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第9話 選ばれし者たち

名前を書いたファンクラブのヤツらが僕の所にやって来た。


僕は王族スキル『王族ニッコリスマイル』で握手をしていく。ファンクラブの会員には学園関係者以外にも多数存在していた。王宮で働いているメイドをはじめ、使用人、貴族の使用人、市民など、どこらか集めたんだと絶望させられるくらいの人数だった。述べ500人は集まったのではなかろうか。まさか、こんなに多いとは……


ルナール嬢に聞いたところによると会員は1000名を超えているとのこと、ドン引きである。



ファンの中には握手をする前から泣き出し、涙と鼻水の付いた手で握手する豪胆なメイドさんまでいた。それでも僕は笑顔を崩すことなく握手をしていた…… あと、プレゼントと称してクッキー類のお菓子を持って来るヤツもいたが、悪意のあるヤツは中に何か入れているのではと思いながら受け取った。通常であれば受け取らないが、ファンサービスの一環として愛想良く受け取りドールに渡した。まさに()()()()()とは、このような事を言うのだろう。


しかし、一番キツかったのは、邪悪に満ちた満面の笑みで、ヨダレをたらしながら握手を求めて来るヤツだ。握手をするとなかなか手を離してくれない。しかも、握っている手にヨダレをあえて落とす輩までいた。笑顔に反比例して僕の心はズタズタに引き裂かれた…… コイツらだけは抽選に外れてくれとマジで心の底から神に祈った……



同一でキツかったのはニヤニヤと頬を赤くしたオジサマ達御一行だった。何でお前らがファンクラブの会員なんだ。といたたまれない気持ちになり、知らないうちに焦点の定まらない虚ろな目で青空を見上げていた…… 病みそう……



心が折れながらも何とか500名との握手は終わった。


メインヒロインのマリア嬢は顔はニッコリと笑っていたが、その背後からは()()()()()()の二体の仁王像が浮かび上がっていた!? 僕もこの時ばかりはビビってしまった。何か恨まれる事でもしたのだろうか? 考えれば考えるほど思い当たる事しかなかった……


逆にヒロインの1人であるメアリー嬢は淡々とした様子で『はい、はい、握手ね。はい、はい、お疲れさま』といった態度だった。


何より別のヒロインとは『はい、はい、私は興味ないから、あなたとヒロインたちの邪魔はしないから好きにやってちょうだい』みたいな一線を引いた感じ、僕は彼女を師匠と崇めたい。


正直、ゲームの時とは若干だが性格が歪んで見えた印象を受けた。嫌なら来なきゃ良いのにと思ったが、ヒロイン故の強制力でも働いたのだろうと改めて、この世界は『プリスタ』の世界なのだと思い知らされた……



「では、皆様。抽選箱に入れ忘れとかございませんか?」


ルブランはそう言ってファンクラブの連中を見渡した。誰も入れ忘れは無いようで『シ~ン』としていた。ルブランは続けて、


「アレク様より直々に抽選に入らせていただきます。アレク様よろしくお願いします」


『シ~~~~ン』


「は、はい」


異様な雰囲気に思わず噛んでしまった…… 変な緊張感の中、抽選が始まった。


一枚一枚、名前が読み上がる度に一喜一憂するファンクラブの連中を余所に徐々に青い顔になっていく僕とルブラン達。



10名全員の名を読み終わり、お茶会準備の為、一旦休憩とした。本来の予定なら休憩は無く、すぐにお茶会となるはずだったが、僕のメンタルが限界となった為、急遽の休憩となった。



「アレク…… 青い鳥が飛んで行くなぁ」


ルブランが絶望した声で僕に問いかける。


「ああ、ここまで自分の運の無さを呪った事はないよ」


僕は呆然とした声で答える。


「そうそう狙って出来る技じゃないぞ」


サンペータが一応フォローを入れてくれているのだろう。


「自分でもそう思う……」


僕は自分自身の不甲斐なさに腹を三文字に切り、潔く死にたいと思った。


「まあ、なんだぁ。ここまで来ると言葉も出ないな……」


マリックが最大限の同意を示してくれた。


「この世には、神が居ない事が良くわかったよ」



僕は項垂れて床に倒れ込んだ……



――最悪だ…… こんなはずじゃなかった。ファンクラブのヤツらの悪運が強すぎるのか、僕の運が無いのか、お茶会メンバーが最凶最悪すぎる。



今回のお茶会メンバーは、ルナール嬢を筆頭にマリア嬢、メアリー嬢、ヒロイン共の3人、僕に涙と鼻水で、これから迫りくる運命に導いてくれたメイドさん、僕の手にヨダレを落とす一般庶民、危ない目で僕を視姦してくるオヤジーズの1人、普通の女子生徒の10名だった。普通がまともに見えるとは、この世界にはまともなヤツは居ないのだろうか? 僕は信じたい、殆どの者はまともで、今回はたまたま運が悪かったのだと……


お読みいただき誠にありがとうございます。

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