宇宙船、新たな星と、六銀河
この世界に、楽園は存在すると思う?もし存在するなら、一度でいいから見てみたいものね。ちなみに楽園って言うのは「ある者にとっては幻想」で、また「ある者にとっては願い」でもあるんだけど……結局、そんなのはまやかしに過ぎないのよ。だってその楽園は…………すでに「壊れている」のだから
『この世界はΑ銀河、B銀河、Γ銀河、Δ銀河、Ζ銀河、Ω銀河の六つの銀河で成り立っています。ですが突然、六銀河の一であるA銀河が崩壊してしまいました。その影響で、A銀河の星々は一つ残らず宇宙の彼方に散らばってしまい、行方が分からなくなるという自体が発覚しました。そこで、銀河中の統治神が集結され……』
「ねえ~、またそんな長ったらしい記事読んでるの?」
「ふふっ……一人の科学者として、こういう事には興味があるのよ」
私は「宇宙船ラピュータ」の乗組員のウェルトロム、茶色の瞳とロングの髪を持つ可憐(自称)な少女だ。ついでに乗組員全員が名乗る【サマヨイビト】の一人でもある。さっきまでお風呂に入っていて、次に入る予定のエルミアを呼ぼうとした。そしたら、また同じ内容の記事を読み返していた。飽きないのかな……
「あら?その顔、もしかして私が同じことを繰り返して飽きないのか?って思ってそうね」
銀色に緑のメッシュが入った長髪と、情熱を感じる蒼い瞳を持った元科学者のエルミア。
エルミアは元々のΖ銀河一の科学者だったが、とある事件によって称号を剥奪され、路頭に迷い彷徨っていたところを宇宙船の船長によって拾われた。それからというもの、暇があれば実験をしたり、先ほどと同様に興味を持った記事やニュースを見返している。
あとは…………軽い筋トレとかをしてる感じ
「どうだろうね……とりあえず、お風呂空いたよ」
「分かったわ」
宇宙船の誰も寄り付かないであろう物置き、そこには大雑把にカットした黒髪を持つ、筋骨隆々とした男が瞑想していた。
「…………ん?」
男は近くに気配を感じ取り、ゆっくりと目を開けた。
誰も寄り付かないと入っても、ここの静寂を好むものは少なからずいる。
「おっと、先客がいたのか。悪い、出ておこうか?」
「いや、そろそろ終わろうと思っていたから大丈夫だ」
瞑想をしていたのは【サマヨイビト】のライゼン、そして「楽器の音がよく響くから」という謎の理由で物置きを気に入っている、同じく【サマヨイビト】のルミナリス。
「そうか、ならちょうどよかった。外で話したいことがある」
「良いだろう」
二人は宇宙船の中にあるバーで話すことにした。
「……っ……っ……ふう~、やっぱり酒は美味いな」
「『青薔薇のシャンパン』か、お前らしいな。しかし、よくそんな度数が高いのを飲めるな」
「お前は無理なのか?」
「酒豪のお前にだけは言われたくないな」
ライゼンは瞑想家でもあると同時に、とんでもない酒豪でもある。対してルミナリスはと言うと……
「お前こそ、ずっと同じのを飲んでるようだが?」
「俺には『カミーミリラ・ハチミツ酒』が合ってるのさ」
「ふっ、まあ良い。そして、話とはなんだ?」
ライゼンが尋ねると、ルミナリスは少し微笑んで……
「『神鍵ハンター』が動き出した…まあ予想通りだよ」
「ほう……神鍵ハンターか。またいつもみたいに戦うのは、まっぴらゴメンだな」
「各銀河の星にいる諜報員達の報告によれば、奴らは今、Β銀河とΓ銀河にいるらしい」
「なるほど……」
「こうなってくると、俺達とやり合うのは時間の問題だ。早急にあいつらに知らせる」
「分かった」
………なに、この空気……
私達は宇宙船で一番広い会議室で話を聞いた。すると突然、気のせいだと思いたいが場の空気が少し重たくなった。
「はぁ〜……これからお風呂に入ろうと思ったのに…………」
お風呂に入る直前に会議に呼び出され、泣く泣く参加する羽目になったエルミアは、そんな事を愚痴っていた。
「にしても、神鍵ハンターねぇ……また厄介なことに首を突っ込む事になりそう」
そう言ってエルミアは4枚の紙を取り出した
『銀河間重要指名手配書』
「これは?」
神鍵ハンターのことは聞いている、けどこんなものは見たことが無かった。
「そういえば、ウェルトロムが見るのは初めてだったな」
そう言うと、ルミナリスがホワイトボードで私達と神鍵ハンターの関係性を教えてくれた。
「まず第一に、神鍵ハンターは六銀河の……いや、現五銀河の星々に存在する神鍵という特殊な物質を集めている。しかし目的は不明……ここまでは聞いたことあるよな?」
「まあ一通りは」
「そして、今ここにあるのは神鍵ハンターの手配書だ」
へえ、神鍵ハンターって指名手配されてたんだ。けど何も書いてない……ん?
「ねえ……ここに書いてある懸賞金は?」
手配書の下をよく見ると、『捕まえた者には懸賞金全額を、情報提供をした者には懸賞金の一割を。生死問わず』と書いてあった。つまり、懸賞金しか書かれてないという事になる……と言うか「生死問わず」ってなんか地味に怖い。
「文章の通りだ」
「そうね、彼女達は銀河中に名を轟かせた集団。発見されたり、それこそ神鍵を盗んだりしたら……当然懸賞金は上がり続けるのよ」
彼女達?一人は女性で、複数人いるのかな……?
「もしかして懸賞金のために追ってるとかじゃ?」
「俺達は別に正義の味方ではない……」
「じゃあ、どうして気にしないといけないの?」
「実はね、以前あっちから協力話を持ちかけられたことがあるのよ。当然断ったけど」
「しかし……あいつらはしつこく協力話を持ちかけてきた」
「で、痺れを切らしたライゼンが奴らの一人と戦ったんだ」
「それでどうなったの?」
「正直、互角に近い……いや、あれは互角なんてものじゃ無かった……あいつはとんでもない武人だ」
「……とまあそんな事があって、一時的な休戦という形になって終わったんだ。それからはしばらく息を潜めてたんだが……まさかまた現れるとはな」
「何でまた神鍵ハンターが出てきたの?」
「いくつか可能性はあるが……これに関しては船長達の意見を聞くしかないな」
「ちょっといい?」
「どうした?」
何かを思ったのか、エルミアが口を開けた。
「実はね、B銀河の白雲星に彼女達の目撃情報があったのよ。信憑性は低いけど、行ってみる価値はあるんじゃないかしら?」
「そうだな……全員位置につけ!」
宇宙船には主要な場所がいくつかあって……その中に、南の会議室、北の操縦室と呼ばれる場所がある。
私達は宇宙船の操縦室に集まった
「銀河転移は久々だな」
「ふふっ……ライゼン、前みたいにボタンを押すタイミングを間違えないでね」
「エルミア……俺も同じ失敗を二度もしたくない」
「そうだと良いけどね」
「……これより銀河転移を開始する。エメリア、座標特定とアシストを頼む」
エメリア……その名前と役割は私も聞いたことがあるけど、実際にその姿を見たのは初めてだった。
「はあ〜……ちょっとルミナリス?あなたは自分がやらないからそんな簡単に頼めるのよ?あたしが何もしなかったら、この宇宙船はとっくに無人星に座礁してるんだけど?」
私は少し考えてから、一つの答えに至った。
エメリアと呼ばれたリアルに近いホログラムの銀髪の少女が、ルミナリスに向かって小言を言ってるのは無理もない。エメリアは宇宙船の全てのシステムの使用権限を持っているから、少し本気を出せば宇宙船のシステムを全てシャットダウンさせることが可能なのだ……ちなみにエメリアは、エルミアが創り出した宇宙船の超高機能AIだそうだ。だから名前が似てるのかな……
「まあ良いわ……とりあえず全スタッフにも通達しといたから、安心して転移を行いなさい」
「ありがとう……それでは銀河転移を開始する、カウントダウン開始!」
『カウントダウンを秒読みで開始します』
『10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……』
カウントダウンが終わって、どれほど経っただろうか……私は相変わらず転移時の衝撃には慣れない部分がある…でも、そろそろ起きないと駄目かも。
「ん……みんなおはよう……」
「あら、やっと起きたのね。その様子じゃ、相変わらず慣れてないようね。それはそうとして、着いたわよ。B銀河第三惑星、白雲星に」
「白雲星に来たのは、神鍵ハンターと戦った時以来だな」
「お前は戦闘になると、取り返しが付かなくなる直前まで戦うからな」
「ルミナリスよ、それは言わないのがお約束では!」
「うるさいわね……ほら!さっさと行くわよ!」
ちなみに星に行けるメンバーは、いつもクジ引きで決められる。けど私だけは「慣れるため」という理由で、必ずメンバーに入る。
「じゃあ今回は私とウェルトロム、そしてルミナリスで行きましょうか」
「今回俺は留守番か」
「それじゃあ、私の実験台になってくれる?」
と言いながら、エメリアはいかにも怪しそうな...…絶対飲んだら駄目な薬品とかがある部屋にライゼンを招き入れた。
「俺は流石に……」
「ありがとう、早くやりましょうか……?」
「ライゼン、ご愁傷さま」
「うおおおおお!!!」
私達が宇宙船を出ていく直前まで、ライゼンが「助けてくれーー!!!」って言ってた気がするけど、二人は「無視しろ」と言ってたから気にすることは無いと思う……たぶん
白雲星には至る所に病院やリハビリ施設、あとは雑貨店などが陳列していた。
『おお~、たくさん人がいる……っていうか私、白雲星について何も知らないんだけど…?』
『そうだったな……簡単に言えば白雲星は、医療がとても発達している星だ』
『ええ。ライゼンが本気を出して戦えてるのは、この星の医療技術あってのことね』
『そういえば白雲星に来たのは、神鍵ハンターのためだけ?』
『いや……ついでに【奇跡の医師団】の知り合いに会うためでもある』
【奇跡の医師団】……聞いたこと無いな
『というかお前ら……何で自由行動をしているんだ!』
実を言うと、私とエルミアは白雲星に足を踏み入れた瞬間に、自分の行きたい所にダッシュで行っていた。
『別にいいじゃない、連絡端末があるんだから』
私達は連絡端末……もといスマホで会話していた
『そうそう……ん?うわっ!』
『どうした?!』
『いや……さっき女の子とぶつかって、「すみません!急いでて前が見えてなかったです!」って言ってたけど「大丈夫だよ、気をつけてね。」って言っといた。』
『それなら良かったわ。それじゃあ午後1時に病院で集合ね』
『勝手に決めるな……と言いたいとこだが、俺も寄りたい所があるからな』
『それじゃあ!白雲星をエンジョイして行こーー!』
『銀河間重要指名手配犯』
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懸賞金:83億5400万銀河ポイント
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懸賞金:110億7500万銀河ポイント
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懸賞金:105億6350万銀河ポイント
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懸賞金:63億3500万銀河ポイント
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懸賞金:???兆???億???万銀河ポイント