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第89話 決戦の場を求めて

ドヤ顔で戦術眼を語り、自己満足に浸っていると、


「専守防衛だと? もし、防衛線を敵側に突破されたらどうするんだ?」


父上は、僕の戦術が納得が出来ていないようだった。


「防衛線は、何重にも配備致します。兵力も常時、死兵となり士気は高いです。万が一、突破された際は、遥か後方には狂乱貴婦人会が控えております。一人につき敵兵300人に当たってもらいます。どうでしょうか、母上?」


狂乱貴婦人会の恐さは、この国の者なら誰でも知っている。しかも、人々に恐怖(トラウマ)を植え付けるだけではなく、厄介な事にインフルエンサー的役割りまでしているという。このフロンガスター王国のガン細胞みたいな存在だ。


「アレク、私達に失礼ですよ。狂乱貴婦人会一人に敵兵300人だなんて。相当、私達を見くびっているのかしら?」


母上はイラついた顔を隠そうとせずに、僕に恐ろしい口調で質問返しをしてきた。


「そんな…… 見くびってなど……」


僕はあまりにも恐ろしい母上の気迫に言葉が途切れ途切れになっていると、


「相変わらず馬鹿な息子には苦労させられるわ。まあ、良いでしょう。狂乱貴婦人会一人につき、敵兵600人で対処してあげるわ」


「母上! なんと狂乱貴婦人会一人に対して、敵兵600人だなんて…… 心強い一言を…… 母上、ありがとうございます」


僕はビビりながらも母上にゴマすりをした。


周りを見渡すと、その場にいた一同は本当に一人で敵兵600人を葬り、さらに血祭り確定に顔面を青白くさせ、震えていた。それだけのポテンシャルを持っているのが狂乱貴婦人会なのだ。



「……………………」


沈黙の時間が流れ、


「では、戦場となりうる箇所の選定があるため、僕はこれで失礼します」


僕はそう言って部屋をあとにした。



自室に戻り、色々と考え事をしていた。


ユリアラ王女が最後に『ざまぁ』と言った意味がようやくわかった気がした。ケーリンネガー国王も酷いことをするよなぁ。ユリアラ王女と結婚まで約束したアイスキー皇太子を無理矢理別れさせるなんて……


ユリアラ王女も僕にその事を打ち明けてくれたら、ユリアラ王女が幸せになるよう、お互い納得のいく形で、幾らでも手を考えたのに…… 最悪、僕の有責で婚約破棄にしても良かったのに…… 実際には冤罪で有責にさせられてしまったけど……


「今さらユリアラ王女の事を考えてもしょうがないな! あまり後ろを振り向かず、前を見よう。前向きが一番!」


僕は自分自身を慰めるように、独り言を呟いた。


「あとは如何に敵軍を攻城戦を野戦と思わせるかだよな。陣形を展開しやすい場所も把握しておかないとな。明日から視察に行って見るか」





そんな訳でギョシン騎士師団長とウィザード魔法師団長、いつもの愉快な仲間たちを連れてケーリンネガー王国とフロンガスター王国の国境まで来ている。


数日掛けて視察を行い、何ヵ所かケーリンネガー軍が進軍してくるであろうという目星はついた。


続いて、グランプロス帝国国境にも訪れたが、グランプロス帝国とフロンガスター王国の国境には山脈が連なり、大軍を移動する道は限られている。


「ギョシン師団長、ウィザード魔法師団長。出来る限りグランプロス軍の戦力を削りたいが、どうしたら良いと思う。出来れば一網打尽に出来れば上出来なのだが」


「では、一番行軍をしやすい要所を残し、あとは、通れないよう道を封鎖しておきましょう。そして、グランプロス軍の戦力を削りながら、我が軍は退却戦を行い、補給線が延びきったところで包囲戦を仕掛け殲滅させるのです」


ギョシン騎士師団長はなんともエグい作戦を言い出した。


「ギョシン。うん、うん、それはスゲー良い案だな。グランプロス軍のヤツらは勝って進撃してると思ったら、いつの間にか負けてると…… 気づいた時には全軍が全滅しているという悪夢。うん、うん、楽しいなぁ~」


ウィザード魔法師団長はおもちゃを与えられた少年のように目をキラキラと輝かせ、上機嫌で話していた。



――まさかとは薄々気が付いていたが、コイツもヤベェ人種の一人だったか……

お読みいただき誠にありがとうございます。

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