あらあら、感情的な男は嫌われるわよ。それに……」


ヴァネッサは余裕と言わんばかりに、ルミナリスを華麗に一蹴し、闘技場の場外まで吹っ飛ばした。


「ぐっ!がはっ……!」


「私の目的はあくまで神鍵だもの、今は貴方達に構ってる暇はないわ」


余裕綽々とした様子で、ヴァネッサは水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)の闘技場の結晶に触れようとした。


「ふふ……これでこの星の神鍵は……!」


ヴァネッサは反射的に、結晶に触れるのをやめた……理由は単純だ。「中になにかいる」というヴァネッサの本能が危険をいち早く察知したからだ。


「流石に、そう簡単には渡さないわよね」


ヴァネッサの前には二つの光が存在していた……一つは落ち着きのある緑の光、もう一つは戦意にまみれた赤い光。次第に二つの光は近づき、やがて一つになり大きくなった。そしてそれは、ゆっくりと人の形を作っていった。


『残念ですが……そちらにいる御三方を傷つける事と、私の神鍵を手に入れようとするのは容認できません』


「……やっと会えたわね、白雲星の神様?今は【医療(アルテミス・)之神(カルディア)】かしら?」


『ご存知のようなら、名乗る必要は無さそうですね』


「もちろんよ、貴女の偉業は銀河を超えて知れ渡っているもの」


『その聡明な頭脳を見込んで、一つご提案があります』


「なにかしら?内容によっては……容赦せずに殺るわよ?」


『私と取引をしませんか?』


「取引……良いわね、貴女の意見に賛同するわ」


『話が早くて助かります、取引内容ですが…………』






ん……?体中が痛い、一体どれほど気絶してたんだろう。確かヴァネッサと戦ってて、後ろから背中を……!


「……ここは!」


気づいたら、私は病室にいた。刺されたあとの記憶がない……そして背中がものすごく痛い。


「これは……お見舞い用の果物かな……?」


そう思っていると、様々な足音が問こえてきた。


「っ!ウェルトロム!大丈夫だった……?」


「すまない……俺がもっと早く助けられていれば…」


一番最初に来たのはルミナリスとエルミアだった、よく見るとルミナリスは松葉杖を突いていた。


「ウェルトロムさん!大丈夫ですか!」


続いて二人の影から出て来たのは、私とエルミアを案内してくれたセレスティアだった。


「ご……ごめんなさい!私が道案内なんかしたから……!」


セレスティアは本気で心配していたらしく、えぐえぐと涙を流していた。


「アンタねえ……まだ幼い子供を心配させるのはよしなさいよ」


病室前の廊下から、少しキツめの小言を言って来たのはルミナリスと戦って意外と危ない状態だった星彩だった。


「星彩、もう良いのか?」


「自分で毒を盛っておいて『もう良いのか?』ですって~、どう落とし前付けてもらおうかしら?」


「すぐに注射で解毒したから良いだろう」


「今は漫才やってる時じゃないでしょう…それにルミナリス、貴方だって骨が折れてるじゃない」


「そう言えば、ルミナリスはなんで骨折してるの?」


「お前を助けようとしたが、ヴァネッサに一瞬でやられた。それでこのザマだ」


「それはそうとして……ウェルトロム、そこの果物って誰が渡したの?」


エルミアは、私のすぐ横にあるバスケットの中の果物を指した。


「え?みんなじゃないの?」


私の無意識な発言に、エルミアとルミナリスは静かに驚き……


「まさかアイツが……?」


「ふふっ、彼女も粋なことするわね」


「彼女って?」


水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)にいて、ここにいない人物は誰だ?」


「……え?まさか、ヴァネッサ?!」


「そう言う事になるわね」


「それで!神鍵は……どうなったの?」


もし神鍵があっちの手に渡ってたら、私のせいになるかもだし……


「それなんだが、一つ気になることがあってな…」


「さっき話してくれた事よね?」


「ああ」


ルミナリスは、私が倒れた後の事を事細かに話した。


「俺はヴァネッサが結晶に触れた直後、すぐに触れるのをやめたのを見たんだ。そして……なんて言ってた……?【医療(アルテミス・)之神(カルディア)】だったか?」


「ちょっと待って…【医療(アルテミス・)之神(カルディア)】?それって確か、白雲星の神じゃなかったかしら!?」


「本当か?!」


「後輩が、古代の文献を読むのが好きなの。今呼ぶわ」





「ふ〜む……なるほど」


星彩に呼ばれたのは、アヤメだった。ちなみに、星彩が連絡をしたら「すぐ行きます!!」と大きな声で言っていた。


「エルミアさん……でしたっけ?確かにエルミアさんの言う通り、水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)は【医療(アルテミス・)之神(カルディア)】が眠っている場所です」


「知らなかった……」


なぜかルミナリスは、少しガクッとしていた。


「貴方も楽器ばっかり触ってないで、少しは本を読んだら?」


エルミアはルミナリスに提案したが、その話を遮るようにアヤメは続けた。


「……そして神鍵は『この世界の楽園を開くための鍵である』と文献に記されていました」


「神鍵ハンターはその『楽園』を開く事が目的なのか?」


「可能性はありますが……一つ分からない事があるんです」


「分からない事って?」


「この文献の最後のページが、何者かによって破られていたんです」


「風化ではないのか?」


「専門家に調べてもらったところ、最近破られたみたいです」


「……つまりその最後にページに、なにかが隠されているって事だな」


私もその考えが妥当だと思う


「ねえアヤメさん、その本ちょっと貸してもらえないかしら?」


「え……?良いですけど、どうするんですか?」


「ちょっと待ってね……」


エルミアは本を受け取ると、端末のビデオ通話機能を使った。


『………なに?』


「あら、不機嫌そうね。どうしたのかしら……もしかして、親が恋しくなった?」


『違うわよ!あんた達が全然戻って来ないからよ!』


「ふふ、そう……ところでなんだけど、エメリアはこの本見たことある?」


エメリアはそう尋ねられ、ジッと本を見ていた。


『私が知る限りだと、【銀河大戦】の本に似てるわね。でもそれに記されてるのは神鍵について…私は見たことないわ。そういえば、あんた達は水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)に行けたってことは、白雲屋の神に会えたの?』


「いや……会ったというよりかは、『見た』が正解だな」


『どういうこと?』


「実は……」





『え!?本当にヴァネッサがいたの!それで!?』


「見ての通り……俺は軽症で済んだが、ウェルトロムが重症だ。しばらくはこの星から出発出来ないな」


『それじゃあ……こっちはこっちで次の星の準備しとくから、治ったら連絡ちょうだいよ』


「了解~」


プツンとあっちから切られてしまったが、それだけ焦って心配していたんだろう。


「で、どうする?」


「ああ、もう一度水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)に向かう」


「じゃあ私も……」


「お前は重症なんだ、無理に動くと……」


「あら、それなら良いものがあるわ」


星彩がどこからか結構大きめの車椅子を持ってきた……本当に大きいやつを……


「ただの車椅子じゃないか?」


「ちょっと待って……!これ、色んな機能が付いた多機能車椅子よ」


「その通りです!この車椅子は白雲星の技術の粋を集めた結晶であり、どんな患者さんにも対応できます!」


「それなら良いか」


ルミナリス……意外とすんなり受け入れたね


「ちなみにどうやって乗るの?」


「対象に向かってスイッチを押すと、反重力装置が働いて自動的に乗せてくれるのです!」


「へえ、すごいね」


「では早速……」






私達は、水晶(クリスタル・)聖域(サンクチュアリ)に到着した。しかし今は午後9時、さっきは午後7時。どうしてそんなに時間がかかったかと言うと……


「まさか反重力装置の出力が少し弱くて、改良するのに2時間もかかったとはな」


「私の科学力でどうにかなったから良いじゃない」


「まあ、それは良かったとして……なんでセレスティアまでいるの?」


実はセレスティアがしれっと着いてきていた。


「ええっと……皆さんに迷惑かけちゃったから、せめて何か役に立ちたくて……」


「その気持はありがたいけど、お父さんとかお母さんは大丈夫なの?」


「パパは遅くに帰ってきて、家にはほとんどいなくて……ママには話してます」


「あ……ごめん」


お父さんが遅くまでいないのか……


「今はそんな暗い話は良いの、私達は目的を果たしましょう」


「ごめん……とりあえず二人で行ってて」


私はそう返し、セレスティアと二人きりになった。


「あの……どうしてお二人を先に……?」


「あの時の質問の答えを言うため」


そう……私がセレスティアと二人きりになった理由は、2時間前に遡る。

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