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第87話 まさかの婚姻

―― 婚約破棄から一ヶ月 ――



僕は近衛騎士師団から屯所を借り、屋内を異空間魔法で騎士師団、魔法師団の合同野外演習が行えるほどの広さまで広げた。屯所の外見からは想像出来ない屋内の広さは、サンペータの父であり、近衛騎士師団師団長ギョシン・ヌシー・ツリカッターを唸らせる出来栄えだった。


プリストの世界では、甲冑、盾、長剣、槍、弓、軍馬、魔法を用いて(いくさ)を行う。まるで中世ヨーロッパの戦を彷彿させるユニットがあった。軍隊編成を大きく分けると、歩兵、騎兵、魔法隊の3つであり、さらに歩兵は軽装歩兵隊、重装歩兵隊、長弓歩兵に分かれている。


僕は近衛兵の機動性を上げるべく、全て甲冑を脱がせ、軍服のみを着用させた。騎兵も同様に軍服のみにした。


近衛師団の軍編成に取りかかっていた。近衛騎士師団は主に歩兵、砲兵、騎兵に、魔法師団は工兵、輜重兵、軍医に分けた。


近衛師団の花形は、やはり歩兵だろう。装備されている武器も男のロマン溢れる。スナイドル銃だ。前装式ではなく後装式だというところに魅力を感じる。しかも、雷管と弾薬の一体化! まさに至高の逸品なのだ。追加でこちらも魅惑の逸品、ガトリング砲も準備した。


現代最新式兵器も捨てがたいが、ここは男は黙って明治維新の武器だろうと、僕の趣味で選んだ。


さらに、砲兵はアームストロング砲、12ポンド(約5キロ)、9ポンド(約4キロ)、6ポンド(約2,7キロ)である。もし、ケーリンネガー王国との戦いになったらガチのオーバーキルになってしまう。砲兵のほとんどは魔法師団が担当している。


騎兵の主な任務は偵察である。装備品として、スナイドル銃を持たせている。敵情を探らせ、こちらが有利に展開できるように頑張ってもらいたいと思う。


騎士師団と魔法師団を適材適所の観点からバランス良く分けた。



近衛師団の訓練は進み、婚約破棄から3ヶ月が過ぎようとした時期に、フロンガスター王国にとある情報が流れて来た。



なんと!? ケーリンネガー王国ユリアラ・カント・ジャングスター王女とグランプロス帝国の皇太子の婚姻が発表されたのだ!


その情報を聞いた時、僕は耳を疑ったが、紛れもない事実だということだった。すでに婚姻は済まされいた。


僕は父上から呼び出され、屯所から父上の執務室へと急いだ。





『コン コン』


「アレクです。只今、参りました」


「おお、来たか。すでに皆揃っている。入れ」


執務室から父上の声が聞こえた。


「入ります。遅くなり申し訳ありません」


僕が一礼すると、そこには父上、母上、宰相、外務大臣、財務大臣、近衛騎士師団師団長、近衛魔法師団師団長、つまりマリックの父親である。あとはモブ要員として、ルブラン、サンペータ、マリック、ドールといういつものメンバーがすでにいた。


「アレクよ。良く来てくれた。まあ、座ってくれ」


父上の言葉に促され、ソファに腰を下ろした。


「父上。さっさ即で申し訳ありませんが、ユリアラ王女の婚姻は事実なのでしょうか?」


僕は再度、事実確認をした。


「フロンガスター王国の諜報機関によれば、ユリアラ王女とグランプロス帝国皇太子アイスキー・アール・デレモントとの婚姻は本当のようだ。それとな、諜報機関によれば、お前との婚約前からお互いの未来を約束していたらしい……」


父上は項垂れながら話した。


「そ、それは…… 一体どういうことでしょうか?」


僕は衝撃的な事実に耳を疑った。


「ケーリンネガー国王が婚約間近の二人の仲を引き裂いたのであろう。私がヤツにお前の婚姻相手を探してると言った時、ヤツは『是非、年頃の自分の娘がいる。友好国として、親戚関係を持つのも悪くなかろう』などと言っていたが、こんな舐めた真似をしやがって!」


「ケーリンネガー国王が…… 婚約間近のユリアラ王女とアイスキー皇太子の仲を引き裂いてまで、何をしたかったのですか?」


「わからん。分かっているのは、ケーリンネガー王国とグランプロス帝国が手を組んでしまったという事実だけだ」


「最悪のシナリオ通りになりそうですね」


「ああ、その可能性も現実味を帯びてきたということだ。アレクよ。バーサーカー計画はどうなった?」


「……………………」



――父上。近衛師団への訓練がいつの間にかバーサーカー計画になったんだ?

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